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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第1章 エレンディア編
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第40話[裏] シャルロッテの一撃

<Side:Souya>

 そう……

 刀や剣を持ったシャルに『普通』なんてものはないのだ。

 

 凄まじい身体能力を生かして『ありえないような無茶苦茶な動き』をするのが、ロゼの専売特許であるように、シャルにもまた、専売特許と言えるであろう『ありえないような無茶苦茶な技』があるのだ。

 否、正確には身につけた……と、言うべきか。

 

「考えが甘いのよっ!」

 シャルは空中で刀と剣を同時に振るい、巨大なX字の霊力の塊を真下に生み出す。

 と、同時に頭を下に向け、剣と刀を突き出す。

 

 ……なんか見た目が闘牛用のバッファローが角を突き出している様に似ているな。

 などとは口に出せないが、まさにそんな感じだった。

 

「――旋刃穿!」


 その声と同時に、巨大なX字の霊力の塊がグルグルと回転し始める。

 それはまさに霊力の螺旋――いや、ドリルだな……

 

「メチャクチャすぎんだろぉぉぉっ!?」

 霊力のドリルを迎え撃つ事になったバーンがそう叫びながら槍を突き出す。

 

 槍から伸びる触手のようなものが、霊力のドリルに殺到。

 当然と言えば当然だが、その程度では止められるわけもなく、回転する霊力に触れる度に、次々に砕かれていく。 

 無論そんな事は、バーンとてわかっているはずだ。

 おそらく先程と同じように、霊力をスナッチ――シャルの霊力の威力がありすぎて相殺になっている――し続けて物量で押し切るのを狙っているのだろう。

 しかし、霊力の方は先程と違い、勢いが衰える様子がまるでなかった。

 

「螺旋によって増幅される霊力を、その程度で防げるとでも思ったのかしらぁぁぁっ! 残念でしたぁぁぁぁぁっ! 無理無理ぃ、無理に決まってんでしょぉぉぉっ!」

「ん、なんか少し魔法探偵シャルロッテっぽい雰囲気がある。うん」

 なんかハイテンション気味のシャルの叫びに、そんな感想を口にするロゼ。

 

 昔の仲間との手合わせによって、当時のシャルの感じが表に出てきたんだろうか? まあ、これはこれでありだな。

 なんて事を考えている間にも、霊力ドリルはその勢いを衰えさせる事なく、バーンへと迫る。

 

 そして、遂にズドンという重い轟音、そして地面の振動と共に、シャルの刀と剣が地面に突き刺さり、地面を深く大きく抉った。

 それと同時に周囲に発生していた霊力の螺旋は凄まじい渦を生み出し、更に広く抉りながら霧散していった。

 

 霊力の余波と衝撃、そして抉られた地面によって舞い上がった土埃に覆われてしまい、クレアボヤンスを用いてですら、ふたりの姿が見えなくなってしまったが、大丈夫なのだろうか……? 主にバーンの方が。

 

 と、そう思っていると、

「シャル、お前……強くなりすぎじゃねぇのか……? つーか、殺す気かよ……っ!?」

 なんて声と共に、片膝をついているバーンの姿が見えた。どうやら無事のようだ。

 

 ……というかあのハルバード、ボロボロだけど、良く見ると徐々に再生していってないか……? どうなってんだ? アレ。

 

「当たる直前に自分から後方に飛んで衝撃波の影響を緩和しつつ、その衝撃波自体もスナッチする事で弱めておいて何言ってるのよ? そのくらい出来るのは分かってたから叩き込んだんじゃないの」

 そんな事をサラッとため息混じりに言いながら、刀と剣をそれぞれ鞘に納めるシャル。

 

 それに対し、バーンは両手を広げやれやれと首を振ってみせる。

「そりゃそんくれぇ出来るに決まってっけどよ……。つーか、なんだよあれ……」


「真幻術と霊力を組み合わせたオリジナルの必殺技……といった所かしらね」

「ったく……とんでもねぇものを編み出したもんだ……。やれやれ、いつの間にか力量に大差を付けられちまうとはなぁ……。さすがは、『黄金守りの不死竜』の『剣聖』と言った所か」


「あら、私が『黄金守りの不死竜』の人間だって知ってたの?」

「はっ、そのくらい知ってるっつーの。無論、そっちの『竜の賢者』ソウヤ・カザミネの事もな。……もっとも、シャルはともかく、ソウヤの方は名前と……以前は史上最速ランクアップの新人討獣士だったくらいしか情報をねぇけどな」

 シャルの問いに、そう言って肩をすくめてみせるバーン。

 まあ、さすがに鉄道運行保安隊のトップともなれば、『黄金守りの不死竜』の情報くらい持っていて当然か。

 

「あー、その情報は少し訂正しておいた方がいいですね。――だった……ではなく、今でも討獣士ですよ、俺は。たまに討獣士ギルドにも顔を出していますし、依頼もきっちりこなす時がありますからね」

 と、横から訂正と補足の言葉を投げかける俺。

 

 なにしろ、いくつかのギルドの支部長……いや、それどころか、ルクストリアにあるギルド本部の本部長すら『黄金守りの不死竜』に属するのだから、それは当然だと言えよう。

 ……というか、地方の小さな街や村の住民にとっては『竜の御旗』のような存在よりも『大型害獣』や『魔獣』の方が身近にある『脅威』だからな。

 そういう所へ訪れた時は、今でも何かしらの依頼はこなしているんだよなぁ。

 

「……おいおいマジかよ。まさか『黄金守りの不死竜』のトップが討獣士として、害獣や魔獣を退治してるだなんて、夢にも思わなかったぜ……」

 呆れたような、歓心したような、何とも言えない表情と声でそんな事を言ってくるバーン。

 

 まあ……依頼した方も、俺が『黄金守りの不死竜』のトップだなんて夢にも思っていないだろうしな。実際、気づかれた事ないし。

螺旋は優秀です(何)

そして、思ったよりも戦闘が長くなりました……


さて、そんな所でまた次回! 更新は明後日、月曜日を予定しています!


最新作『ファンタジー世界の大魔道士、地球へ転移す ~異世界生まれの高校生?~』も(ストックのある限りは)毎日更新中ですので、こちらもよろしければお読みいただけますと幸いです!

(これまでは不定期更新でしたが、現在は本作と同じく12時更新になっています(たまに最終調整の都合で遅れる事があるかもしれませんが……))

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