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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第1章 エレンディア編
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第12話[表] ふたりは知る

<Side:Roderick>

 あの少女――アカリの検査を待っていると、ゼル先輩の持つ携帯通信機が着信を知らせてくる。

 

「すまん。ちょっと席を外すぜ」

 ゼル先輩がそう言って病院の外へと走っていく。


 病院内での携帯通信機の使用は基本的に禁止だ。

 通信時に発生する魔煌波が、医療用の魔煌具に干渉して悪影響を及ぼす可能性があるから……とかではなく、単にマナーの問題だな。

 

「――携帯通信機の通信用魔煌波というのは、他の魔煌具の魔煌波と波長がかなり違うのですね……」

「……と言われてもな……。ユーコは、魔煌波の波長が見えるのか?」

 魔煌波の波長なんて普通は見えないので、疑問に思い問いかけてみる。


「あ、はい……。普通は見えないのですが……精神を集中させて凝視する事でぼんやりと見えるようになりますね」

「それは……なかなか便利だな。主に俺たちのような仕事で役に立ちそうだ」

「あ、たしかに捜査とかで使える場面がありそうですね……」

 と、ユーコ。

 

 そう、その通りなのだ。

 魔煌波の波長が分かるって事は、魔煌具を使った痕跡や発動状態が分かるって事だからな。隠蔽を看破したり、追跡したりが容易になる。

 これは、このエレンディアでは非常に大きなアドバンテージだ。


「ああ。特にこのエレンディアは魔煌具が氾濫しているから、魔煌具を使った犯罪も多いしな。……無論、それに比例して、魔獣の出現件数もかなりの物だが」

「特殊な方法で出現場所を誘導し、出現と同時に瞬殺しているんでしたっけ?」

「その通りだ。西大陸の大国――イルシュバーン共和国の首都、ルクストリアで用いられている手法と同じだ。お陰で出現件数こそ多いものの、人的被害はまったくない」

 

 エレンディアも魔煌技術に関しては、かなり発展してきているが、やはりイルシュバーンは、一日の長というか……魔煌技術に関しては世界一だと言われるだけはあり、こういった問題点の部分にもしっかり対策が取られているのが驚きだ。魔導具を使った犯罪も少ないしな。

 

「……ところで、ずっと気になっていたんだが、どうしてユーコだけじゃなくてアカリも、この世界の言葉が普通に話せるんだ?」

 地球とこの世界では、言語が異なっている。

 なので、俺はふたりが普通に会話出来ているという点がどうしても気になったのだ。

 

「うーん……それなのですが……どういうわけか、この世界の言葉を普通に理解出来たんですよね……。多分、アカリもそうなんだと思います。まだ、そこの『違和感』に気づいていないだけかと……」

 なんて事を言ってくるユーコ。

 

 ……この世界の言葉を普通に理解出来た……? それはまた妙な感じだな……

 地球からこちらの世界へ来る時のプロセスで、なにかの術式が施されたのか?

 

 と、そんな事を考えていると、検査室のドアが開き、アカリと医師が姿を見せた。

 

                    ◆

 

<Side:Akari>

「身体的な問題は全く無いと言って良いでしょう。若干、奇妙な霊力の流れが見られましたが、おそらくそこはユーコさんという存在の影響だと思われます」

 というのが検査を行った医師の見解だった。

 ……さすがファンタジー世界ね。霊力の流れとやらまで検査で分かるだなんて。

 

 そして、明日にでも退院出来るがどうするかと問われたので、退院する事にした。

 だって、ここにいても何もする事ないし。

 

「……でも、ここを出ても住む所がないわね。ついでに仕事も」

「あー……ユーコから聞いたが、それなりに魔獣相手に戦闘が出来るんだよな?」

「まあ……あまり強い魔獣じゃなければ、倒せるわね」

「十分だ。それなら、この世界では困る事はないと思うぞ、どっちも。いや、もっと正確に言うなら……衣食住全部困る事はない、だな」

 

 良くわからないけど、戦闘能力があれば困らないらしい。

 まあ……ファンタジー世界なら魔物――魔獣の類がいるだろうし? それを倒す仕事が山程ある、って事なのかしらね?

 

 なんて事を話していると、外に行っていたらしいゼルが戻ってきて、何かをロディに伝える。

 

「今の話も含めて、この世界についてもうちょっと色々と教えておきたかったんだが……すまん、どうやらちょっとばかし近くで事件が発生したみたいでな……」

「わりぃな嬢ちゃん。これからすぐに向かわないといけなくってよ。すまねぇけど、明日まで待ってくれ」

 ロディとゼルがそんな事を言ってくる。

 そういえば、警備局とかいう地球でいう所の警察みたいな仕事をしているんだったわね、この人たち。

 

「っと、そうだ。こっちのカネがないと不便だろうから、少し貸しとくぜ。いずれ気が向いたら返してくれりゃあいい」

「ゼル先輩だけに出させるのも忍びないので、俺も出しますよ」

 なんて事をいいながら、1万リムと書かれた紙幣を5枚ずつ渡された。

 

「えっと……。ありがとうございます。いずれ必ず返しますので……」

 借りっぱなしというのは嫌なので、とりあえずそんな風に言葉を返す私。

 

「ま、ホントに気が向いたらでいいぜ。どうせ経費にするからな」

「……経費にするの難しいと思いますけど……」

「そこはなんとかするさ。っと、それより急いで向かうぞ」

「そうですね。――それじゃ、また明日な」

 

 そんな事を言って去っていくふたり。

 

 ……と思ったら、ロディだけ戻ってきた。


「どうかしたんですか?」

「ああ、伝え忘れていた事があったんでな」

 私の問いかけにそう答え、耳元に顔を近づけ、

「ちなみに……俺も地球からの転移者だ」

 なんて事を小声で囁いてきた。


 そして、

「ってなわけで、安心して明日まで待っていていいぞ」

 などという言葉を残し、再び去っていった。


 ……って、え? 今なんて?

 『俺も地球からの転移者』……?

 ……え? え?

 

 私とユーコは顔を見合わせ、そして互いに自然と声が出る。

「「えええええええええええぇぇぇぇぇっ!?!?」」

というわけで(?)灯たちもロディが転移者である事を知る事になりました。

……まあ、この話のタイトルそのまんまですね……


さて、そんな所で次回の更新ですが……明後日、月曜日を予定しています!

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