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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第1章 エレンディア編
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第42話[裏] バーンの槍と列車強盗団

<Side:Souya>

「ところで……その槍はその女が持っていたのよね? どうしてバーンが使っているのよ?」

「ああ。魔槍士の女と奴――エセ翼竜との戦闘に加勢した時、俺が魔槍士の女を守る為に得物を壊しちまったんだよ。で、その詫びって事で自分の使っていたこいつを俺に譲って――いや、強引に押し付けてきたんだ。何本もあるから1本くらいくれても問題ないとか言ってな」

「何本もあるのね……。にしても、よくもまあそんな気味の悪い武器を使う気になるわね」

「俺も最初は得体のしれなさに使うのを躊躇していたんだが……まあ、酔った勢いで使ってみたら殊の外使い勝手が良くてなぁ! 使わず嫌いは駄目だと思ったわけだ! はっはっは!」

「そんな食わず嫌いみたいなノリで言われてもねぇ……」


 などというシャルとバーンの会話を聞きながら、俺は思考を巡らせていた。

 

 竜牙姫リリアに似た存在……か。前に深月の所に竜牙姫リリアから手紙が届くという話を聞いたが、あの時、『エレンディアから送られてきている』と言っていたな……

 となると、深月に手紙を送った『竜牙姫リリア』である可能性は高いな。

 

 あの謎の幻獣に、竜牙姫リリア、そして地球からの転移者……か。

 どうやら、アナスタシア自然公園に『何か』があるのは間違いなさそうだな。

 

                    ◆

 

 ――思考を巡らせつつ、シャルとバーンの漫才めいたやり取りをしばらく眺めていると、

「ん、そろそろ次の列車が来る時間。うん」

 と、ロゼが告げてきた。

 

「おっと、そういやそうだな。……既に知ってるとは思うが、正体不明の列車強盗団が最近出没するようになっててな。――気をつけてくれ」

 バーンはそう言いながら俺とシャルを交互に見た。

 

「私が盗賊ごときにやられるわけがないでしょ?」

「そうじゃねぇよ。俺だって強盗団無勢に遅れを取るなんざ微塵も思っちゃいねぇよ。……お前が闇――殺戮の感情に囚われないように気をつけろって話だ」

「……あー……。……まあ、多分大丈夫よ。多分……」

 バーンの忠告に歯切れ悪く答えるシャル。


「……その時はなんとかするから大丈夫ですよ」

 俺はそんな分にバーンに対して言う。

 

「うん、まあそもそも、遭遇しなければ問題ない。うん」

「ま、そりゃそうだがな」

 ロゼの言葉に腕を組んでそう答えるバーン。

 

 たしかに遭遇しなければ何も問題ないのだが……

 こういう時って、大体ロクな事にならないんだよなぁ……

 

                    ◆

 

 ――案の定、と言うべきなのだろうか?

 アナスタシア自然公園までもう少しという所で、俺たちの乗った列車が急停止。

 非常事態が発生した事を知らせる為の魔煌具から、けたたましい警告音が発せられた。

 

「霊具――吸魔鋼糸と封魔網の組み合わせで動力となるエネルギーを奪い取り、《玄重の圧鎖陣》を広域展開してここらへんの重力を増す事で、強制停止させつつ乗客の動きも封じる……か。霊具と魔法の合わせ技とは、随分とまあ手の込んだ事をしてくるな」

「うん、この重力下じゃ、まともに動けない……んんっ」

 ロゼが俺の言葉に同意しつつそう言って前へ進もうとするが、その一歩が重い。

 魔法的な加重状態により、足を上げるのに普通よりも力を要する為だ。

 

「そうだな。――こいつをエステルから受け取っておいて良かったというものだ」

 俺はそう言いながら、重い身体を無理やり動かし、小型の装置を起動する。

 それは魔煌具と霊具を融合した新しい道具――幻導具『SWゾーンブレイカー』だ。


 それを起動すると同時に、一気に自身にかかっている重さがなくなった。

 そして、同じ装置をシャルとロゼにも渡す。

 

「そいつを起動すれば、自身を起点に魔法が無効化される極小範囲の力場が生成される。――要するに、《玄重の圧鎖陣》の影響を受けなくなるって事だな。まあ、自身の魔法も無効化されてしまうが、俺たちは魔法が使えなくてもさして困らないだろ?」

 正確には、魔法発動のプロセスによって調律された魔煌波をスキャンし、再調律する事で発動する前の状態――魔煌波をまっさらな無害な状態に戻してしまうという代物……らしいのだが、シャルとロゼにそんな説明をしてもあれなので、そこは省いた。

 

「幻導具……うん、初めて使ったけど、凄まじい性能……うん」

「たしか、竜の座に至った者以外に発生する『ノイズ』を打ち消す『DLノイズキャンセラー』なんかもこれよね。……先にエステルが竜の座に至っていたら、ソウヤたちを竜の座へと導くのに苦労しなくて済んだと思うと何ともやるせないわね」

 ロゼに続きシャルがそんな風に言って、やれやれと首を横に振った。


「まあ、エステルは『妾の力だけじゃ無理だったゆえ、仮に妾だけが先に竜の座に至っていたとしても、結果は変わらなかったぞい』って言ってたけどな」

 俺はエステルっぽい感じの口調でそう返す。

 

「そういうものなのかしらね? まあいいわ、とりあえず列車強盗団を皆殺しにしましょ」

「ん、それじゃ情報を得られなくなる。程々に殺して。うん」

 シャルとロゼがそんな事を話す。

 程々に殺せってどんな返しだ……と思いつつも、まあロゼが言わなければ、俺が同じような事を言っていた気がするなぁ、とも思った。


 そうこうしている内に、列車強盗団が乗り込んでくる。

 実に手際の良い動きだ。だが……


「大人しくしろ! つっても動けねぇだろうけ――」

 俺たちの車両に踏み込んで来た奴は、言葉を最後まで発するよりも先に、その首が胴体から離れ、勢いよく血しぶきを上げた。

 ……踏み込んできた場所が悪かったとしか言いようがないな。

 

「盗賊は全て死すべきもの。全て殺すのみよ。慈悲などないわ」

 一太刀で首を両断したシャルが、血しぶきを浴びながら言い放つ。

 そしてそれを見て、

「んんっ、盗賊殲滅モードになった。うん、注意しないと、皆殺しにする。うん」

 と、呑気な口調で言うロゼ。

 

 まあもっとも俺も俺で、なるほどこれがそうなのか、雰囲気が全然違うな。

 などと呑気にそんな事を考えていたりするのだが。

何気に盗賊殲滅モードのシャルロッテ、物凄く久しぶり……というより、第1部第1章と第2章の間の間章ぶりですね……

あそこから随分とまあ遠くまで来たものです。


といった所でまた次回! 更新は明後日、金曜日を予定しています!


また、本作と同じタイミングで、最新作『ファンタジー世界の大魔道士、地球へ転移す ~異世界生まれの高校生?~』も更新されています。

よろしければ、こちらもお読みいただけますと幸いです!

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