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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第1章 エレンディア編
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第20話[Dual Site] ふたつの魂、肉体とアストラル体

<Side:Souya>

「カローア・ヴィストリィ……ですかー? 異界……いえ、別の船のソウルデータはー、情報量が少ないんですよねー。『銀の王(しろがねのおう)』によってー、DLAWネットワーク経由でのアクセスをー、ブロックされてしまっている状態なのでー、データリンクを用いてー、最新の情報を取得する事も出来ませんしー。竜の座にバックアップされている情報だけでー、なんとか解析してはみますがー」

 なんてことを言いながら、指を動かすディアーナ。


 まあ、ディアーナが竜の座を掌握しなおした時には、既に『銀の王(しろがねのおう)』による妨害プログラムが何重にも仕込まれている状態だったので、致し方ない所ではあるな。

 なんとかそれらのクラックを進めてはいるが……途轍もなくややこしいからな……

 

 なんて事を思っていると、中空に別のソウルデータが展開される。

 

「あー……言われてみるとー、たしかにアルチェムさんの物と異なっていた部分はー、バックアップに残されていたカローア・ヴィストリィのデータとー、部分的にはー、完全一致していますねー、全てのデータを得られているわけではないのでー、情報のない部分でー、異なっている箇所があるかもしれませんがー、現時点ではー、残りの3割の部分はー、カローア・ヴィストリィのものであると考えてー、ほぼ問題ないと思いますー」

 と、そう告げてくるディアーナ。


 ああ、やはりそうなのか……

 つまり、カローア・ヴィストリィとアルチェムが融合した状態で転生した事で、アカリという少女の肉体に、魂が混ざりあっている……という感じなのではないだろうか?


 俺がその推測をディアーナに伝えると、ディアーナは少し考えを巡らせた後、

「そうですねー。魂が混ざりあいー、ひとつの肉体に宿ったもののー、二人分の魂はー、当然ながら肉体に収まりきらずー、溢れた分がアストラル体となった……と、そう考えられますねー」

 なんて事を言ってきた。

 

「要するに……アカリもユーコは、アルチェムでありカローア・ヴィストリィでもある……と、そう考えて間違いない、と?」

「はい、そうなりますー。ただー、魂魄(こんぱく)構成の割合が五分五分ではなくー、2/3と1/3というー、少し偏り――差がある構成なのでー、アカリさんという方がー、カローア・ヴィストリィ寄りでー、ユーコさんという方がー、アルチェムさん寄りですねー」

「なるほど……。なかなかにややこしい状態になっていますね……」

「そうですねぇー……。ここまで混ざりあった状態でー、自我――人格形成されているとー、分離は難しいですからねぇー……。無理にやったら大変な事になりますー」

 なんて事を言ってくるディアーナ。

 

 まあもっとも、さすがに出来るとしてもやるつもりはないが。

 そんな今の人間を消し去って、過去の人間を取り返すかのような――人の命や記憶を(もてあそ)ぶような方法を取ろうものなら、あの『竜の御旗』や『銀の王(しろがねのおう)』たちと同類になってしまうからな。

 俺たちは、そういうのとは違う方法で、過去の――失われた人間を取り返そうとしているのだから。


                    ◆

 

<Side:Akari>

「――っと、こんな所かしらね」

 エステルから貰ったペンダントに組み込む魔法を決め終えた私がそう呟くと、 

「身体能力の向上や、隠蔽、目くらましといった行動を補助するような魔法ばかりで、攻撃魔法はふたつしかないようですが……良いのですか?」

 と、疑問の声を投げかけてくるユーコ。


「遠距離攻撃は弓で出来るから別にいらないかなーって思うのよね。だから、至近距離に踏み込まれた時に、カウンターのような感じで使える魔法と、矢を当てづらい場所に攻撃出来る魔法だけにしてみたわ。それに――」

「それに……?」

「ユーコがほとんど攻撃魔法だから逆に丁度いいかなって」

 ユーコ用の具足に組み込む予定の魔法一覧が表示されているリストを見ながら、私はそう告げる。

 

 魔法リストを見る限り、地、水、火、風、氷、雷、光、闇……8属性の攻撃魔法を2種類ずつバランスよく選んでいて、どんな属性の相手にも対応出来る状態になっていてバランスは凄く良いのよね。

 まあ、そのせいで全ての枠をそれだけで使い切ってしまっているのだけど……

 

「本当は全ての属性の攻撃魔法を用意したかったのですが……さすがに枠が足りず……」

「16もの魔法を組み込める時点で、枠はかなり多い方なんだけどな」

 ユーコの言葉を聞いていたロディが、やれやれと首を横に振り、少し呆れ気味にそう言ってくる。


「なにしろ、俺の特注品のこの剣でも8つだしな。つっても……こいつは2枠分ほど、剣を飛翔させた時の制御用に使っているから、実際には6つみたいなもんだが」

 ロディの剣って、なかなか面白い仕組みよねぇ……

 なんて事を思いながら、私はペンダントへと視線を落とす。

「そう言われると、このペンダントも8つが限界だったわね」


「アクセサリータイプで、8つってかなり多いけどな。普通は2つとか3つだし」

「え? そうなの? それじゃあ、結構良い物をくれたって事?」

「同じような物があそこで売られているが……」

 私の問いかけにそう答えて指さすロディ。

 

 そちらへと視線を向けてみると、ショーケースに入れられた魔煌波生成回路付きアクセサリーが並べられているのが目に入った。

 

「あ、本当だわ。全く同じではないけど、たしかに売られているわね。えーっと、値段は……」

 と、呟くように言いながらショーケースを――値札を見る私。

 

 ……そして、そのまま固まった。

 

「どうかしたんですか?」

 と、怪訝な表情で問いかけてくるユーコが、値札を見る。

 

「よ……っ!? 49万8000リム……っ!?」

 驚愕の表情で値段を告げるユーコ。

 

 そう、私が貰ったペンダントに似たそれは、なんと49万8000リムだったのだ。

 9800リムの弓の実に50倍っ! 弓のおまけなんて物じゃないわよっ!? これ!

 

 と、そこで驚きの原因である人物――エステルが姿を見せ、

「おぬしら、何故にショーケースの前で固まっておるのじゃ?」

 なんて事を、首を傾げながら問いかけてきた。

 

 そんなエステルに対し、私はあれこれ言いたい所だったが――

 

「た……」

「た?」


「高すぎるわよぉぉぉっ!?」

 私の口からは、それしか言葉が出てこなかった。

DLAWネットワークの『DLAW』は、Dimensional Leaping Astral Wave(次元跳躍幽星波)の略で、『ドロウ』ネットワークと読みます。

雑に言うと、魔法的な仕組みでワープする通信波を利用したインターネット……みたいな物です。


といった所でまた次回! 更新は明後日、水曜日を予定しています!

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