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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第1部 異世界グラスティアの異変 第4章 竜の座編
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第81話[Dual Site] 私と私、世界と私たち

<Side:Souya>


「ま、とりあえず抑えられたんだからいいじゃねぇか」

 という蓮司の言葉に、シャルが歯切れの悪い言葉を返す。

『それはまあ……たしかにそうなんだけど、ね……』


『……? その口ぶり、他にも何か気にしてやがったりするんですかねぇ?』

『あー、えーっと……うーん……その、なんというか……あんな大口を叩いておきながらギリギリだった上に、結局ソウヤの言葉で止まったようなものだし、なんだかちょっと……ね』

 と、申し訳なさと無念さの入り混じったような、そんな声でシャル言ってくる。


「いやまあ……それに関しては、俺も情報を伝えられていなかったのが悪いから、シャルが気にする事じゃない」

 俺はそんな風にシャルに対して告げる。

 

 そう、アカツキ皇国ではシャルやティアたちとは一緒に行動せず、ロゼたちと一緒に行動していたからな……

 その間にあの3人の中で、ロゼだけが『俺の良くわからない能力』によって、急成長してしまっている可能性を考慮すべきだった。

 

「ちなみに……ティア、十二邪聖装の発動による『代償』の方は大丈夫なのか?」

『それこそまさに、アリーセ製の生命活身薬で補った所だったりしますねぇ」

「そうか。さすがは……というべきだな」

「ですねぇ。そして……代償を実質的に無効化してくれたお陰で、こうして何ともねぇ状態でいられる……という意味では、アリーセは『命の恩人』と言えるかもしれねぇですねぇ。……であればこそ、そんなアリーセを助ける為に必要な事であれば、私はいくらでも力を貸してやろうってものじゃねぇですか』

 蓮司の言葉に対し、力と熱のこもった声でそんな風に返してくるティア。

 

 生命活身薬……か。

 なつかしいな。初めてアリーセと出会った時に、死にかけていたロゼに対して使われた薬だ。

 

『ええ、もちろん私もよ。――だからロゼ、ひとりで突っ走るのはやめなさいね?』

『………………ん、わかった。……それとティア、痛い思いをさせてごめん』

 シャルの言葉に対し、ロゼは短い沈黙の後、そんな風に言った。

 

『気にする必要はねぇですねぇ。痛いだけで死ぬわけじゃねぇですからねぇ。……まあ、生命活身薬がないと死にますけどねぇ、あっはっは』

 ティアが冗談めいた口調でそう言葉を返して笑う。

 ……って、すげぇ軽い調子で言っているけど、生命活身薬がないと死ぬって、割とヤバいだろ……


 そして、どうでもいいっちゃどうでもいいが……ティアって、あんな笑い方をする人間だっただろうか?

 邪聖なんちゃらって代物は、精神にも影響が出るんだろうか? まあ……一時的な物だと思いたい。

 

『……ん、必要なら腕一本くらい切り落としてもいい』

『そんなもの貰っても嬉しくねぇので遠慮しますねぇ。というか、いくら再生可能だからと、そんな事をサラリと言うもんじゃあねぇですよ? ――私に対して罪悪感があるのなら、そういった自分の身体を顧みねぇような言動を止めてくれれば、それで良いですねぇ』

 とんでもない事をサラッと口走ったロゼを咎め、諭すよう言うティア。

 さすがは元聖女……というべきなのだろうか。


『……ん、わかった。……注意はする』

『注意、なんですねぇ……。まあ、全く顧みないよりはいいですけどねぇ……』

 ロゼの言葉に対し、ため息をつくティア。


 ティアのため息と心情は、俺にも良くわかるなぁ……

 以前と比べると少しは改めているようだが、ロゼはどうしてもそういう所があるし……

 

 まあ、そこは今考えても詮無い事だ。それよりも今は――

「……なにはともあれ、だ。残念ながらグラビティコントロールやウェザーコントロールについての情報は得られなかったが、その代わりに、さっき蓮司が言っていた石化関連の情報を得られたのと、魔法を解析すればどうにかなりそうだっていうのが分かったのは大きいな」

 と、誰にともなく口にする俺。


「そうだな。ま、星獣拘束機関だとか、魂魄転送装置だとか、ソウルバックアップだとかいう、今まで見た事も聞いた事もないような、怪しくも意味不明すぎる情報も多々出てきやがったけどな……。ほとんどロック状態になっていて、詳細は確認出来なかったのが惜しいが……」

 蓮司がそんな言葉を俺に返してきながら、空中ディスプレイ――空中に浮いているホログラムのディスプレイ――に表示されている情報を見る。

 

 ……そういえば、こうやって空中に何かが表示されてそれに触れるってのは、地球だとSFとかでしかほぼ見た事がない代物だが、この世界ではさして珍しくもないんだよな。時計とかも普通に時間が浮いて表示されるし。

 うーむ……技術――文明レベルが物や地域によって高かったり低かったりとメチャクチャなのは、この『竜の座』による影響が大きそうだな。


 なんて事を思案していると――

「これは『貢献』すれば解除される感じなのです?」

 宙に浮いた『LOCKED』と記されたホログラフィックファイル――本当にファイルの形をした物が浮いている――を眺めながら、そんな疑問を口にするクー。


 蓮司がクーの方を見て頷く。

「ああ、項目が開放されている以上、そう考えて間違いねぇ。権限が足りない場合は項目自体が開放されねぇからな」


「ま……とりあず中を見られない物について考えてもしょうがない。今はディーの方が先だ」

 俺は蓮司とクーにそう告げると、続けて通信機に向かって、

「――これからそっちに行くから待っていてくれ」

 と、シャルたちに伝えた。

 

