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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第1章 エレンディア編
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第18話[表] アストラルという存在

<Side:Akari>

「実を言うと、ユーコのようなアストラルだけで構成された者というのは、他にも少数だが存在しておるのじゃ」

 店のバックヤードにあたる場所に作られた小さな工房へと移動した所で、エステルがそんな風に言ってくる。

 

「え? 他にもいるんですか……?」

「うむ。まあ……出会う事があるかは分からぬがの。それに……じゃ。それらの者は、ユーコとは違って、普通に物を持つ事が出来るのじゃよ」

「えっ!? そ、そうなんですか!? そ、それならどうして私は……?」

「それは現時点では何とも言えぬが、うーむ……そうじゃな、考えられるのはアカリと半ば融合しておるような状態じゃから……かのぅ?」

 ユーコの問いかけにそんな推測を述べるエステル。

 

「んん? 私と半ば融合している状態だから? それってどういう事なの?」

「うむ、簡単に言えば身体機能の大半がアカリの肉体に依存しておるのじゃよ。で、精神的な部分だけ、それぞれ別に機能しているわけじゃな」

「な、なるほど……? えーっと、つまり……ふたりでひとつの肉体を共有しているって事かしら?」

「ちょっと違うのぅ。あくまでも肉体はアカリ自身の物じゃ。そこに精神的な部分だけのユーコが乗っかっておる感じじゃな」

 エステルが私の言葉を聞き、顎に手を当てながらそう訂正してくる。

 

「要するに、アカリの家にふたりで住んでいるけど、家主はあくまでもアカリで、ユーコは家の中の一部屋を間借りしているような物って事か。アカリは全ての部屋に入れるけど、ユーコは決まった部屋にしか入れない……みたいな、そんな感じだな」

 ロディが腕を組みながらそんな風に噛み砕いた説明を口にした。

 

「あ、なるほど! そう言われると分かりやすいわね!」

 私がそう言うと、横のユーコも同意するように首を縦に振る。


「そういう意味では、やりようによっては、ユーコも他のアストラルだけで構成されておる者たちのように、まるで肉体があるかのように振る舞う事が出来るようになる可能性――というか方法もなくはない気がするのぅ……。まあ、もっともさすがに妾も初めての事ゆえ、残念じゃが、すぐにどうこう出来るというわけではないがのぅ」

 エステルはそこまで言うと一度言葉を切り、ユーコの方へと顔を向け直し、

「――というわけで、今はまず具足を作るとしようかの」

 と、告げた。

 

「あ、はい……そうですねっ! えっと……? 私は一体何をどうすればいい感じなのでしょうか……?」

「うむ。まずは霊力の強さやアストラルの柔軟性といった諸々の数値測定じゃな。具足をそういったものに適合する形にせねばならぬからのぅ」

「測定……ですか?」

「そうじゃ。あそこにボックスがあるじゃろ? あの中に入ってくれぬかの?」

 エステルはそう言って、工房の奥にある証明写真ボックスのドアをつけたかのような装置を指差す。

 

「はい、わかりました」

 ユーコはそう答えると、早速そのボックスの中に入り込……もうとして、

「あ、あれ? このドアすり抜けられませんね……」

 なんて事を言ってきた。……あれ?


「ああ、すまぬ。そのドアには反霊性障壁という術式が組み込まれておってな。アストラルの通過を阻害するのじゃ。今開けるわい?」

 反霊性……障……壁? う、うーん……なんだか良く分からないけど、要するに霊体でもすり抜ける事の出来ないドアって事で良さそうね。

 

「通過を阻害する……。そ、そんなものがあるんですね……」

「うむ。ちなみに、これを応用した通信波遮断障壁という物もあるぞい」

「ああ、あの通信機が使えなくなる壁か……。警備局の『重要情報管理室』にも設置されているな、そういや」

 エステルの言葉に、ロディが何やら考える仕草をしながら、そんな事を言う。

 

「それはおそらく、そこに収められている情報を、通信を使って外部に漏らされないようにするため……といった所じゃろうな」

 と、エステル。なるほど……機密保持のセキュリティに使われているって事ね。

 

「――さて、それでは計測するぞい。……ああ、すこーしばかりビリビリしたりチクチクしたりサワサワしたりするやもしれぬが、まあ……すぐに済む故、ちょーっとだけ我慢するのじゃ」

 ユーコがボックスに入ったのを確認すると、エステルはそんな事を言ってドアを閉める。


 ビリビリとチクチクはともかく、最後のサワサワって何……?


「え? あの、ビリビリにチクチクにサワサワ……ですか? あ、あの、ちょっと、ま――」

 ユーコが何かを言おうとしたが、言い終えるよりも先に「ポチッとな」と、わざわざ声に出しながら、エステルが手元の装置の『計測』と書かれたボタンを押した。


 ……というか、こっちの世界で『ポチッとな』という言葉を聞く事になるだなんて、思ってもいなかったわ。

 

 と、そんなどうでもいい事を考えていると、

「ふわっ!? ひゃうっ!? あうっ!? ひぎぃ!? ふおぉっ!? みぎゃっ!? ふええっ!? くふぅっ!? ぴぎゃぁ!?」

 などという今まで聞いた事もないようなユーコの声が、次々とボックスから漏れてきた。

 

 ……え、えーっと……?

 い、一体、中で何が起こっているの……かしら……ね?

何が起きているのかは良く分かりません(何)


さて、次回の更新ですが……明後日、土曜日の予定です!

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