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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第1章 エレンディア編
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第50話[裏] コンテナの少女とパパとママ

<Side:Souya>

「うん、それ。さすが、ソウヤ」

 気配で位置まで察知していたらしいロゼがそう言ってくる。

 ……うーむ、マジで気配を察知出来る技術が欲しいな……


 まあ……それよりも今はコンテナだ。

 

 急ぎ俺はコンテナの蓋をサイコキネシスで引き剥がす。

 すると、クレアボヤンスで視えていた通り、そこにはひとりの少女が眠っていた。

 ふむ……見た目はヒュノス――つまり、俺と同じ至って普通の人間といった感じだな。

 

「ん、なるほど。寝ていたから気配が希薄だったわけだね。うん、納得」

 なにやらロゼが納得顔でそんな事を言ってくる。


 そう言われてもさっぱり理解出来んが、

「まあ……とりあえず起こさないと話にならないな……」

 というわけで、俺は少女を軽く揺すってみる。

 

 少女は「ん……んむぅ……」という小さな声を発したかと思うと、ゆっくりとその目を開けた。

 

「お、目が覚めたようだな」

「ん、私は鉄道運行保安隊。あなたを保護する、うん。だから安心していい。うん」

 俺とロゼが覗き込みながらそんな風に告げる。

 ……鉄道運行保安隊って言って、少女に分かるのだろうか……?

 

「……パパ? ママ?」

「「!?!?」」

 寝起きの最初の発言は衝撃的だった。

 いつから、俺とロゼは父親と母親になったんだ!?

 

 ……って、そんなわけあるか!

「……い、いや、俺はパパではないぞ……」

「うん、私もママじゃない……」

 そう俺たちが告げると、少女は残念そうに、

「パパでもママでもないの……?」

 なんて事を言ってくる。

 

「残念ながらさすがにな……。というか、どうして俺たちを見てそう思ったんだ?」

「うん。あなたは一体どこから来た?」

「……どうして? ……どうしてだろう? どうしてそう思ったか……。わからない。どこから来たか……。それもわからない」

 俺とロゼの問いかけに対し、起き上がりながらそう返してくる。

 そして更に、額に手を当てながら、

「そもそも、私はどこに住んでいた……? 町? 村? ……名前が出てこない……。ううん、名前……自分の名前も……出てこない。……違う、えむ……えす……その2文字があった……はず……」

 なんて言葉を呟くように続けた。

 

「ん……ソウヤ、これって……」

「……ああ。俺も始めてみたが……記憶喪失って奴だな。精神的ストレスによる、一時的な記憶の混乱によるものであれば、しばらくすれば思い出すだろうが……」

「ん、そうじゃなかったら、大変……かも。うん」

 俺とロゼがそんな事を話していると、少女が不思議そうな目でこちら見つめながら、首をこてんと軽く傾げた。

 

 ……これはまた、なんとも大変なものを見つけてしまったな……

 

                    ◆

 

<Side:Rose>

「……それで、どういうわけかソウヤがパパで、ロゼがママと呼ばれる形で落ち着いてしまった、と?」

 シャルがジトッとした目を私とソウヤに向けてくる。

 

「うんまあ、そういう事だな……」

「ん、そう呼ぶのが一番落ち着くと言うから、そうした。うん」

「まあ……大変な目にあったし、呼び名ひとつで落ち着くなら……まあ……。……うぅ……これなら、私が一緒に開けるべきだったわ……」

 ソウヤと私の言葉を聞き、そんな事を呟くように言うシャル。


 ん……もしシャルとソウヤだったら、本当にパパとママと化しかねない、うん。

 それは何か……嫌だ。うん。

 そういう意味では、あの場にいたのが私で良かった。うん。

 

「しっかし、《黄金守りの不死竜》のトップがパパで、俺ら鉄道運行保安隊のエースがママねぇ……。実にややこしい事になってんな。どっちが預かればいいんだ……?」

 なんて事を言ってくる考え込むバーン。


「ちょっとバーン? 考え込むべき所、そこなの?」

 シャルがやれやれと言わんばかりの脱力した声で言う。

 

 ……んん、そこに関しては、私もソウヤも《黄金守りの不死竜》なので、実際にはうん、何も難しくはないのだけど……まあ、うん、さすがにそんな事は言えない。ううーん。


 そう思っていると、

「それなら、ロゼを《黄金守りの不死竜》の客将……のような扱いにしておけばいいのでは?」

 なんて事をニヤリとした笑みを浮かべて言うソウヤ。

 

 ……うん、そのニヤリ、どう考えても複数の意味がある……うん。

 

「なんか、サラッと引き込んできたな、おい」

「そんな事はありませんよ。……ああ、それなら俺が鉄道運行保安隊の外部支援要員になりますよ。討獣士として」

「更にとんでもない事言ってくるな!?」

「それなら私もそうするわよ?」

 驚くバーンにシャルがそんな事を告げる。

 それに対し、バーンは腕を組んでため息をつきながら首を横に振る。

「……もう無茶苦茶だな。……それを受け入れたら、事実上、鉄道運行保安隊と《黄金守りの不死竜》との同盟になるじゃねぇか……」


「そうは言いますが、割と幾つかの国家組織と同盟を結んでいますからね、ウチ」

「もっととんでもない事言ってきたな!?」

 ソウヤの追い打ちのような言葉に、驚きと呆れが入り混じった反応をするバーン。

 そして、やれやれとばかりに盛大にため息をつき、

「……はぁ……まあいいか……。《黄金守りの不死竜》でもなんでもいいから、手を借りたい所であるのはたしかだしな……さっきロゼから聞いた報告を考えると……な」

 と、そう言葉を続けて肩をすくめてみせた。


 うんまあ……とりあえず、色々動きやすくはなりそう、かも。うん。

不思議な記憶喪失少女の登場となりました。

そして何気に50話目です。

といっても、2部は1話の話が半分強なので、1つの章の話数がかなりあり、まだまだ中盤に足をかけつつある……といった所だったりしますが。


とまあそんな所で、また次回! 更新は明後日、月曜日を予定しています!

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