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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第1章 エレンディア編
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第15話[表] 部屋と掃除機とギルド、そしてデパート

<Side:Akari>

「ちょっと狭いかもしれないが許してくれ。シャワールームはあるがバスルームがなくてな。風呂に入りたい時は、この建物の裏口から出て徒歩2分くらいの所にある風呂屋――ああ、この部屋の窓から見えるアカツキ……日本風の建物がそうだ――に行ってくれ」

 部屋に入るなり、そんな事をロディが言ってくる。

 

 窓から外を見ると、たしかに裏手の道の先に、日本の古民家風の建物があった。

 あそこがお風呂屋さんらしい。

 でも……そこよりも気になるのは……


「狭い……んですかね?」

 と、ユーコが私が気になっている事を先に口にした。

 

「向こうの私の家――マンションの一室がすっぽり収まってなお、あり余るくらいの広さがあるわね……」

 ――というより、下手したら二部屋分近くある気がするわ。つまり……圧倒的に広いと言わざるを得ないって事で……


「十分すぎですね」

「十分すぎるわね」

 顔を見合わせてから、ロディに対しそう同時に告げる私とユーコ。

 

「お、おう、そうか。それならいいんだが……。家具とかは最初からこの部屋にある奴しかないから、不足している物は自分で買ってくれ」

 と言われ、部屋の中を改めて見回す私。

 

 クローゼット、食器棚、普通のタンスっぽいもの、ベッド、いかにもオフィスにありそうなデスクと椅子……

 一通り揃っており、すぐに不足しそうなものはない。

 

「……あの隅っこに置いてある、ダストボックスにローラーと掃除機を合体させたような代物はなんですかね?」

 ユーコがそんな事を言いながら指でそれを指し示す。

 

「え? 普通にゴミ箱じゃないの?」

「ああ、あれはクリーニングドールっていう魔煌具――マジックアイテムだな。上部の赤いパネルに手を触れると室内のゴミを自動的に感知して回収してくれる。で、決まった時間になると、廊下のダストシュートまで自動で捨てに行ってくれるぞ」

 私の言葉に続くようにして、そう説明してくるロディ。

 

「まさかの全自動掃除機! しかも、自動ゴミ捨て機能付き!」

「ある意味、ファンタジーな掃除機ですね」

 私の驚きの声に対し、ユーコの方は淡々とそんな風に言う。

 

「まあ、ファンタジー世界だからな。備え付けの物はあれしかないが、あの手の家電の代わりになる魔煌具はかなりあるから、そっちも必要な物は買ってくれ」

「な、なるほど……それはちょっと――いえ、凄く気になるから、売っている場所へ行ってみたいわね」

「ああ、だったら今から近くのデパートにでも行ってみるか。案内するぞ」

「デパートなんてあるのね……」


 ここは中世風のファンタジー世界ではないので、別にあってもおかしくはないのだけれど、やっぱりなんだか不思議な感じがするわ……


「この都市――エレンディアは、西のフェルト―ル大陸にある、世界最高峰の魔煌技術を有するイルシュバーン共和国って国の、首都ルクストリアに勝るとも劣らない程に発展しているからな。いや……建築の面ではルクストリア以上か」

「なんだかよくわからないですけど、凄いというのだけは理解出来ましたね……」

 ロディの説明に首を捻りながらそんな風に言うユーコ。

 ルクストリアという場所を知らないので、そう言われても……って感じよね。

 

「そうね……。まあ、とりあえずそのデパートへ行ってみましょうか。――案内をお願い」

「ああわかった。早速行くとするか。途中で他にも教えておきたい所があるしな」


                    ◆

 

<Side:Akari>

「こういう所はファンタジー世界ですね……」

「そうねぇ……」

 デパートへの道すがら、立ち寄った討獣士ギルドで発行して貰ったばかりの、真新しいギルドカードを見ながら、そんな事を言うユーコと私。

 そして、

「それにしても、随分と簡単に発行されるのね、コレ」

 と、言葉を続ける私。


「少し前までは、カードの発行に時間がかかったんだが、イルシュバーン共和国で発行までを高速化する手段が開発されたお陰で、身元がしっかりしていれば、すぐに発行されるようになったんだよ」

「イルシュバーン……例の、この世界で最高峰の技術力を誇る国ね」

「ああ。最新の魔煌具は、大体あっちの国で開発された物だな。俺やアカリと同じ、地球人がいるんじゃないかってくらい、地球の家電そっくりの物が出てくるんだよな」

「あの『ゲート』の雰囲気からすると、来ていてもおかしくはなさそうよね」

「そうですね……。到着時に時間のズレが生じるようなので、かなり以前に到着した人が、そのイルシュバーンの技術力の根幹に関わっている可能性もありますね……」

「うーん……。もし会えるのなら、その人物に会ってみたい所だわ」

 

 そんな事を話しながら歩いていくと、程なくしてデパートへと辿り着く。

 

「……本当に、本当に至って普通のデパートね……。あまりにもよく見る光景すぎて、逆に違和感を覚えるくらいよ……」

「そうですね……。地球――日本でも普通に見かける感じの建物ですね、これは。まあ……かなり高いですが……」

 ユーコが上を見ながらそう言う通り、外観は普通にどこにでもありそうなデパートそのものだったが、階層が段違いだった。とにかく高い。

 

「地上30階建てだからな。200を超える店があるから、ほとんどの物がここだけで揃うぞ」

 そう言いながら、案内板へと誘導するロディ。

 それに続いて案内板を見ると、たしかに凄まじい数の店名が並んでいた。

 

「……22階、ウェポン&ソーサリーショップ・金剛魂――エレンディア支店?」

 家具とか魔煌具を売る店に紛れるようにそんな店名を発見し、つい口から言葉が漏れる私。


「さすがファンタジー世界ですね……。武器屋までデパートの中にあるだなんて……」

「まったくね……。でもちょっと気になるわね」

 そう私たちが言うと、

「ああ、そこはウェポン&ソーサリーと書いてある通り、武器屋に併設する形で魔煌具ショップもあるからちょうどいいかもしれないな。ワンフロア全部使っているから、品揃えは抜群だしな」

 と、教えてくれるロディ。

 

「わ、ワンフロア全部……。それはちょっとどころか、凄く気になるわ! まずはそこへ行ってみましょ! ねっ!」

「……そうですね、折角ですし行ってみましょうか。でも……デパートに来て真っ先に向かうのが、武器&魔法のお店という辺りが、なんともアカリらしいですね」

 なんて事を、ちょっとだけ嘆息を混ぜて言ってくるユーコ。


 分かってる。言いたい事は分かってるわ。

 他に先に買うべきものがあるでしょうって事よね?

 でも……でも、いいじゃない! 武器も魔法も好きなんだからっ!

最初は討獣士ギルド内での会話が入る想定だったのですが……既に説明済みの事をまた話すだけでしかなかった上に、それだけで1話分になってしまうので、展開のテンポを重視してごっそりとカットしてしまいました。


さて、そんなわけで次回は武器屋&魔煌具屋へ行く事になりますが、なにげに武器屋は久しぶりな気がしますね……

そして更新ですが……明後日、日曜日の予定です!

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