表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第1部 異世界グラスティアの異変 第4章 竜の座編
265/764

第43話 謎の存在と再びの襲撃

予約投稿時間がミスってズレていたので、手動で投稿しました……

「妙な一団?」

「まあ、私もそういう話を聞いたというだけだし、(つまび)らかな内容は不明なのだけどね。廃鉱となったはずの鉱山に出入りする者たちや、山間の何もない場所に何故か集う者たちなど、何やら怪しげな行動をしているそんな集団が各地で目撃されているのだそうだ」

 俺の問いかけにそう答える篝。


「目撃されているだけなのですか?」

 俺の横で話を聞いていたアリーセが問いかける。

 それに対して篝が頷いて答える。

「うん、不審に思った民からの通報を受けて先手衆が現場に向かうと、人の居た痕跡はあるが姿はない……という感じだからね、どれもこれも」

 

「ふーむ、既に立ち去った後……というわけじゃな」

「そう考えるのが妥当だとは思う。ただ……」

「ん? なにか気になる事でもあるのかの?」

 歯切れの悪い篝に対し、首を傾げて問うエステル。

 

「実は、不審な者たちの代わりに、今まで見た事もない奇妙な害獣と遭遇した、という事例も何件かあってね。それがその不審な者たちとどういう関わりがあるのかは不明だけど、獣を操る者である可能性を考えて先手衆が調査を継続している……とかなんとか、そんな話があるんだ」

 と、そんな風に答える篝。


 話を聞いただけという割には、随分と詳しい感じがするというか……最後、余計な事を言ったのに気づいて取り繕った感じがしたが……まあ、とりあえず今の所は、それに関しては一旦横に置いておくとしよう。

 それよりも、だ――

 

「奇妙な害獣……」

 俺は小声で呟きながら思う。それは『キメラ』の類なのではないか、と。

 

「もしかして、キメラ……ですかね?」

 アリーセも俺と同じ事を思ったらしく、そう口にした。

 

「キメラ?」

 篝の疑問に対し、

「ああ、さっき言った『竜の御旗』が生み出す魔物――簡単に言えば、人造の魔獣……とでもいうべき存在だ」

 と答える俺。

 

「私たちの学院も、そのキメラの被害を受けた事があるんですよ」

「というか、妾なぞ半分キメラにされたわい……。ああ、実に忌々しい記憶じゃ……」

 アリーセとエステルがそんな風に俺に続いて言う。

 

「えっと……どういう事なんだい?」

 わけがわからず困惑の表情を浮かべる篝。

 まあ、そうだろうな……と思い、俺は篝に諸々の説明をする。

 

 ……

 …………

 ………………

 

「――とまあ、そういう感じなわけだ」

「ふむ、なるほど……。そのような事が西方大陸――共和国では起きていたのか。貴殿らもなかなかの難儀に巻き込まれたものだね」

 俺の説明に対し、篝がそう感想を述べて肩をすくめた。

 

「元に戻れたから良かったものの、あのまま完全にキメラ化しておった可能性を考えると、ゾッとするわい」

 と言って、自身の肩を抱くエステル。

 

 ……そういえば、エステルだけ何故元に戻れたのかが、いまいち分かっていないんだよなぁ……

 室長は、サイコメトリーで得た情報から、生体ユニットと化していたエステルを引き剥がせばどうにかなりそうだと考えて、引き剥がしたらしいが……実際の所、それだけで元に戻るなんて事はありえない、というのが今では判明しているからな。


 なんて考えを巡らせていると、

『七番船! 新たな魔獣が付近に姿を現したようだ! 注意しろ!』

 という通信が耳に入ってきた。

 

 俺を含めた皆が通信機のある方へと顔を向ける。

 

