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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第1部 異世界グラスティアの異変 第3章 南方編
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第79話 ギデオンの屋敷・隠し通路

予約日時の設定がミスっていた事に気づいたので手動で投稿しました……

「傭兵団の一部を取り逃がしましたが、屋敷内の制圧が完了いたしました! ですが……宰相ギデオンの発見にはまだ至っておりません……」

 敵の抵抗が完全に止んだ所で、マリサ隊長のもとに来た守備隊員が、そう報告してくる。

 

「……そう、わかったわ。引き続き捜索を」

「はっ!」

 マリサ隊長の指示に敬礼を返し、立ち去っていく守備隊員。

 

「……守備隊の中にいた月暈の徒(げつうんのと)に情報を流していた人間は既に全員捕縛済みだから、情報が漏れるはずはないのだけど……」

 口元に手を当て、うーんと唸るマリサ隊長。

 

「いつの間に捕縛を?」

 そう俺が問いかけると、例の倉庫で得た情報と緋天商会をこっそり捜索した際の情報から、守備隊内の月暈の徒(げつうんのと)に与する者を全て炙り出す事が出来たために、昨日の夜から今日の朝にかけて、秘密裏に動いて素早く一網打尽にしたと言われた。

 ふむ、そうだったのか。それは捕縛された連中も突然すぎて何も出来なかっただろうな。

 

「だとしたら……普通に隠し通路の類でしょうか。我が国にも大公宮を始めとした重要な施設には、有事の際に外へと出られる隠し通路がありますし」

 というエルウィンの言葉に、公都の地下に張り巡らされた通路を思い出し、

「ああ、そういえば公都のあちこちに張り巡らされていたな。俺たちはそこから侵入したし」

 と、エルウィンに対して言う俺。

 

「それ、そこから侵入したのって、姉さんの手引きですよね……。はぁ……本当は秘密なんですけどね……。まあ、ソウヤ殿たちになら、別に知られても構いませんが」

 腰に手を当て、ため息をつきながら首を左右に振り、そう言ってくるエルウィン。

 正確にはリンの痕跡を追ったのだが……まあ、そこは言わないでおこう。

 

「――既に隠し通路がある事を前提で、そういうのを探すのを得意とした人間に、魔力を感知する道具を持たせて捜索しているはずなのだけど……。うーん……単純に魔煌技術の使われていないアナログな仕組みの、分かりづらい所にある隠し通路とかなのかしらね……」

「あと考えられるのは、特殊な方法じゃないと開かない……とかか。うーん……中世時代に作られた仕掛けを利用していたら、ありえるんだよなぁ。……前に、実際あったし」

 マリサ隊長の言葉にそう返しつつ、アルミューズ城の事を思い出す俺。

 

「中世……。……そういえばこの屋敷は、たしか中世時代に作られた物を、ギデオンが買い取って内装を改築したという話だったわね……」

「ふむ……。そうすると、本当に特殊な方法――霊力を使った仕掛けがあってもおかしくはない感じだな。となると……シャルたちの出番か」

 マリサ隊長の話から、アルミューズ城のような霊力が必要な仕掛けがありそうだと考えた俺は、そう呟くように言って、シャルたちのもとへと向かう。

 

                    ◆

 

「――というわけで、そういう観点で隠し通路の捜索をして欲しいんだが……」

「アルミューズ城の様な仕掛け、ねぇ……。まあたしかにありえなくはないわね」

「ん、大体理解した。とりあえず、うん、霊力的な物を使う仕掛けを探せば良い? うん」

 俺の言葉に対し、シャルとロゼがそう言ってきたので、頷き答える。

「ああ、よろしく頼む」

 

「なら、俺たちも怪しい物を探してみるか」

「うむ、そうだな」

 グレンとケインがそう言うと、他の皆がそれに頷いた。

 

