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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第1章 エレンディア編
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第34話[表] 機幻獣と魔法と地球

<Side:Akari>

 変身に驚きつつも、私はクーに視線を向ける。

 クーは犬の姿のまま、凄まじい速さで疾走。

 壁を駆け上がり、その勢いのまま天井すらも駆け、機幻獣・蛇龍の真上へと到達した所で、もとの姿へと戻る。


 ……って、とんでもない動きするわねぇ……。なんなのあれ…… 

 なんて思っていると、

「てえぇぇぇいっ!」

 という掛け声と共に、どこからともなく現れたハンマーを手に、クーが機幻獣・蛇龍に向かってダイブ。

 その落下速度を乗せる形で、勢いよくハンマーを頭――正確にはエネルギーが収束しつつある口の真上辺り――に叩きつけた!

 

 衝撃によって口元に収束していたエネルギーが、バチィンッ! という激しい炸裂音と共に、まるで砕け散るようにして消滅していく。

 

「す、凄いわね……」

 感嘆の声が口から自然と出てきた私に対し、

「驚くのは後にして追撃です! 動きを止めてください!」

 と、声を大にして言ってくるユーコ。

 

 その言葉にハッとなった私は、即座に次元鞄から引っ張り出した弓を構えると、機幻獣・蛇龍の胴体めがけてひたすら連射する。

 

 後方に飛び退いて地面に着地するクーと入れ替わる形で、私の放った矢が殺到。

 回避しようとするも避けきれず、半数近い矢が突き刺さる。

 ……まあ、半数は外れたとも言うけど、そこはそれ。

 元々全部を当てるつもりで撃ってはいないし、追撃かつ牽制、そして目くらましとしては十分というもの。

 

 そう……。魔法の発動までの時間稼ぎと目くらましが出来ればそれでいいのよ。

 だって、クーの声に反応して攻撃態勢に入ったのは私だけじゃないし?

 なんて事を考えつつ、私はユーコの方へと顔を向ける。

 

「――《翠雷の叢雲》!」

 そう言い放ち、魔法を発動させるユーコ。


 機幻獣・蛇龍の周囲に地下だというのに小さな黒雲が次々に生み出されていく。

 そして、それぞれの黒雲がバチバチと放電し、機幻獣・蛇龍に向かって雷撃を放ち始める。

 

 四方八方から雷撃を浴びる形となった機幻獣・蛇龍は、さすがに回避しきれず、いくつもの雷撃に貫かれ、その身体をブルブルと震わせながら落下。そのまま地に倒れ伏す形となった。

 

「……弓を構えた時に、時間稼ぎしろと言わんばかりの視線を向けてきたから、何をするのかと思ったけど……凄い威力ね」

「そうですね。今の魔法、威力はあるのですが、発動の起点と対象の指定が難しいんですよ……。あまり動かれると明後日の方向に雷撃が飛んでしまいますし……。なので、時間稼ぎというか、対象の足止めをしておく必要があるのが欠点ですね……」

「なるほど……。要するに、威力は凄まじいけど命中率の悪い魔法って事ね」

 と、そんな風にゲーム的な感じで私が言うと、ユーコもまた、

「まあそういう事ですね。そして、命中率が悪いのなら、相手の回避率を下げてやればいいだけですからね」

 などと、ゲーム的な言い回しで返してきた。


「納得したわ。私の攻撃は文字通り足止め――移動による回避を阻止するデバフになったってわけね」

「ええ、その通りです。視線で理解してくれて助かりました」

「ま、ユーコとは文字通りずっと一緒に居るんだから、そのくらい理解出来て当然よ」

 ユーコに対し、私がちょっとだけ誇らしげにそう答えた所で、

「凄いのです。とてもお強いのです」

 なんて事を言いながらクーが戻ってくる。

 

「それを言うなら君もそうじゃないか? さっきのハンマーの一撃、クリティカルヒットしていたぞ?」

「あ、気づいていたですか、さすがなのです。まあ、まだ100%狙って出せるものではないので、割と賭けな所もあったですが、どうにかこうにか上手くいったのです」

 そんな話をするロディとクー。

 

「クリティカルヒット……ですか? そんな概念、あったんですか?」

 と首を傾げながら問うユーコに、

「はい、あるですよ。……と言っても、地球のゲーム――RPGとかにあるソレと違って、偶然出るようなものではなく、幾つかの条件を満たした状態で、魔煌具や魔法による攻撃が当たった瞬間に発生する、という代物なのです」

 なんて説明をするクー。

 へぇ、なるほどねぇ……。って、ん? んん?

 

「え? 地球? ……あ、あれ? クーって地球人……なの? というか、地球に亜人種っていたの……?」

 困惑しながら疑問の言葉を口にする私に、

「いえ、私は元々はこっちの人間――ヒュノス族なのです。とある組織によって、こっちの世界から地球へ実験体として連れて行かれたのですよ。そして、地球で行われていたキメラ技術の亜種ともいうべき技術の実験によって、私はこのような姿になったのです」

 などという、とんでもない話をしてくるクー。

 

「う、うわぁ……。それはなんというか……凄くヘビーでダークな話ね……」

「あ、そんなに気になさらなくても大丈夫なのです。たしかに酷い経験ではあったですが、それがあったからこそ、私は普通では経験出来ないような事を経験したり、出会う事のないような出会いがあったりしたのです。――あの時の不幸の何倍も幸せを得られたのです。今では、あの過去に感謝すらしたいくらいなのです」

 私とユーコの顔を見たクーが、そんな風に言って満面の笑みを浮かべてみせる。


 なんというか……強いわね、クーは。

 だから――

「……あ、やっぱり嘘なのです。前言撤回するのです。『感謝』はしないのです。したくないのです。せいぜい、『許す』くらいにしておくのですっ!」

 などと、最後にちょっと締まらない事を、捲し立てるような感じで口にしたのは、聞かなかった事にしよう。うん。

機幻獣、凄くあっさり倒していますが、蒼夜の力で大幅に戦闘力が強化されているクーが、クリティカルヒットを叩き込んでいる時点で、実はもうほとんど死に体という奴だったりします。

大体、残りHPの9割をクーが削り、1割を灯とユーコが削った……みたいな感じでしょうか。


といった所で、また次回! 更新は明後日、水曜日の予定です!


それと……今週のどこかで、第3作目となる物語を公開しようかと思っていますので、そちらもよろしくお願いします!

(ラブコメ風味(あくまで風味)現代ファンタジーといった感じの内容で、敢えて『同じようなネタ』であまり長くない話を3作作るという試みの1作目です!)

まあ、まだ出せる状態に仕上がる前の段階なので、来週になる可能性もなくはないですが……

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