「ど、どういう事ですか!?」

 操舵士が慌てた声で問いかけると、 

『今しがた、近くを航行中の飛行艇からの緊急の警告通信が入った! この街の上空……湖付近を奇妙な――影のない魔獣が飛んでいるとな!』

 そんな通信が返ってくる。


 その通信を聞いていた篝が、

「ふむ……。随分と奇妙な魔獣だね。――さすがに見えないか」

 と、空を見上げながら言った。


「影のない魔獣……じゃと?」

「もしかして……あの荒野で遭遇した……?」

 エステルとアリーセがそれぞれ考える仕草をしながら、そう口にする。


「ああ。奴以外で影のない魔獣なんてもの見た事がないし、おそらく奴で間違いないだろう」

「ん? もしかして、現れた魔獣に心当たりがあるのかい?」

 俺たち3人の言葉に、疑問を抱いたらしい篝が問いの言葉を投げかけてくる。


「ああ。以前ルクストリアの南にある、アルミナっていう街の近くの荒野で遭遇した事があるんだ。その影のない魔獣――いや、幻獣と思しき存在とな」

 俺は篝の問いかけにそう答えつつ、クレアボヤンスで周囲を見回す。

 

「――いた! あの時の奴で間違いない! あっちだ!」

 あの時とまったく同じ『奴』の姿を視界に捉えた俺は、自身の顔の向きで、その方向を指し示しつつ、声を大にして皆に呼びかける。

 

「んん? 私の目にはまったく見えないな……。蒼夜はとても目が良いのだな」

 などと、感心したように言ってくる篝に、

「あー、まあ、ソウヤは特別なのじゃよ」

 と、言って肩をすくめてみせるエステル。


「それより、例の翼竜もどきが出現したのであれば、放っておくわけにもいきませんね」

「うむ、たしかにそうであるな」

 アリーセの言葉に篝は頷くと、操舵士の方を向き、告げる。

「すまぬ、あちらへ向かって貰えぬか? ――水上は走れても空中は走れないのでな」


「承知いたしました! すぐに向かいます!」

 勢いよく返事をし、通信でそちらへ向かう事を伝えてから、俺の示した方へと船を走らせ始める操舵士。

 

 俺はそのままクレアボヤンスで奴――翼竜もどきの動きを追う。

 すると、どういうわけか奴は、湖の上を旋回しているような飛び方をしていた。

 ……なんだ? もしかして何かを探していたりする……のか?


 奴の動きに疑問を抱いている内に、船は奴の姿が誰の目でも見える程の距離にまで近づいていたらしく、

「ふむなるほど……たしかに影がないね。幻獣ではないかという貴殿らの推測もあながち間違いではない気がするよ。随分と『気』が希薄で、存在自体に妙な違和感を感じるし、ね」

 と、篝が奴の方へと視線を向けながら言った。


 どうやら篝は、奴の姿を見ただけで、その存在に違和感を覚えたようだ。

 武人特有の感覚によるもの……といった所だろうか?

 残念ながら武人ではない俺には、そういうのはさっぱりわからないが。

 

「――あの翼竜もどきは、自身を魔煌波と一体化させおるのじゃ。そして、攻撃を仕掛けてきているその時しか実体化せぬ」

「それはつまり、あちらの攻撃の時しか、こちらの攻撃も効かないという事かい? 随分と厄介だね……」

 エステルの説明にそう返しながら、得物を構える篝。


「そうですね。ただその代わり……というわけでもないのですが、耐久力はほとんどないので、高い威力を持つ攻撃を一発当てるだけで、あっさり倒す事が出来るんですけどね」

 なんて事を言いつつ、アリーセも狙いをつけて構える。……というより、チャージショットの構えに入ったようだ。

 光の粒子が既にもう徐々に集まり始めている。


「むぅ……。玄宵の護法衣で船全体を覆うのは無理じゃな……どうしたものかのぅ」

 エステルがペンダントを構えながらそんな事を言って考え込み始める。

 

 たしか……あの時は、エステルの障壁魔法で雷撃球を防ぎつつ、アリーセのチャージショットを撃って倒したんだったっけな。

 おそらく、今回も同じ戦法で倒す事が出来ると思うが……船全体を覆えないのは厄介だな。

 少しくらいであれば、サイコキネシスでも雷撃球を止める事は出来ると思うが……大量に放たれたらさすがに止めきれない。

 

 ……って、まてよ? 別に障壁やサイコキネシスで防がずとも、融合魔法で雷撃球を迎撃――まとめて相殺してしまえばいいんじゃないか?

