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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第1章 エレンディア編
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第37話[裏] ロゼとシャルロッテ

<Side:Souya>

「……で、どうしてロゼがいるのよ?」

 ゼクタ渓谷からリグナットへと続く、岸壁沿いの道で俺たちを待っていたロゼに対し、ため息まじりにそう問いかけるシャル。

 ロゼはそれに淡々と答える。

「ん、それは簡単。ソウヤに、自然公園の案内と作戦参加をお願いされた。うん」

 

「むぅ……」

 何やら不満げにゴニョゴニョと呟くシャル。

 むぅ……エルラン族じゃないから、何を言っているのか聞き取れん……

 

「ん、それは残念。……ではない。うん、あえて言うなら……ザマァ? うん」

 シャルの声が聞き取れたらしいロゼが表情ひとつ変えずに、そんな事を言った。

 いや、ザマァって……

 

「ちょっ!? その言葉、どこで覚えたのよ!?」

 突然慌てるシャル。……ん?


「ん、魔法探偵シャルロット。ちょっと前に読む機会があって読んだら、うん、『ねぇねぇ、今どんな気持ちかしら? ねぇ、教えて? 教えてくれたら、ザマァって言ってあげるわ』っていう、うん、見事な煽りの言葉が出てきた。で、面白かったから覚えた、うん」

「ひぎゃぁぁぁっ! 覚えないで!? その真っ黒すぎて闇に葬りたい言葉を覚えないでくれないかしらっ!?」

 ロゼに対して、そんな事を言って頭を抱えるシャル。

 

「……それってつまり、シャルがその言葉を本当に口にしたって事か?」

「え、えっと……。さ、さすがにロゼが今言ったのは脚色された物だけど……。そ、その……そこまでじゃないけど……それに近いような事は……言った……わ。い、今思うと……黒すぎたって思うわ……。あぅぅ」

 俺の問いかけに、シャルが真っ赤になった顔を手で覆いながら答える。

 というより、シャルが『ひぎゃぁぁぁっ!』だの『あぅぅ』だのという、滅多に……いや、ほぼほぼ発する事のないような言葉を口にしてしまう程、恥ずかしい記憶なのか……


「それはなんというか、ちょっと見てみたい気もするな」

 そう言ったら、シャルが凄く絶望的な顔をしたので、俺は可哀想になり、

「……が、まあそれはまた今度だ。鉄道の時間を考えると、そうそう悠長にはしていられないからな」

 と、そう続けるように言い、話を終わらせた。

 

 ……シャルって、あの霊峰での『騎士の宣言』以来、俺の頼みをすぐに実行しようとする傾向にあるからなぁ……

 いやまあ、ありがたいのはたしかなんだけどさ……

 

「ん、鉄道と言えば……最近、列車強盗団がこの辺りに出る。うん」

「列車強盗団とはまた懐かしいな……」

 俺自身は直接遭遇していないけど、シャルとロゼ、そして……アリーセが遭遇したんだったな。

 

「うん、あの時はシャルが片っ端から殺戮した。うん」

「……殺戮って言い回しされると、まるでこっちが悪人みたいじゃないの。悪いのはあっちだし、盗賊はすべからく殺し尽くすべきものよ。問題なんてないわ」

 ロゼに対しそんな事を言って肩をすくめるシャル。

 その瞳に、少しだけ暗い感情を宿しながら。

 

 ……相変わらず、盗賊に対する憎悪は消えていないんだな。


「そういえば……ロゼがリグナットにいるのは、エレンディア北部鉄道の新路線敷設工事の『正体不明の資材』について調査するため……だったわよね? その列車強盗団と何か関係があるのかしら?」

「ん、それはまだ何とも言えない。うん、『正体不明の資材』は『竜の御旗』に属する、あるいは協力関係にある組織が、うん、何かをしようとしているであろう事までは明白。うん、だけどそこに列車強盗団が絡むかはわからない。うん」

 シャルの問いかけにそう返すロゼ。

 

「鉄道の工事を請け負っている業者は?」

「ん、完全に白。『正体不明の資材』は、うん、業者が行っている工事の現場に輸送する中に紛れ込ませて、なおかつ、うん、業者が受け取る前に消えている。おそらく、うん、資材の怪しい流れに気づいた人間の目をその業者に向けさせる為の偽装、うん」

「偽装にしては手が込んでいるというか、輸送途中で消えるってのが良くわからんな……。いや、輸送に使っている路線の途中に何かあるのか……?」

 シャルとロゼの話を聞き、俺はそこまで口にした所で気づき、言葉を続ける。

「ああ、そうか。途中で列車強盗団に回収させている可能性があるのか」


「うん、だから私は『鉄道運行保安員』として、調査活動をしている。うん」

「――鉄道運行保安員……エレンディアの警備局の手が届かないような地方の鉄道運行を安全に行う為に作られた組織……ね。私の昔の仲間であるバーン――バーングラム・ディルク・オーヴィアスがボスをやっているはず」

「うん、『レンジ、ヴァルガス両名の紹介』という『経路』で入り込んだ、うん」

「ああ、レンジとヴァルガスからその辺の話は聞いている」

 ロゼの言葉に頷き、そう返すと、

「私は聞いていないけど……」

 と、不満げな表情で言ってくるシャル。

 

「まあ、シャルは例の残党狩りでその場にいなかったしな」

「ああ、なるほどね。――元傭兵団長と、当時の団員が多く所属する傭兵団の団長双方が紹介してきたら、さすがに無視出来ない……いえ、それどころか、バーングラムなら諸手を挙げそうだわ。そこまで推す人物なら、良い手合わせ相手になるだろう、ってね」

 納得したシャルがそんな事を言って両手を左右に広げてみせる。


「ん、たしかにその通り。入った瞬間、手合わせとか言われた、うん。まあ、未だに負けた事ないけど、うん。あ、昔の仲間で良く手合わせしていたシャルよりもずっと強いとか言ってた、うん」

 などと言ってうっすらドヤ顔をするロゼ。

 

 ……一見、ドヤっているようには見えないが、俺にはなんとなくわかった。

 アリーセ程じゃないけど、ロゼの感情変化が割と分かるようになってきたな……

 

「ふぅん……さすがというべき……なのかしらね。……昔は私とバーンで手合わせすると、勝率は五分五分くらいだったけど、今なら全戦全勝間違いなしだわ。……どっかで出会えないかしら。このままロゼと私とで、まるで能力の差が大幅にあるように思われていたらシャクだし? さほど差がない事を教えてあげないと……ね」

 ロゼの言葉にそう返し、笑みを浮かべるシャル。


 ……笑ってるけど、目が怒りに満ちてるぞ……

 そんなにロゼより弱いと思われている状態なのが、嫌なのか……

 でも、ロゼより強いと言わない辺りは、一応ロゼの強さは認めているんだな。

なにやら妙な事を話していますが……?

という所で、また次回! 更新は明後日、火曜日の予定です!


それと、第3作(新作)となる『ファンタジー世界の大魔道士、地球へ転移す ~異世界生まれの高校生?~』も順次更新中です!

毎日、夜のどこかで更新する不定期な状態が続いていてあれですが、そろそろ決まった時間更新が出来るようにしていきたいと思っていますので、こちらもよろしくお願いいたします!

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