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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第1部 異世界グラスティアの異変 第4章 竜の座編
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第24話 アレストーラ教国と銀の王

「たしかにその可能性は高そうね。連中の技術力なら、そういった隠蔽――ジャミングを行う装置かなにかを作れてもおかしくはないもの。……実際、転移を防ぐ障壁を生み出す装置はあるようだし」

 俺と朔耶の話を聞いていたシャルが、そんな風に言った。

 

 ……そういえば、珠鈴がアポートへの対策済みだとか言っていたな。

 あれがまさにその装置だったんじゃなかろうか……

 

 なんて事を思っていると、クラリスとエルウィンが、

「でも、『ローディアス大陸のどこか』なら、大体の予想出来るでありますね」

「そうだね。おそらくだけど……旧ゼクスター領だね」

 と、それぞれ思考を巡らせる仕草をしながら、そう口にする。

 

 たしかに一番ありえるのはそこなんだが……銀の王(しろがねのおう)のローディアス大陸における行動の順序を考えると、どうも違う気がするんだよな……

 そう思った俺は、

「――いや、それはフェイクかもしれない」

 と、ふたりに対して言う。


「というと?」

「どういう事であります?」

 俺の言葉に首を傾げるエルウィンとクラリス


「エルウィン自身が言っていただろ? エルウィンたちの追手が何者なのかとアーヴィングさんが問いかけた時、『あれは、ゼクスターの王を排し、新たなゼクスター王となった銀の王(しろがねのおう)が、召喚術によって呼び寄せた異界の軍勢』だと」

「「あ……っ!」」

 ふたりは蒼穹のブリッジでの会話を思い出したのか、ハッとした顔で声を発する。

 

銀の王(しろがねのおう)が召喚術で呼び出せるのは、冥界の悪霊と混沌界の邪獣だ。とすると……どこかで奴らは混沌界へのゲートを開いている……という事でもある」

「そのどこかというのが、ゼクスタ―ってわけだね」

 俺の説明に続く形で、人さし指をピッと立てたジャックがそう言ってきたので、俺はジャックに対して頷いてみせる。

 

「た、たしかにその通りでありますね……っ!」

「うん、その事をすっかり失念していたよ……。うーん……そうなると、鬼哭界へのゲートがある『特異点』とやらは……ちょっと見当がつかなくなるなぁ……。でも多分、銀の王(しろがねのおう)が最初にこの世界に降り立った場所が、そうなんじゃないかとは思うけど……」

 クラリスとエルウィンが続けてそんな風に言う。

 

銀の王(しろがねのおう)が最初にこの世界に降り立った場所、かぁ……。とりあえず、フォーリアは冥界との特異点があるから違うね」

「ん、奴らは最初の頃は傭兵団として活動していたはず。うん、ならば、どこで傭兵団を旗揚げした?」

 と、朔耶とロゼ。

 そういえば銀の王(しろがねのおう)の名は、凄腕の傭兵として知れ渡っていたんだよな、少し前まで。

 

銀の王(しろがねのおう)が、傭兵ギルドへの登録を行った場所……そこが怪しいな。――だが、クスターナではない事は判明している」

 エメラダはそう言って、アーヴィングの方へと顔を向けると、アーヴィングもまたエメラダの方に顔を向け、肩をすくめて言葉を返す。

「もちろん、イルシュバーンでもないね」


 さすがというべきか、どうやらいつの間にかそこら辺も調査済みのようだ。


「討獣士ギルド側で、秘密裏に調査した時の報告書に書かれていた気がしますが……ちょっと思い出せませんね……」

「という事はサギリナに聞いて見ればいいのよね」

 カリンカの言葉にシャルはそう言うと、携帯通信機を懐から取り出して起動する。

「あー、あー、もしもし……こちらはシャルロッテ――」

 

 うーむ……。前は携帯通信機の事を隠していたんだが、いつの間にか普通に使うようになってるな。

 まあ、別に隠す必要もなくなったって事なんだろうけど。

 それにしても……どうでもいい話っちゃどうでもいい話しだけど、この世界でもまずは『もしもし』から入るんだな。


 などと考えている間に、サギリナ本部長との通信を終えたらしいシャルが、

「――アレストーラ教国で旗揚げしたみたいよ。ちなみにこれ、ティアからの情報らしいから、信憑性は高いと思っていいわ」

 携帯通信機を懐にしまいながら、そう告げてきた。

 