                    ◆


<Side:??????>

 ブォン! というビームブレード特有の空気を切り裂く音が響く。

 と同時に、「がっ!?」という驚愕と共に、目の前の『私』――いや、私の姿をしたディーが床に倒れ伏す。

 無論、それをやったのは『私』だ。


「な……ぜ……。こんな真似……を……」

「何故? こんな真似? それ、勝手に人の身体を乗っ取って、アリーセと室長を石化させた奴が言うセリフかなぁ? 私を死の淵から救ってくれた事には感謝するけど、それだって『目的』があっての事だったし? っていうか、そもそも私が死にかけたのがディーのせいだし?」

 理解不能だと言わんばかりの表情を浮かべるディーに対し、私は肩をすくめながらそう答える。うーん……今の私、絶対悪どい顔をしている気がするなぁ。

 

「……それに……気づいて……いた……?」

「そりゃあ気づくよ。一体何年――ううん、何千年ここにいると思っているのかな? かな? まあ、ディーの巧妙な仕掛けのせいで、気づくまでに時間がかかったし、アストラルモジュールを介して動けるようになったのもつい最近だけど、ね」


 いやぁ……私そっくりの義体――アストラルモジュールを介して、動けるようになるのに、物凄いかかったよねぇ……ホント。

 なんて事を思っていると、ディーが黄金色の粒子を撒き散らしながら立ち上がり、

「アストラル……モジュール? あれには……記憶制御の術式が……」

 と、言ってくる。なかなかしぶといねぇ……。さすが、アストラルモジュール。

 

「記憶制御? あれなら、『ディアーナ』にソウルバックアップの術式を組み込まさせて、それを介する事で解決したよ」

「ディアーナ……? この世界――船の管理の為に生み出した……女神を模倣したアストラルモジュール……否、AIアストラルフィギュア……の……?」

「そうそう、全ての言語を理解出来る術式を組み込む時に、ソウルバックアップの術式も組み込むように仕込んであったんだよね、アレ。私なら必ずやると思っていたし。……まあ、そのお陰で、ものすっごい痛かったんだけどね……」

 腕を組みながらそう言って、ため息をつく私。

 あれ、もうちょっと痛くないように出来ないものかなぁ……。


「で、アルの召喚でソウルバックアップが転送されるように術式を構成しておけば、あとはアルが召喚されるたびに、私に記憶が蓄積されていく……というわけ。ねぇ、どうどう? なかなか良い手だったでしょ? 気づかなかったでしょ?」

 私は、敢えて挑発するように、嫌味と皮肉をたっぷり込めた悪い笑顔でそう告げる。

 その長髪に乗ったのか、ディーが踏み込んでくる。

 わお、この状態でもそんなに動けるなんて思わなかったよ! 

 さすが、アストラルモジュール! タフだなぁ!

 

 ……ま、動き自体は大した事ないけどねぇ。

 ディーの攻撃を軽く回避し、ビームブレードで斬り裂く。


「ぐうああぁぁぁああぁっ!?」

 

 完璧な手応えがあったので、致命傷を与えたはずだけど……

 タフさだけはピカイチだからなぁ……どうだろ?

 

 そう思っていると、ディーが仰向けに倒れる。

 

「おのれ……裏切り……者……」

「裏切り? ああ、ディーに協力するって言ったのにって話? ちゃんと協力したでしょ? それに、別に裏切ってないよ? だって……元からこうする予定だったんだから、ね。――ディーの計画は『世界』のためには良い事だけど、『私たち』には全然良い事じゃないんだから、最後まで協力するわけがないじゃない」


「……私……たち? 理解不能……。されど、我は……マザーのアバター……管理者……。我が消えれば……マザーコアに保存されし、汝も……」

「無論、リンクが切れるから消えるね。……でも、さっき言ったように、ソウルバックアップは取ってあるから、きっとソー兄ならなんとかしてくれるよ。だって、『チート』を使って『超展開』めいた事をしている私と違って、ソー兄は本当の意味で『超展開メーカー』だしね」

 ディーに対しそう自信満々に言うと、そこで言葉を区切り、ディーを見下ろしながらビームブレードを構える私。

 そして、とてもとても冷酷な表情を作ると、

「――というわけで、さ。……さっさと消えてね。ソー兄たちがここに来た時に邪魔だから」

 なんていう、これまたとてもとても冷酷な声で言葉を紡ぎながら、ディーの胸をビームブレードで貫く。というか、勢い余って床に突き刺さった。

 

「がっ……は……っ! な……ん……」

 何かを言おうとしたみたいだったけど、私が、突き刺さったビームブレードを抜こうと、勢いよく振り上げたのがトドメとなって、絶命してしまった。 

 結果、何を言おうとしたのかは分からずじまい。……ちょっとミスったかも。

 けどまあ……大した事じゃないよね、きっと。

 

「それにしても、なんというか……自分の姿をしている相手を殺すってのは、なかなかキツいねぇ……。悪役になりきってなかったら、かなり厳しかったよ、うん」

 なんて事を、誰にともなくひとり呟いたその直後、バシュッという圧縮空気が短く噴射された時のような、そんな音と共にドアが開かれ、ソー兄たち入ってくる。

 

 って、えぇ……。どうしてこのタイミングで入ってくるかなぁ……

 まあ、しょうがない……一気に時を進めるとしようかな。


 世界のための計画ではなく、私たちと……世界のための、私の計画を――

次回、第4章ラストです! ……というより『第1部』ラストです!

次々回から第2部になります!(普通に間を置かずに、第2部に入ります)


その展開の都合上、次回はかなり急激かつ謎の残る展開になりますが、

そこは第2部に入ってから、順番に語っていきます!


というわけで、その第1部最終話ですが……いつもどおりの想定で、

来週の火曜日に更新予定です!

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