 そうして調べ始めてから10分程度経過したところで……


「ソー兄、2階と1階の両方で、1つずつ霊力反応プレートっていうのが見つかったって!」

「同時に霊力を流すと起動であろうという事が判明したので、これからロゼとシャルロッテさんで時間を合わせて、同時に霊力を流すそうです」

 屋敷内を探索していた俺の所に、朔耶とアリーセがやってきて、そう告げてくる。


「お、そうか。しかし、同時ってなかなか面倒な……」

「たしかにね。RPGとかでも二手に分かれてやる必要があるしね。まあ、ダンジョンの入口自体が2つあるとんでもないのもあるけど……。って、まあそれはいいとして、そんな風に厄介な仕掛けになるくらいだし、隠し通路を暴かれにくいってのはあると思う」

 と、俺の言葉に対し、そんな事を言ってくる朔耶。

 

 ……そういえば、ダンジョンの入口が2つっていうパターンは、某荒野のRPG以外では、ほぼ見た事がないな……

 普通、ダンジョンの入口が2つあって、しかもそれぞれが離れた場所にあるとか思わないし、ギミックとしてはかなり凶悪な部類に入ると個人的には思う。

 

 などという、どうでもいい事を考えていると、アリーセが首を軽く傾げた後、 

「RPGとやらがなにかは知りませんが、サクヤさんの言うとおりですね。霊力持ちが2人必要ですし……」

 そんな風に言ってきた。それって――

「つまり、敵……ギデオン側には、霊力持ちがふたりいたって事か……?」

 まあ、当然いたのだろうが、よくまあ霊力持ちを配下に出来たもんだ。

 

「あ、はい。私たちが撃退した大型害獣を操っていた傭兵がいるのですが、その方が霊力持ちだとシャルロッテさんが言っていましたね」

「それと、奥のギデオンの書斎でギデオンのフリをしていた人がいたらしいけど、その人もそうみたいだね」

 なるほど、ひとりは傭兵か……。そういえば、傭兵団の一部を取り逃がしたとかマリサ隊長の所に報告に来た守備隊員が言ってたっけな。

 

 先程の会話を思い出していると、朔耶が両手を左右に広げて首を横に振り、

「ちなみにその傭兵には逃げられたみたいだよ」

 と、告げてくる。

 どうやら、霊力持ちの傭兵は取り逃がした『一部』の中に含まれているようだ。

 

「ふむ……。害獣を操れて霊力を持つような傭兵だし、逃げられてもおかしくはないが……。どんな奴なのか気にはなるな」

 俺がそう呟くように言った所で、ガコンという大きな音が響く。お? 隠し通路の入口が開いたのか?

 

「ん、隠し通路の入口は、1階の応接間。うん。で、狭いから突入人員を絞るらしい。うん。だから、うん、来て欲しいってマリサが言っていた。うん」

 ロゼがやって来てそんな報告を俺たちに伝えてくる。


「なるほど……。わかった、すぐに行く」


                    ◆

 

「また床にあったのか……。中世の時代って、隠し階段を床に配置するのが流行っていたんだろうか?」

 応接間の壁に出来た階段の入口を見て呟く俺。

 螺旋階段になっている所までそっくりだ。

 

「たしかに、アルミューズ城と同じ感じね、これ」

「ん、ここもあそこと同じで螺旋階段になっている。うん」

 シャルとロゼが階段を覗き込みながらそんな風に言う。

 

「それで、どういうメンツで先行するんだい?」

 アーヴィングが問いかける。


「まず、私かしら」

 と、マリサ隊長が言うが、

「いえ……マリサ隊長は守備隊全体の指揮を執る必要があるので、ここに残られた方がいいと思います」

「そうだな、行くなら俺の方だ」

 というケインとグレンの声によって、マリサ隊長は除外された。

 なにやら不服そうな顔をしていたが、この場の指揮官なのだからしょうがない。


「王族ひとりだけ行かせるわけには行かないし、他にも王都の構造を把握している人間が同行する方がいいと思う。――まあ、要するに私たちって事だけど」

 セレナがそう言うと、ケインとアルチェムのふたりが同意するように首を縦に振った。


「ん、こういう所の探索は私が得意。うん。だから、行く」

「そうね。霊力の仕掛けがこの先にあるかもしれない事を考えると、私も行くわ」

「……透視や他者転移が可能な……ソウヤ様も重要かと……」

 ロゼ、シャル、アルチェムが順にそう意見を述べる。

 まあ、ロゼとシャルのは意見というか、突入表明だが。

 