「ん、ティアの情報であるなら間違いない。うん」

 ロゼが同意するように言う。無論、俺も同意だ。


 しかし、サギリナ本部長はどうやって傭兵ギルド側に所属するティアから、そんな情報を得たんだ……? あの人もあの人で良くわからない所があるよなぁ……


「ねぇミリア、たしかアレストーラ教国が不穏な空気を漂わせ始めたのって、銀の王(しろがねのおう)の名が世に知れ渡り始めた頃じゃかったっけ?」

 ジャックがミリアの方に顔を向けてそんな風に尋ねると、ミリアは手に持った何かのファイル――おそらくクスターナの軍が集めた情報――を見ながら、

「……たしかに、そう記されている」

 と、短く言葉を返す。

 

「なんだかんだで結局あそこが絡んで来たか……」

 やれやれと思いながらそう呟く俺。

 それに対してディアーナが、

「まー、たしかにー、怪しい国ではありますからねー。でもー、あの国はー、ローディアス大陸にはー、ありませんよー?」

 なんて事を言う。……たしかにそうだな……

 

 まさか、中継地点と特異点の場所が異なる……とかなのか?

 

 そんな風に思っていると、アーヴィングがディアーナの方を向き、告げる。

「ローディアス大陸にはアレストーラ教国の自治州――まあ、ほとんど植民地のようなものですが――が、あります。ですので、おそらくそこではないかと……」

 

 ふむ、そんなものがあるのか。となるとそこで確定じゃないか?

 ……と、思ったのだが……


「ですけど……自治州って、たしか18だか19だかありますよね?」

 と、アリーセが人さし指を額に当てながら、アーヴィングに向かって言った。

 お、多いな……。それだとさすがに一発で確定とはいかなさそうだな。


「そうだね。けどまあ……そこは『紅翼』や『蒼刃』に調査して貰えばどうにか出来ると思うよ。あれだけの報告書を纏めてくるくらいだからね」

 アリーセに対して頷き、そう言葉を返すアーヴィング。

 

 うーむ……。たしかに銀の王(しろがねのおう)の軍勢やら異界の魔物やらがそこらじゅうにいる上に、魔法が使えない今のローディアス大陸で、あれだけの調査をやってのけてしまうくらいだし、中継地点――特異点の調査に関しても、任せればどうにかしてしまいそうな感じはするな。

 

「となると……『紅翼』や『蒼刃』と接触して、それを伝える必要がありますね」

「リンに接触するのでも構わないな」

 俺は腕を組みながら、アリーセの言葉に続くようにして言う。


「そういえばー、リンさんからー、ルートヴィッヒという人かー、オルテンシアという人にー、話をすればー、会えるようにしてあるー、と聞いていますよー」

 ディアーナからそう告げられた俺は、

「なるほど……あのふたりか」

 と呟きながら、フォーリアで出会ったそのふたりの事を思い出す。


「そのふたりだったら面識あるし、私がチャチャッと行ってくるよ!」

 そう朔耶が言った直後、エルウィンが手のひらを朔耶の方に向けて制止。

「いや待って欲しい。ここは僕が行くとしよう。自分の国だから何かあっても対処しやすいし、一度姉さんとは話をしておかないと、って思っていたからね」

 と、告げた。

 その言葉に、当然といえば当然の如く、クラリスが即座に続く。

「無論、私も行くでありますよ!」


 うーむ……。ふたりとも行く気満々で、何を言っても止めるのは難しそうだな……

 そう判断した俺は、ディアーナに問いかける。

「――ディアーナ様、例の鏑矢ってありますか?」


「2つほどー、出来ていますよー。1つ渡せばいいですかー?」

 問いの意図を理解したらしいディアーナの返答に、俺は頷く。

「お願いします。ついでにテレポータルを」

「はいー、そっちも了解ですー」


 エルウィンとクラリスはディアーナから鏑矢を受け取ると、開かれたテレポータルを使ってフォーリアへと向かっていった。

 しかし、ふたりともディアーナに対してずっと恐縮しっぱなしだったな。


「……銀の王(しろがねのおう)や真なる王の件の突破口が、これで開けるといいのだが……」

「そこは信じるしかないね」

 エメラダとアーヴィングが閉じていくテレポータルを見ながら、俺と朔耶はそんな事を言った。

 

