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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第1部 異世界グラスティアの異変 第4章 竜の座編
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第2話 ルクストリアへ戻って

 飛行準備が開始され、飛行艇内が慌ただしくなり始めた所で、 

「さて……と、どうやらもう行くみてぇだし、俺とクーは降りるか。……なんだか、銀の王のせいで慌ただしくなっちまって、あまり話が出来なかったけどよ……」

 そう俺の方を見て言ってくるグレン。

 

「まあなぁ……。ちょっと残念だ」

 特にアルチェムたちとは、最初にちょっと話しただけで、ほとんど話せていないし。 

 もっとも、ローディアスの件やギデアスの件などで、また会う事になるのは間違いないので、

「まあ……また近い内に会う事になるだろうし、きっちり分かれの挨拶をする程の事でもないから、別にいいんじゃないか」

 と、そんな風に言葉を続ける俺。

 

「ですです。ローディアス大陸の件で進展があったら、また会うのです」

「それもそうだな。……もしかしたら、次はルクストリアで会う事になるかもな。んじゃ、その時までまたな」

 そう言って、クーとグレンが飛行艇から降りていく。

 

 それから程なくして飛行準備が整い、飛行艇『蒼穹』が空港から離陸し始める。

 いや、正確には離水、か。

 

「なんだか、随分と長く居た気がするよ」

「実際、半月以上居たわけだし、長いっちゃ長いけどな。というか……俺からしたら、イルシュバーン共和国の滞在日数より長いな」

「あー、たしかに」


 なんていう会話を朔耶としている間にも、飛行艇は浮上を続け、メルメディオの街並みが――ディンベル獣王国の陸地が小さくなっていく。

 

「艇長ー、指定空域内で戦闘が開始された模様ですー」

 ディアーナみたいな喋り方をする乗組員――レミーナがそう告げてくる。

 

「始まったようですな。――ディオ、長距離偵察システムを起動して、指定空域の映像をブレイズモニターに」

「承知しました」

 ジークハルトの指示にディオがそう答えた直後、例のホログラムのような緑色のプレートが出現する。これ、ブレイズモニターっていう名前なのか。

 

 と、先程とは違って今度は空が映し出される。

 幻燈壁によって望遠鏡などを用いても遠くが見えないこの世界で、どうやって遠く離れた場所の状況を映し出しているのかよくわからないが、まあそこはいい。


 モニターに視線を向けると、飛行艇の集団が2つあり、バルカン砲のごとき勢いで乱射される魔法弾や、大きく湾曲しながら飛んでいく光線などが、その2つの集団の間を飛び交っているのが見えた。

 

「相変わらず、SF――というか、スペースオペラの世界みたいな光景だよね。飛び交っているのが魔法だけど」

「そうだな。しかも、どっちの飛行艇もフォルムがそれっぽいし……」

 朔耶の言葉に同意する俺。

 

 直後、蓮司側の攻撃が敵飛行艇のバリアを破り、敵飛行艇を破砕した。

 それを皮切りに、次々にバリアが破られ、敵飛行艇の数が見る見る減っていく。

 対して蓮司たちの方は全く減っていない。


「蓮司たちの飛行艇、随分と頑丈だな。何度かバリアを貫かれているのにビクともしていないし」

 そう俺が呟くように言うと、シャルが俺の方を見て説明してくる。

「バリアだけじゃなくて、装甲も『エーテリアル・マテリアライズ』という特殊なコーティングを施してあるから、仮にバリアを貫かれても、ある程度なら防げるのよ。それに軽微な損傷なら、ナノアルケインで自動修復されるし」


「なるほど……バリアだけじゃなくて装甲自体も強化されているのか。そりゃ頑丈なはずだ」

 納得してそう言葉を返す俺。

 

 そんな話をしているうちにも、敵集団はどんどんと数を減らし、遂に1艇残らず消滅した。相変わらず、最後の最後まで撤退しないんだな……奴ら。

 

「先ほどと同じ識別コードの飛行艇からの通信ですー」

 レミーナがそう伝えてくる。

 

「よし、回線開け」

 ジークハルトがそう答えると、ブレイズモニターに表示されている映像が戦闘空域のものから、蓮司の顔へと切り替わる。

 

「どうやら、単なる威力偵察だったようだ。あっさり片付いてよかったぜ」

 なんて事を言ってくる蓮司。

 

「あっという間でしたな。戦況によっては、微力ながら援護をしようと考え、空中で待機しておりましたが……まったく不要でしたな」

 ジークハルトがそんな風に答える。

 

「ま、さすがに型落ち相手に負けたりはしねぇさ。――さて、イルシュバーンへ戻るんだろう? 完全に一掃したから大丈夫だとは思うが、念の為うちの飛行艇を2艇ほど途中まで護衛につけるぜ。ああ、お代はいらねぇぞ。昔馴染みを守るために俺が勝手にやるだけだからな」

「では、ありがたく護衛して貰おうかな」

 ジークハルトの代わりに、アーヴィングがそんな風に言う。

 

「ディーグラッツの近海まで行ったら引き上げるが、そこまで行けば大丈夫だよな?」

「ああ、それで十分だよ」

 蓮司の問いかけにアーヴィングがそう答えると、

「わかった。――さて……それじゃ、俺はちょっと奴らの飛行艇の残骸を調べたいから、失礼するぜ」

 という言葉を残し、蓮司からの通信が切断された。

 