 上空へ向けて撃つ形になるから、何かを巻き込む心配もないし。

 

「雷撃球の迎撃――というか、相殺は俺が融合魔法でやろう。消しきれなかったのだけ頼む」

 エステルに対してそう俺が告げると、エステルはそれに了承し、ペンダントを構え直す。

 

「ふむ……貴殿らの方が戦い慣れていそうだね。であれば、ここは見物させて貰うとしよう」

 篝は俺たちを見回しながらそんな風に言って得物をしまう。

 

「まあ、速攻で倒すからゆっくりしていてくれ」

 俺がそう言葉を投げた所で、翼竜もどきはこちらに気づいたらしく、

「ルオオオオオォォォォォッ!」

 という低音の咆哮を発した。

 

 そして、クチバシの先端を放電させながらこちらへと向かってくる。

 

「おや、どうやら早速仕掛けてくるようじゃな」

 というエステルの言葉から数瞬後、翼竜もどきから大量の雷撃球が一斉に放たれた。

 

 雷撃球と雷撃球の間隔がほぼ無いな……。あの時と違って、いきなり全力で来たか……

 最早、巨大な1つの塊と言っても過言ではないような形状で、上空から雷撃球が降ってくる。

 一気に押しつぶそうという魂胆なのだろうが……逆に好都合というものだ。

 

 俺はスフィアを2つ取り出すと、即座に融合魔法を実行。

 赤い螺旋状の炎を纏った黒いビームもどきが雷撃球の塊に向かって放たれる。

 さすがにこれなら迎撃出来るだろう。

 

「アリーセ! 今――」

「――あ、これ、チャージショットいりませんね」

 俺が声を掛けようとした瞬間、チャージショットを中断するアリーセ。

 

 ……なぜなら俺の放った融合魔法が、雷撃球を迎撃するどころか、一瞬で消し飛ばして、翼竜もどきも穿ち貫いたからだ。


「……相殺どころか蒸発させたぞい」

「ですねぇ」

 銀色に光る粒子に包まれ始めた翼竜もどきを見ながら、そんな事を口にするエステルとアリーセ。

 そしてその直後、翼竜もどきは例の銀色の爆発と共に、あっさりと跡形もなく消し飛んでしまった。

 

「……あ、あれ? 魔法――魔煌波同士の衝突だと、威力に関係なく双方が消えるんじゃなかったっけか……?」

「ふむ……魔煌波の密度がソウヤの放った融合魔法の方が圧倒的に多かった事で、全てが相殺しきれなかったか……あるいは、奴の使うアレが魔煌波を利用した物ではなかった……といった所が、その理由としては考えられるのぅ」

 俺の疑問にそんな風に答えてくるエステル。

 

「ああそうか、もし奴が本当に幻獣の類であったのなら、自らの持つ霊力的な力を使って、あれを放ってきていたとしてもおかしくはないのか」

 俺は納得しながらそう呟くように言った後、アリーセの方を見て、

「……すまんアリーセ、出番を奪った」

 と、詫びる。


「いえいえ、お気になさらずに。やっぱりソウヤさんはそうでないとっ!」

 なんて事を言って人差し指をピッと立て、良い笑みを浮かべるアリーセ。

 ……どういう事だ、それは。

 

 でも……やはりこういう表情を見せる方が、アリーセらしいというかなんというか……

 まあ……あれだ、実にかわいい。


 などと、なんとなく久しぶりに俺はそんな感情を抱くのだった――

久しぶりに幻獣と思しき存在の登場です。

まあ、あの時と違って瞬殺ですが……


あれですね、序盤のボスが中盤以降にザコとして登場するという、昔のRPGに割とあったノリに近い感じ……ですかね?(何)


次回投稿は、金曜日を予定しています。

その次は、来週の火曜日を予定しています。

来週以降、週2か週3かは現時点では未定です……(なるべく週3で更新したい所ですが……)


追記:脱字と衍字があったので修正いたしました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