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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第2部 黄金守りの不死竜と調査録 第1章 エレンディア編
317/764

第3話[表] 制圧開始、しかし……

日付の設定が間違っていた為、手動で更新しました…… orz

<Side:Roderick>

「隊長ならそう言うと思ったので、他の隊員には既に連絡はつけてありますよ。そして、ちょうどいい具合に、倉庫を包囲する形での配置が完了したようですね」

 少し呆れ気味にゼル先輩がそう告げながら、携帯通信機と魔法弾の発射機構が組み込まれた特注のガントレットに手を触れる。

 

「ナイス対応よ。それなら早速、制圧を開始するとしましょ。――《白銀の陽球》!」

 モニカ隊長はそう言い放ち、魔法を発動。

 

 と、次の瞬間、俺たちの頭上――漆黒の夜空に白い光球が出現。周囲を明るく照らし始めた。

 

 それが合図となって第7の全ての隊員が、速やかに灰蜘蛛と謎の連中、双方の制圧に向けての行動を開始する。

 

 ……情報を得るためにも、なるべく殺さずに制圧したいところだが……あのコンテナを運んできた連中の実力が未知数なのが少々厄介だな……

 

 そんな事を考えた所で、

「な、なんだ!?」

「敵か!?」

 と、慌てた様子で、声を発し始める灰蜘蛛の構成員。

 

 しかし、逆にコンテナを運んできた連中は落ち着いていた。

 特に杖を持ったドルモーム族の男性に至っては、興味深そうな表情で軽く笑みすら浮かべており非常に不気味な感じだった。

 ……この目、そしてこの余裕……。こいつは厄介な相手かもしれない……

 

「こちらはエレンディア警備局第7警備隊よ! 不法売買および犯罪行為の計画未遂の容疑で、貴方がた全員の身柄を拘束させて貰うわ! おとなしくしなさい!」

 モニカ隊長が言い放ちながら、拘束魔法を放ち、間近にいた灰蜘蛛の構成員を動けなくする。

 

「なっ!? 警備隊が何故ここに!?」

「情報が漏れていたとでも言うのか!?」

 なんて事を口々に言いつつ、それぞれの得物を構え、応戦を開始する灰蜘蛛の構成員。

 

 おとなしくしろと言われておとなしくするような連中ではないので、当然こうなる。

 しかし、強襲によって浮足立っていた事もあり、灰蜘蛛の構成員の動きは鈍く、瞬く間に第7の隊員たちによって拘束されていく。

 

 と、俺に向かってひとりの構成員が突っ込んできた。

 重量のある得物を扱う俺であれば、上手く突破出来るかもしれないと考えたのだろうが、それは考えが甘いというものだ。

 俺は即座にそいつを軽く浮かせた大剣の腹で打ち据え、拘束。

 浮かせてしまえば、重さは不利にならないという事を理解させてやった。

 

 と、その直後、杖を持ったドルモーム族の男性が口を開く。

「ふむ……警備隊、か。これはまた想定外な状況だな。それになかなかの制圧力だ。どうやら我々は、エレンディア警備局の事を少々甘く見すぎていたと言わざるを得まい」

 

「余裕そうに言ってるけど、当然貴方たちも拘束対象よ。色々と聞きたい事があるから抵抗しないで貰えると助かるわ」

「くくっ、残念だがその要望には応えられないな。――武装真化」

 モニカ隊長の言葉に対し、ドルモーム族の男性は静かにそう答え、杖を掲げる。

 

 ……武装……真化?

 

 それは一体なんなのかと思った直後、掲げられた杖の先端から、赤黒い禍々しい穂先が3つ、文字通り生えてきて、杖だったそれが三叉の槍へと変化した。

 

「なん……だ、ありゃ……」

 ゼル先輩が足を止め、呟くように言う。

 

「薙ぎ払え。エアリアルエッジ」

 冷静に――いや、底冷えのする声で、そうドルモーム族の男性が口走った瞬間、空気までもが冷たく感じた。


 いや、違う! これは……っ!

 

「全員、避けなさいっ!」

 俺よりも先に『その事』に気づいたモニカ隊長が叫ぶ。

 

 俺とゼル先輩は即座に後方へ跳躍。

 

 刹那、ヒュオッ! という強烈な風音が耳に届く。

 

「がっ!?」

「ぎっ!?」


 拘束した灰蜘蛛の構成員数名がそんな呻き声と共に鮮血を撒き散らしながら地面に倒れ込む。

 

 その更に奥では、第7の隊員数名も同じようになっていた。

 どうやら、回避が間に合わなかったようだ。

 

「くっ……。間に合わなかった者がいたようね……」

 モニカ隊長が忌々しげに、そして悲しげにそう口にする。

 

「ほう、初見でこれに気づいて回避するとはな。褒め称えるとしよう」

 ドルモーム族の男性がそんな風に言ってくる。

 

「仲間を巻き込むとは……」

「仲間? こやつらはただの取引相手。しかも、『長』を介さぬ裏取引……。少々殺した所で、些末な問題にすぎん」

 ゼル先輩の言葉に、冷淡にそう返してくるドルモーム族の男性。

 こいつは……かなりヤバい相手だな。一見隙だらけのようでいて、その実、隙がまったくない。

 

「これは……少しばかり……いえ、相当に厄介な相手ね……」

 俺と同じように相手のヤバさを認識したらしいモニカ隊長が、ベルト状のソードホルダーから鞘に収められた細身の剣――アカツキ皇国製の『刀』を抜き放つ。

 それは、かつて傭兵団に所属していた頃から使っていたという愛用の得物だ。

 

『昔、憧れていた先輩が使っていて、それで私も使い始めたのよ。……でも、師匠の教え方は地獄のようだったわ……』

 などと、遠い目をしながら前に酒の席で言っていたのをふと思い出す。

 しかも、その先輩というのは、魔法探偵シャルロットのモデルとなった人物らしいから驚きだ。

 

 ……っと、そんな事を考えている場合じゃないな。

 あまりの状況のヤバさに現実逃避しかけてしまったようだ。

 

 俺は気を引き締めるように、大剣を強く握り直すのだった――

更新が遅くなりました……


いきなり武装真化を使う相手の登場です。

第2部は構成上、第1部と違って次の章へ話をあまり持ち越せない為、

ひとつの章の展開は、第1部よりも若干早めになる想定です。

まあもっとも、あくまでも『想定』なので、途中で変わるかもしれませんが……


さて、そんな所で次回の更新ですが……明後日、水曜日の予定です!

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