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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第1章 エレンディア編
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第32話[Dual Site] クーレンティルナが思う事

<Side:Coolentilna>

 エステルさんから連絡があってエステルさんのお店を訪れた私は、想定外すぎて心底驚いたのです。

 アルチェムの転生体と言われている人物と、アストラル体がいる事は知っていたものの、ここまで雰囲気が似ているとは思ってもいなかったのだから、当然なのです。

 黒髪の女性――灯さんという名前だったはずなのです――は、そこまで面影はないものの、ユーコという名のアストラル体の方は、アルチェムに顔がそっくりなのです。

 まあ、アルチェムと違って見た目は完全にヒュノス……いえ、蒼夜さんや朔耶さんと同じ日本人で、なおかつ黒髪ではあるですが。

 

「なんか、凄く驚いているようですけど……大丈夫ですか?」

 ああ、なんだか喋り方が少しアルチェムに似ているのです……っ!

 そんな事を口走りそうになるも、それをどうにか押し留め、

「あ、い、いえ、アストラル体の人を久しぶりに見たので驚いてしまっただけなのです。心配をかけてしまってすいませんです」

 と、そう私は答えるのです。

 

「うん? 貴方は前にもユーコみたいな存在を見た事があるの?」

 そんな風に問いかけてくる灯さん。

 

 うーん……この纏っているオーラというか、霊力というか……ともかくそういったものが、以前対峙した、冥将カローア・ヴィストリィのものに似ているのです……

 でも、そんな中にアルチェムの雰囲気も感じるのです……

 たしかにこれは、蒼夜さんが言うように『混ざっている』と言って良いのです……

 

「もしもーし?」

「あっ! す、す、すいませんですっ! ちょっと考え事をしていたのです! ……えと、そ、それで、ア……ユーコさんと同じような方ですが、たしかに私は見た事があるのです。……もっとも、既に消滅してしまわれたですが……」

「え? 消滅……? も、もしかして、ユーコもいつか消滅する……とか?」

 私の言い方が悪かったのか、灯さんが動揺したのです。

 

「あ、いえ、すいませんです。言い方が悪かったのです。ユーコさんが勝手に消滅してしまう事は、おそらくないと思うです。あの方が消滅してしまったのは、明確な原因と理由があって、それはユーコさんにはまったく当てはまらないのです。だから、安心して良いのです」

 そう私が告げると、とてもホッとした表情をする灯さん。

 

 先程の動揺といい、今の表情といい、灯さんにとって、ユーコさんはとても大事な存在であるというのが良くわかるのです。

 

 カローア・ヴィストリィの魂が混ざっていても、やはり全然違うのです。

 ……同じく、アルチェムの魂が混ざっていても、やはり全然違うのです。

 ユーコさんの方は、少しアルチェムに似ているですが、それでも違うのです。

 

 私は自らに言い聞かせるかのように、そんな事を心の中で呟いた後、

「――ところで、皆さん広捜隊の方なのですよね? 私に協力して欲しい事があると伺ったのでやって来たですが、何について協力すれば良い感じなのです?」

 と、気持ちを切り替えて、何も知らない(てい)で問いかけたのです。

 

                    ◆


<Side:Akari>

 ――これまでの経緯を説明すると、クーレンティルナ――クーは、私たちの調査への協力に快諾してくれた。

 そして、「早速、第3トンネルへ行ってみるのです」というクーの提案により、第3トンネルへとやってきた私たち。

 

「先日よりも掘削が進んでいるようだが……まあ、大体ここらへんだな」

 掘削のけたたましい音が響く工事中のトンネル内で、立ち止まってそう告げるロディ。

 

「なるほど……たしかに普通ならこんな所に現れるはずがないのです。ちょっと色々と計測してみるのです。エステルさんから機材は借りてきているのです」

 そんな風に言うなり、クーは自らの次元鞄から良くわからない機材を次々と取り出し、それをトンネルの床に設置していく。


 しばらくクーの動きを眺めていると、計測を終えたらしいクーが難しい顔で、

「――(くさび)……のようなものが打ち込まれていて、それによって人為的に龍脈の流れと魔煌波が乱されているのです」

 なんて事を言ってきた。


「それは、なんとか出来るものなのですか?」

「位相をズラした状態で打ち込まれているので、位相の強制調整を行って実体化させる必要はあるですが、実体化さえさせてしまえば、あとは壊すだけなのです」

 ユーコの問いにそう答えるクー。


「実体化? それってどうやってやるの?」

 という私の問いかけに、クーは私の方を向き、

「それについては、灯さんの出番なのです」

 なんて事を言ってきた。


「え? 私?」

「はいです。灯さんの持つPACブラスター……という名前だったですか? それが重要になるのです。エステルさんからデータをいただいて確認してみたですが、それには実体化――顕現前の魔獣を形作る瘴気を霧散させる力があるのです」

「それに関しては知っているわ。私もそういう風に使っていたもの」

 私が次元鞄にしまっておいたPACブラスターを取り出しながら言うと、

「実は、その性質を上手く利用する事で、位相のズレた場所にある物を引き寄せる事が可能だったりするのです」

 なんて事を言ってくるクー。


「えっ!? これって、そんな事も可能なの!?」 

「はいです。可能なのです。なので、今から指定する場所に『照射』してくださいです」

 驚く私に、クーは淡々とそんな説明をしてくる。

 どうやら本当に出来るという事みたいね。


「良くわからないけど……私がやるべき事だけは理解したわ。うん、いつでも良いわよ」

 私がそう告げると、

「では先に作業員の方々を一旦外に避難させるのです。……あくまでも私の推測ではあるですが、一般の方には少々危険な状況になるはずなのです」

 と返してくるクー。


 一般の方には少々危険な状態……? 守護者的な存在と戦闘になる……とかかしら?

 ゲームとかだと、こういうのは大体ボスクラスの敵が守っていたりするし。


 なんて事を思っていると、

「なるほど……。わかった、とりあえず現場責任者に話をしてくる」

 と言って、例の現場責任者に話をしに向かうロディ。


「――ところで、ユーコさんは成長しない……とお聞きしましたが、灯さんが産まれた時からその姿なのです?」

 ロディを待つ間、暇を持て余したのか、クーがそんな疑問を口にしてきた。


 ……まだその話は、クーにはしていないのだけど……。エステルあたりから聞いたのかしらね?

今回はクーレンティルナ視点の前半と、灯視点の後半の構成となりました。

次回は少々危険な状況と言っているので……?


といった所でまた次回! 更新は明後日、土曜日の予定です!

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