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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第1章 エレンディア編
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第44話[裏] 列車強盗団制圧戦・蒼夜編

<Side:Souya>

 次の車両のドアに近づいた所でクレアボヤンスを発動。透視によって車両内の様子を覗き見る。

 ……ふむ、動けない乗客から金品を強奪しているみたいだな……

 で、数は……テリル族の男性ふたりと、ルヴィーサ族の女性ひとり……と。合計3人なら余裕というものだ。

 

 というわけで、手始めにサイコキネシスでドアを勢いよく『押し出す』俺。

 ガタガタと音を立てた後、あっさりと蝶番が外れ、車両内へと凄まじい速度で吹っ飛んでいくドア。

 

「な!? ぐほぁ!?」

 テリル族の男性のひとりに命中。

 男性は飛んできたドアによって弾き飛ばされ、ボックス状の座席のひとつに激突。座席を半壊させながら倒れ込む。

 

 俺はそのドアを盾にするようにして車両内へと飛び込むと、半壊したボックス状の座席のひとつをサイコキネシスで強引に床から引き剥がす。

 

「い、一体なにが……っ!? ええい、くそっ! 《玄珠の重弾》っ!」

 テリル族の男性が漆黒の魔法弾を放ち、座席を迎撃しようとする。

 

 おっと、そう簡単に壊させはしないぞ、っと。

 そう心の中で呟きながら、アポートでボックス席を引き寄せる。

 

 魔法弾が直前までそこにあったはずの座席に当たる事なく、窓ガラスをぶち破って外に飛び出して行くのを目の端で捉えながら、すぐに男性の頭上へとアスポートした。

 

「き、消えた!?」

 驚きの声を上げる男性に対し、もうひとりの強盗団員であるルヴィーサ族の女性が、「う、上だっ!」と警告を発するが、時既に遅し。

 

「ぐぎゃぁぁっ!?」

 という悲鳴と共にテリル族の男性が、座席に押し潰される形で床に倒れ伏す。

 

 盾代わりのドアを残ったルヴィーサ族の女性に向けて飛ばすが、すんでの所で回避され、ドアに隠れる形になっていた俺の姿が晒される。

 

「くっ!」

 俺の存在にようやく気付いたルヴィーサ族の女性が、横に視線を向けた。

 

「ひっ!?」

 視線の先……恐怖に満ちた短い悲鳴を発したマムート族の少女――マムート族なので少女ではない可能性もあるが、俺にはイマイチ区別が付かないので少女としておこう――に手を伸ばし、

「お前、動くんじゃないよ! 動いたらこの娘の首を引き裂く!」

 なんていう三流なセリフを吐きながら、少女の首に短剣を近づけるルヴィーサ族の女性。

 

 ……アポート。

 人質になっていた少女を引き寄せ、

「俺は鉄道運行保安隊隊員……補佐だ。安心してくれ」

 と告げながら、少女を俺の背面に隠れる形にする。

 ロゼのサポート役……という意味では、嘘ではない。


「へっ!? はっ!? ど、どうなって――」

「それを知ったからと、どうにかなるものではないぞ?」

 俺は慌てふためくルヴィーサ族の女性の言葉を遮るようにそう答えると、再びドアにサイコキネシスを発動。床を滑らせるような感じで手前……俺の居る方へと引っ張った。

 

「ぎゃっ!?」

 丁度足払いを受けた形になったルヴィーサ族の女性が転倒。

 ドアの上に尻もちをつく形で倒れ込んだ。

 

 それを狙っていた俺は、

「よいせ、っと」

 などという気の抜けた声を発し、ドアを思いっきり上に跳ね上げる。

 

 そのトランポリンめいた動きにより、ルヴィーサ族の女性の身体が勢い良く真上に弾かれ、天井へと激突。

「あぎぃっ!?」

 という悲鳴と共に床へと落下し、そのまま動かなくなった。

 ……殺してはいないはずだ。多分、きっと。


 ――俺は倒した3人に駆け寄り、息があるかどうかを確認する。……よし、全員気絶しているだけだ。問題ない。

 

「……さて、この3人をどうやって拘束しておくか……」

 俺はふとその事に気付いて呟く。

 

 何か拘束するのに丁度いい物を持っていただろうか……?

 なんて事を思っていると、

「あ、あの……」

 と、先程助けたばかりのマムート族の少女が、声をかけてきた。

 

「ん?」

「ワイヤーロープならありますが……」

 そんな風に申し出てくる少女。

 

「お、それは助かる。使わせて貰っても良いなら使わせて欲しい」

 俺がそう告げると、

「あ、はい。いくらでも使ってください! 仕事柄、大量に持っていますので!」

 なんて事を笑顔で言ってきたので、遠慮なく使わせて貰い、3人をしっかりと拘束した。

 

 しかし、ワイヤーロープを使う仕事……というのは、一体なんなのだろうか?


 そんな事をふと思いはしたが、今は列車強盗団の制圧を優先すべきだと考え、俺は少女からワイヤーロープの一束ほど受け取ると、その車両を後にした。

 

 ……ん? このワイヤーロープ、何気に強化呪紋鋼繊維製だな……

 たしか……呪紋鋼に特殊な魔法加工を施して、繊維――鋼糸として使いやすい柔らかさを得ながら、鋼本来の強度も失わない新素材……だとエステルが言っていた気がする。

 

 こんな新素材製の物を普通に持っているとは……。なんだかさっきよりも気になってきたぞ……

 うーん……。余ったワイヤーロープを返さないといけないし、制圧が終わったら改めて聞いてみるのも良いかもしれないな。

 

 そう思いながら、次の車両の制圧に移る俺だった――

次回の更新なのですが、所用によりどうしても執筆時間が確保出来ない為、1日空きまして水曜日の更新となります。申し訳ありません……

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