第7話[裏] 機巧竜・絶牙とサイコキネシス
<Side:Charlotte>
尻尾から胴体へ向かって駆け上がる私に対し、翼のビームファンから即座に羽根のような魔法の矢――フォトンフェザーがバラ撒かれ、弧を描くような起動で私に襲いかかってきた。
「はあぁぁっ! どっせぇぇいっ!」
霊力を込めた刀と剣を、掛け声と共に振るい、自身に当たる軌道のフォトンフェザーのみを全て薙ぎ払う。
横から迫ってきたビームブレード――翼を分離して飛ばしてきた――を霊力の刃で受け止め、そのまま切断。
真っ二つになった翼のブレードがない金属フレームの部分を足場にして跳躍。
装甲の隙間からコアが見える部分へと辿り着いた。
ゴルドールの驚愕と憤怒の入り混じった声が響き渡ると共に、再びフォトンフェザーが襲いかかってくるが、私はそれを無視して刀と剣をコアに向かって突き刺す。
直後、激しい音が鳴り響く。
それは、先程私が真っ二つにした翼の片割れにフォトンフェザーが大量に突き刺さり、爆散した音。
ちょうど、翼の片割れが盾となり、私に殺到したフォトンフェザーを防いだ形だった。
どうして都合よく、私の盾となるかのように翼の片割れがそこにあるのか、というのは考えるまでもないわね。
そう、ソウヤのアポートとアスポートによって、そこへ移動したから。
さすがはソウヤね! 私の行動を良く分かっているわ!
なんて事を思っている間にも、コアがバチバチとスパークし始め、ウナギ――じゃなくて、サーペントのような姿に変形した機巧竜のその動きが、急激に鈍り出す。
どうやら、動力が停止寸前みたいね。
「バ、バカな……。まさか……これほど……とは……」
竜頭からゴルドールの、信じられないと言わんばかりのそんな声が降ってくる。
「『黄金守りの不死竜』の――ドラグーンの力を、甘く見すぎなのよ」
「くっ……! か、かくなる上は……」
私の言葉に反応するかの如く、ゴルドールが勢いよく竜頭から飛び出してくる。
振るわれた槍を回避し、霊力を纏った刃で横から迫る見えない刃を受け流す。
だが、次々に見えない刃が迫り、反撃する隙がない。
と、そこへ想定外の所からの攻撃があった。
モニカの部下のひとりと思われるヒュノス族の青年が、両手持ちの大剣を一直線に投擲。
それがゴルドールへと迫る。
さすがにあっさりと躱されるも、ゴルドールの意識が両手剣、そして投擲されてきた方へと向き、私から逸れた。
それはつまり、反撃のチャンス!
私は一気に踏み込んで刀を振るう。
私の動きに気づき、再び槍で攻撃を防ごうとして――
「ぐふっ!?」
という声と共に、口から血を噴き出すゴルドール。
……いえ、口からだけじゃないわね。腹からも血が噴き出しているわね。
なぜなら、躱したはずの大剣が、真ん中からふたつに分かたれた状態で、左右の脇腹にそれぞれ突き刺さっていたから。
……ソウヤがサイコキネシスで操った?
と思ってソウヤの方を見ると、ソウヤもまたその光景に驚いており、
「まさか、以前ティアが話していた……?」
なんて事を呟いた。……ソウヤではない? それじゃあ誰が……
「意識が完全に逸れていたお陰で、なんとか決まった……か」
そんな声が、モニカの部下のひとり――ヒュノス族の青年から聞こえてきた。
あの青年が……?
でもまあ、考えるのは後にして……
私はゴルドール目掛けて右手の刀を突き刺し、斬り上げる。
同時に逆手に持ち替えた左手の剣でも斬り上げる。
「が……はっ!」
大きく仰け反ったゴルドールがバランスを崩し、そのまま機体上から落下。
地面に激突して動かなくなった。
……これで、モニカの仇は討てたわ。
そして七聖将の残党も、あとふたり……。大将軍と呼ばれる人物と、クライヴの後釜に座った人物だけ……ね。
◆
<Side:Souya>
「――とまあ、そういうわけだ」
「……それは、本当なのかい?」
俺の説明を聞き終えたドラグ・ケイン族の男性――ガレスが、訝しげな表情で疑問の言葉を投げかけてくる。
うんまあ……普通に考えたら俺の語った内容なんて、荒唐無稽すぎて、到底信じられるような話じゃないしなぁ……
なんて事を思っていると、シャルが腕を組みながら自信に満ちた表情と口調で、
「無論よ、ガレス。この私が……そしてヴァルガス元団長やハイジもいるのよ? 嘘ではない事は保証するわ」
と、そうガレスに告げた。
「――うん……たしかにそうだね。シャルだけじゃなくて、団長やハイジ……そして、秘密裏に深月までもが所属しているのなら、本気で『ソレ』を成し遂げようとしているというのは、凄く納得出来る話だし、不可能ではないと言えなくもないね。まあ……凄く険しい上に茨に覆われているような、そんな道ではあるけれど……」
ガレスはそう呟くように言い、しばしの間考え込む。
そして……
「……わかった。僕は君たちに協力しよう。――いや、是非とも協力させて欲しい。モニカを取り戻すためにも……ね」
俺たちに対し、そんな風に言ってきたのだった。
戦闘シーン、実はもうちょっと長かったんですが……パワーインフレ同士の戦闘なので、一撃必殺級の撃ち合いになってしまい、なんだかなーと思いまして……削ってアッサリめにしてみました。
という所で次回の更新ですが……明後日、木曜日を予定しています!