                    ◆

 

 それ以上その場――セルディスタ盆地にある竜の御旗の拠点跡――に留まっていても仕方がないという事で、一度ディアーナの領域まで戻ってきた俺たち。

 

 と、そこで俺にだけ聞こえる声で、

「そういえばソウヤさんー、前にー、調べてみると言ったシスティア・レティア・アルマティアさんですけどー、この人ー、かつてアレストーラ教国でー、光の聖女と呼ばれていた人ですねー。魔法とは違うー、光の術を使えるとかなんとか言われていましたがー、多分その術はー、私の使う術ー、つまり星霊術ですねー」

 なんて事を言ってくるディアーナ。

 

 マジか!? あの人、銀の王が傭兵団を旗揚げした場所の情報を知っていたくらいだから、教国の――それも中枢に近い人だったんだろうとは思っていたけど……まさか、聖女と呼ばれている程の人だったとは……

 しかも、ディアーナと同じ星霊術まで使えるとか想定外すぎる。

 なんというか、蓮司の周囲にはとんでもない人間が多いな……

 

「ちなみにー、システィア・レティア・アルマティアさんですけどー、今はー、カルカッサという集落にいますねー」

「カルカッサ……? ああ、あそこか……」

 ディアーナに告げた地名は、アーデルハイトやヴァルガスと出会った場所だった。

 まあ正確に言うなら、街道でわざとらしく接触してきたアーデルハイトに誘われて行った場所だが。

 

「よし、竜の御旗の方は手詰まりな感じがあるし、そっちへ行ってみるか」

 そう俺が言うと、

「ん? ソウヤ、どこへ行くつもりなの?」

 と、シャルが問いかけてきた。

 

 カルカッサにティアに会いにカルカッサへ行く事を告げると、

「ああ、ヴァルガス団長の……。ティアは一体あそこで何をしているのかしら……? うーん、ちょっと気になるし、久しぶりに団長に挨拶もしたいから、私も行くわ」

 そうシャルが返してくる。

 まあ、面識があるから当然と言えば当然か。

 

「ティアさんにヴァルガスさんですか……。私も少しばかり話を聞きたい事があるのですが、同行してもいいでしょうか?」

 カリンカがそんな風に言ってくる。こっちは純粋に何かの情報収集が目的だろうな。

 特に断る理由もないので、問題ないと返す俺。

 

「気にはなるけど、この人数で押しかけるのはさすがにまずいね」

 アーヴィングがそう言うと、それに続く形で、

「それに、あまり出歩いているわけにもいかんしな。……ジャックにミリアを同行させたいのだが、構わないだろうか」

 と、エメラダが言ってきた。

 こっちも別に断る理由がないので、問題ないと答える。


 竜の御旗の動きが分からないので、アリーセ、ロゼ、朔耶の3人はアーヴィングやエメラダに付ける事になった。

 ちなみに、アーヴィングとエメラダは別途何かするつもりらしく、共に行動するそうだ。

 

「ではー、テレポータルをカルカッサに――」

「あ、待ってください」

 テレポータルを開こうとするディアーナに、そう声を投げかけて制止する俺。

 直接カルカッサに飛ぶと、面倒な事になるからな。主に帰りの移動手段的な意味で。

 

「あそこ、レビバイクがないと帰りが大変なので、一旦ルクストリア――アリーセの家で……」

 ランゼルトまで乗っていったレビバイクは、既にアリーセの家に移動してあるので、俺はそうディアーナに告げる。

 

「わかりましたー。では開きますね―」

 と言って開かれたテレポータルを使い、アリーセの家へと移動する俺たち。

 

 そして、そこから改めてサイドカー付きレビバイクを使い、カルカッサへと向かうのだった――

久しぶりに『アレストーラ教国』の名が登場しました。

4章も中盤なので、じわじわと『竜の座』や『その先』へ向けて、色々と繋がってきますよ!(多分……)


追記:サギリナからの情報をシャルロッテが言う所で、その情報源が『ティア』である事を明確に示していなかったので調整しました。

(名前を入れたつもりだったのですが、入っていませんでした……)


……このせいで、どこにもティアという名前が出て来ていないのに、蒼夜がティアの名前を出している変な状態に……。なんという、うっかりミス orz

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