「……どうやら、何か気になる事があるみたいだな」

「そうだね。最後、そんな顔してたし」

 俺の言葉に頷き、同意する朔耶。


「あら、よくわかるわね」

「まあ、何度か見た事あるしな。ああいう顔をした蓮司の姿を」

 シャルに対し、そんな風に返した直後、ピピッという音が鳴り、

「識別信号、『アライアンス』の飛行艇2艇がこちらに接近してきます」

 と、ディオが伝えてきた。

 アライアンス――同盟か。つまり味方って事だな。

 

「先程、あの者が言っていた護衛用の飛行艇ですな」

「だね。それでは、イルシュバーンへ帰るとしようか」

 アーヴィングがそう言葉を返すと、ジークハルトは頭を下げた後、全体通信を使い、命令を発する。

「承知いたしました。――全乗組員に通達。『蒼穹』移動を開始せよ! 目的地は、イルシュバーン共和国のディーグラッツだ!」

 

                    ◆

 

「ようやく家に帰ってきましたね……」

「ん、なんだか落ち着く」

 アリーセとロゼが、家に入った所でそんな事を言う。

 

 ちなみに、アーヴィングとカリンカとは途中で分かれている。

 アーヴィングは、ディンベル獣王国での会談を踏まえた会議があり、カリンカは、サギリナ本部長への報告と各支部への情報共有のための資料を作るためだそうだ。

 どちらも戻ってきて早々に仕事とか大変だな……

 

 などと事を思いつつ、俺はアリーセとロゼの言葉に続き、

「たしかにそうだな。……俺の家ではないが」

 と、言った。

 

「今日はもう休み……と言いたいけど、まだ昼過ぎなんだよねぇ……。うーん、どうしようかな」

 朔耶が時計を見ながら呟く。

 

「あ、そういえばアヤネさんにあの服を送って貰ったお礼を言わないと……。これからちょっと行ってきますね」

 アリーセがそう言うと、

「ん、私も行く」

「私も制作状況が気になるから行くわ。多分、出来ていると思うし」

 と、ロゼとシャルが続く。

 

「それなら俺も行こう」

「だったら私も行くよ!」


 ……という事で、結局ここにいる全員で行く事になった。

 

 ……

 …………

 ………………

 

「ん? なんだか結構な数の人がいるっぽい? うん」

 ロゼがアヤネさんの店を見ながらそう言ってくる。

 

「たしかに、随分と客が入っているな」

 そう答える俺。

 店を見ると、閑古鳥が鳴いていたあの時とは打って変わって、店内には結構な数の人がいた。

 

「まあ、とにかく行ってみましょう」

 というアリーセの言葉に頷き、俺たちは店へと入る。

 

「いらっしゃいませー!」

 と、俺たちの出迎えたのはアヤネさん……ではなく、着物に袴という、大正時代を思わせる服装のカヌーク族の少女だった。新しく雇った店員だろうか?

 

「えーっと……ソウヤ・カザミネという者ですが、アヤネさんはいますか?」

 俺がそう問いかけると、

「あ! あなたがソウヤさんなのですね! 店長から話は伺っています。ソウヤさんという人が尋ねてきたら、すぐに伝えて欲しいと! 申し訳ありませんが、ここで少々お待ち下さい! 呼んできますので!」

 店員らしき少女はそう言うやいなや、もの凄い勢いで店の奥へと消えていった。

 

 待っている間、なんとなく周囲を見回してみると、同じような服装の少女が他にも2人ほどいるのが見える。


「これだけお客さんが入っていたら、店員の1人や2人、増えていてもおかしくはないわね」

「ええ、そうですね。さすがにアヤネさんだけでは厳しいでしょうし」

 シャルの言葉に頷いてそう返すアリーセ。


「それにしても、随分と変わった感じの服が多いね」

 周囲を見回しながら、そんな感想を述べる朔耶。

 

「まあ、アカツキの人間から見たら逆に変わっているって感じるかもしれないわね。前に来た時に見た、完全なまでのアカツキ装束と比べて、私たちが普段着ているような服に近い見た目になっているし」

 と、シャル。

 たしかに、アカツキ装束――つまり、和装とルクストリアで一般的に着られている服――洋装との間くらいになっているな。

 まあ、要するに俺が提案した感じの物なのだが。

 

「ん? あれって、私がソウヤに要望した服に似ているような気がする、うん」

 ロゼが首を傾げて言ってくる。

 その視線の先に目を向けてみると、ロゼの言う通り、俺がロゼ用にデザインした服に限りなく近い服を着たマネキンがあった。

 

「なるほど……帯がないのと、スカートが学院制服風のアコーディオンスカートからフレアスカートになっている以外は、ほぼ同じだな」

 俺のデザインからアレンジしたのだろうか? 

 ふむ……あれはあれでなかなかいい感じだな。

 

 なんて事を思いながら、マネキンの服を眺めていると、

「ソウヤさん! それに皆さん! ルクストリアへお帰りになられたんですね!」

 というアヤネさんの声が聞こえてきた――

これも、ディンベルへ行く前にやっていたあれこれの結果ですね。

ほぼ章1つ分、丸々間が空いてしまいましたが……(ちょっとだけ王城の所で出てきてはいますが)

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