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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第1章 エレンディア編
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第10話異伝1[表] PACブラスター

<Side:Akari>

「いや、あれ幽霊じゃなくて、周囲の瘴気が集まって魔獣になりかけている状態だから。私たちが討伐する『対象』の方よ……」

 私は肩をすくめながら、ユーコに対して冷静にそう告げる。

 

「……あ、なるほど……言われてみると、そうですね……」

 ユーコは私の言葉に納得したらしく、そんな事を口にして落ち着きを取り戻す。


「幽霊の正体が分かった所で……あれが実体化する前に消滅させるわよ!」

 私はそう言い放ちながら、手元の小さなスティックに力を込めた。

 

 と、即座にスティックの柄が伸び、更に先端に輪っかが出現。錫杖のような形へと変形する。

 これが私の武器――PACブラスターと呼ばれる代物。

 

 それは、サイキック能力の源とも言える『力』を利用して放つビーム発射装置で、『竜の血盟』が姿を消した代わりに、日本のみならず、世界各地で出現し始めるようになった異形の魔物――竜の血盟の拠点に残されていた記録から『魔獣』と名付けられたそれを相手にするために生み出された武器でもある。

 

 魔獣はこのような瘴気の塊が一定以上の大きさになった時、初めて実体化する。

 普通の武器では、実体化するまでは攻撃する事が出来ないが、この武器であればそれが可能。

 ただし『竜の血盟』に残されていた記録と、かつて竜の血盟を相手に戦った組織の記録をもとに作られたそれは、サイキック――サイコキネシスやテレポーテーションといった超能力を有する者にしか使えなかった。

 

「――というわけで……私たちの出番というわけですね」

「今更その説明をしてくれなくてもわかってるわよ、まったく」

 私は、わざわざPACブラスターと魔獣についての説明してきたユーコに対し、そんな風に言うと、ブラスターを発動すべく精神を集中。

 

 程なくして、ブラスターに力が行き渡ったのを感覚的に理解した私は、 

「――発射ぁぁぁぁぁっ!」

 という掛け声を発する。

 と同時に、先端の輪っか部分から青白いビームが放たれた。

 

 キュィィン、ズシャァンみたいな感じの派手な音が響き渡り、実体化する前だった『魔獣』――瘴気の塊が霧散する。

 

「……なんですか、その変な擬音」

「あれ? もしかして今の口から出てた?」

「はい、出てましたよ。思いっきり」

「うわぁ……。それはちょっと恥ずかしいわね……。ユーコしか居なくて幸いだったと言うべきかしらね」

「私には聞こえてもいいんですか……。まあ今更ですけど」

「そうそう今更今更。……それより、完全に消滅したわよね?」

「ええ。大丈夫だと思います」

「――実体化してからなら物理的な攻撃が効くけど、実体化した『魔獣』はかなり強いからねぇ……。その前に倒せるならそれに越したことがないってのは理に適った話ではあるわよね。ちょっとインチキくさいけど」


 魔法少女モノとか戦隊モノに例えるなら、変身シーンの最中に攻撃するようなものなわけで……戦いにルールなんてものはないとはいえ、やはり少し卑怯な感じがあるのは否めないわね。

 まあ、だからといって実体化を待ってから戦うなんて行為は、危険極まりないし、失敗した時に取り返しがつかない事になるのでやりはしないけど。

 

「バトルマニアの人が……わざわざ待った挙げ句、出てきた魔獣に敗北して大惨事を引き起こした事例がありましたからね……。まあ、あれは出てきた魔獣が悪すぎたとも言えなくはないですが……」

「『グラップルドラゴン』だっけ? 首と手足の長いトカゲみたいな奴よね」

「はい……。素早い上に格闘能力に優れ、ブレスまで吐くという厄介極まりない存在ですね……」

「ま、そんなのと戦う羽目にならない事を願いたいわね」

 私はそう言って肩をすくめてみせた後、ポケットから本部との連絡専用の携帯端末を取り出す。

 瘴気が濃いと電波が上手く通らないので、専用の優れた通信機能を持つ端末が作られており、関係者に配布されていたりする。

 

「さて……とりあえず片付いた事を本部に連絡しないと」

 そう呟きながら通信回線を開き、コールすると、

「はい、こちらABSF通信指令室です。――IDナンバー1193421473……冥賀灯さん、なにかありましたか?」

 というオペレーターの声が聞こえてくる。

 

「6丁目の廃墟――『竜の血盟』が工場として利用していた場所で、実体化しかけていた魔獣を討滅したわ」

「なるほど……やはり魔獣でしたか。わかりました、報告ありがとうございます。そしてお疲れ様でした。一度、本部へ戻ってきていただけますでしょうか」

「ええ、わか――」

 分かったと言いかけた所で、背後からゾクリという冷たいものを感じた。

 それは……強烈な殺気。

 

「灯……ッ! 魔獣の気配です……っ! どうやら、既に実体化していたのがいたようです! しかもこれは……っ!」

「ええ、分かっているわ。かなりヤバいのが来たみたいね」

 慌てた様子で私に魔獣の存在を伝えてくるユーコに対し、私は逆に冷静にそう答える。

 

「――何か不測の事態が発生したような感じですが、何かありましたか?」

 オペレーターがこちらの異変を理解してそう問いかけてくる。


「ごめん、まだ戻るわけには行かなくなったわ。――もう1体魔獣がいて、しかも実体化済みっぽいわ」

「実体化済み……!? す、すぐにエマージェンシーを発令し、増援を送ります!」

「了解よ。……あ、ちょーっとばかし急いで送ってくれると嬉しいわね。感じる瘴気の圧力から察するに、正直、増援到着まで抑えきれるかどうか怪しいレベルの奴がいるわ」

「わ、わかりました! 出来る限り早急に送ります! 無理そうなら逃げ――」

 と、そこで通信が途絶した。

 

 ……どうやら魔獣の持つ瘴気が強すぎて、この専用端末ですら通信を維持出来なくなってしまったらしい。

 ……どんな魔獣だかわからないけれど、通信が維持できない程となると……少なくともこれまでで一番ピンチな状況である、という事は間違いなさそうね……

物凄い久しぶりの地球側の話です。異伝と付けるのも久しぶりな気がします。

竜の血盟が『帰還』した後、どうなったかという話ですね。

……あと、蒼夜たちは強大な力を持つ魔獣ですら瞬殺してしまえる程強いですが、

普通はそこまで簡単に倒せないという再認識的な面もある話でもあったりします。


――という所で! 

次回の更新ですが……明後日、金曜日を予定しています!

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