 ――そんな感じで、隠し通路への侵入要員を決めていった結果……

 俺、シャル、ロゼ、アリーセ、グレン、ケイン、セレナ、アルチェムの8人に決まった。

 地下通路は狭いので、イルシュバーン組が前衛、ディンベル組が後衛といった配置で進んでいく。

 他国の人間が前衛というのはどうなのかという話もあったが、ロゼが先行する以上、そこは仕方がないという事で落ち着いた。

 

「今の所、トラップの類はないみたいですね」

「まあ、ギデオンにトラップを仕掛ける技術がなければ、普通に考えて脱出用の通路にトラップは存在しないだろうな。作る意味がないし」

 アリーセと俺がそう言いながら、やや先行するロゼを見る。

 

 アルミューズ城の時と同様、ロゼがエステル製のスティックを使って通路の先を照らしながら、トラップが仕掛けられていないか、周囲を注意深く観察している。

 

「通路に入ってから結構経つな……。歩いてきた距離と方角から考えると、ここは駅の東側あたりになる……か?」

「……はい。駅の東……正確に言うと、王都北東の……カルナス市場付近かと……。なので、もう少し行くと、城壁――ナディアの門です……」

 後方からそんなグレンとアルチェムの会話が聞こえてくる。

 ふむ……。この通路の感じだと、門の外――王都の外に出そうだな。

 

 そう思いながらしばらく歩いていくと、先行するロゼの照らす光によって、通路の先に階段が浮かび上がってきた。

 ロゼもそれに気づき、

「上り階段がある。うん」

 と、そう告げてくる。

 

「あそこが、この隠し通路の終点……という事なのかしらね?」

「ん、周囲に隠された通路とかはなさそう。だから、うん、その可能性が高いと思う。うん」

 シャルの疑問に、周囲を確認しながら答えるロゼ。

 

「となると……問題はどこに出るか、だな。さっきのグレンとアルチェムの話からして、既に王都の外である事は、間違いなさそうなんだが……」

「うん、まあ、とりあえず登ってみる。うん」

 ロゼは俺の言葉に頷き、そう言って階段を登り始める。

 

 それに続いて登っていくと、階段の終わりに天井があった。

 その天井にロゼが手をかけ、そして言う。

「……うん? 上になにかある? 重くて開かない。うん」


 俺はクレアボヤンスを使って天井の先を透視する。

 と、岩壁を切り出して加工して作ったかのような、大きな正方形のブロックが蓋の上に置かれているのが視えた。なるほど……これは開かないな。


「どうやら、ギデオンが追跡を阻止するために、この上にデカいブロックを置いていったみたいだな。よっと!」

 そう言いながら、ブロックをサイコキネシスでどかす俺。


 ……って、今、何も考えずにクレアボヤンスを使いながらサイコキネシスを使ったが、前は同時併用なんて無理だったよな……俺。

 いつの間にか、こっちに来た時から更にサイキック能力が上がっている……?

 

 と、そんな事を考えていると、ロゼが天井をスライドさせ、そこから光が差し込んできた。

 ……まあ、別に困るものでもないし、今はとりあえずいいか。

 今度、ディアーナと話をする時に聞いてみよう。


 そう思いながら、俺は地上へと出る。

 さて、一体全体どこに出るのだろうか――

蒼夜の能力強化は、今までも少しずつ起きていたりします。

なので、どちらかというと、ここでようやく蒼夜自身が自覚した……という感じですね。


追記1:予約日時の設定がミスっていたため、気づいて手動で投稿するまで、予定よりも1時間以上遅れました……。申し訳ありません…… orz

追記2:タイトルの一部を間違えて消してしまったので、付け直しました。

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