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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第1部 異世界グラスティアの異変 第3章 南方編
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第63話[Dual Site] 蓮司とシャルロッテ

<Side:Charlotte>

「――アルマダール石窟寺院(せっくつじいん)?」

 ここの討獣士ギルドで、ディンベル領内の遺跡に関しては、一通り情報を仕入れたはずなのだけど……そんな名前の遺跡はなかったような……


 ギルドで得た情報の内容を思い出しながら、私が通信機越しに首を傾げると、

「ああそうだ。そこぐらいしか置いておけそうな場所がなかったんでな……」

 そんな風にレンジが言ってくる。


「それ、どこにあるのよ?」

「アスティアという名前の山だな。その中腹付近にある」

 ふぅん……アスティアという山にねぇ……。


 ……アスティア? 

 その名前、どこかで聞いたような……


 …………あっ!

 

「ちょっ、ちょっと待って! そこ、霊峰とか言われている一種の聖地じゃない! そんな所、いくらイルシュバーンの使節団の一員という肩書きがあった所で、おいそれと入れる場所じゃないわよ!?」

 その名が指し示す場所の意味を思い出した私は、怒気を込めて言葉を返す。


「それは分かっているが、そのくらいの場所じゃないと無関係の連中――例えば、古代遺跡専門のトレジャーハンターとかに奪われかねないだろ?」

「……それはまあ……そうかもしれないけど……」


 たしかにレンジの言う事は、もっともではあるのよねぇ……

 トレジャーハンターとかに奪われたら厄介な事になるし。

 けど……だからといって、聖地はさすがに無茶すぎるような……


「それに、シャルは蒼夜たちと一緒に、月暈の徒(げつうんのと)とかいう連中が城内で引き起こした騒乱を鎮圧したんだろ? だったら、その褒美って事でどうにか出来るんじゃないか?」

「まあ……上手く話を持っていければ、可能性はゼロじゃないかもしれないけど……」

 でもねぇ……あの争乱で主に活躍して、一番褒め称えられているのは、サクヤなのよねぇ。うーん……


 という、私の悩む姿が伝わったのか、

「どうにも不可能だっていうなら、他の手を考えるが、とりあえずは試してみてくれないか?」

 なんていう風にレンジが言ってきた。

 

 まあ、断られるかもしれないけど、話すだけなら……と、そう思い、

「……しょうがないわね、話はしてみるけど、失敗しても責任取らないわよ?」

 そんな風にレンジに告げる。


「いや、責任を取るもなにも、最初からシャルに責任なんてねぇからな?」

「単なるノリよ」

「ノリって……。お前、そんな冗談をかますような性格だったか……?」

 私の言葉にそう言って返してくるレンジ。

 

 ……そう言われると、たしかにレンジたちの前では、こんなノリで話をした事なかった気がするわね……

 だとしたら、私がこんな風に話せるようになったのは……

「――多分、ここの所、冗談みたいな面々と顔を突き合わせ続けていたから、色々と感化されたのかもしれないわね」

 ソウヤたちの事を思い出しながらそう言って笑う。


「冗談みたいな面々って……。ああ、いや……たしかにそうかもしれねぇな……。でもまあなんつーか、シャル、傭兵団にいる時よりも楽しそうだし、ある意味、蒼夜たちに感謝だな」

「ええ、たしかに楽しいわね」

 私はレンジに対してそう短く返した後、一呼吸置いてから、

「――夜の0時になると現実に引き戻されるけど」

 と、言葉を続けた。

 

「それは……」

 通信機越しでも悲痛な表情をしているのが伝わってくるような声音で、絞り出すかのようにそう言ってくるレンジ。

 ええっと……その反応は想定外だわ……

 

「なんでレンジが暗くなるのよ……。これは私の問題だし、もうどうにもならない物だとして諦めているわ。なにしろ、『竜の座』から得た情報――知識でも無理だったんだし」

「……『竜の座』は術的、霊的な技術に関しては、情報量が少し劣るからな。もしかしたら、あそこにない情報があるかもしれねぇぜ」


 たしかにそれは私自身も少し思っていたりする。

 あの『竜の座』から得られる情報は、どういうわけか、そういった術的な事や霊的な事に関しては少ないのよね。

 だから、もしかしたらどこかに何か方法があるのではないか、と。

 

「そうねぇ……あったら良いわね。ホント……」

 そんな言葉がふと口をついて出る。

 ……ふぅ。どうやら、まだ諦めきれていないみたいね、私は。


「……お前、内心では――」

「――その先は言わなくていいわよ? そんな期待はもうしていないから。期待しないと決めているのだから」

 私はレンジの言葉を拒絶するように強い口調でそう返す。

 

 ……でも、本当はわかっている。

 というより、今、はっきりとわかってしまったというべきかしらね。

 諦めきれていないし、期待もしている事に。


「……そうか。余計な事だったな、すまん」

「まあいいわよ、別に。それで? 他には何かあるのかしら?」

 謝ってくるレンジに対し、私は私の心の中を誤魔化すように微笑しつつ、そんな風に言う。


「ああ。もう1つ伝えておく事がある。――イルシュバーン領内でエーデルファーネの動きが活発化してきやがった」

 レンジが忌々しげな口調でそう言ってくる。


「へぇ……。という事は、例のキメラ事件はエーデルファーネの方が関わっていたって事かしら?」

 ルクストリアの――エクスクリス学院の学院長が引き起こした例の事件は、エーデルファーネか真王戦線、どちらかの組織が関わっているであろう事までは判明していたので、私はそう問いかける。


「おそらく、な。……ただ、俺たちとは別の……『竜の血盟』の一派が暗躍していそうな感じだから、実は真王戦線の方が黒幕だという可能性もなくはないんだがな」

「そうね、あそこの連中は、何かを隠れ(みの)にするのが上手いからありえるわね」

 私はそう返しながらため息をつく。

 あの連中、本当に表に出てこないから、(いぶ)り出すのに苦労するのよねぇ……


 そんな事を思っていると、

「それと……アルミナの討獣士ギルドの受付嬢であるエミリエルという女性が、少し前――日が沈みかけた頃らしいが、人形の襲撃を受けたようだ。まあ、クライヴっていう元七聖将の護民士に速攻で蹴散らされたみたいだけどな」

 なんて事を言ってくるレンジ。

 

「日が沈みかけた頃って……ついさっきじゃない。随分とタイムリーな情報ね」

「ああ、ロイドさんから届いたばかりの情報だからな」

 私の疑問に対し、レンジがそう答える。

 ああ、なるほど……そういう事。


「それなら納得したわ。――それを仕掛けたのは、ルクストリアで私を襲ってきた連中と十中八九同じだと思うわ。……それとなく、エミリーさんの事を見張っておいてくれない?」

「護衛……いるのか? そのクライヴが既に護衛についているっぽいが……」

 私の言葉にそう返してくるレンジ。なんか、通信機の向こうで首を傾げていそうな感じがするわね。

 まあ、元七聖将が護衛についているのなら、護衛はたしかに不要よね。

 

 というわけで、私はレンジに告げる。

「違うわよ、護衛じゃないわよ。仕掛けて来たっていう事は、必ず周囲に『敵』が潜んでいるはずでしょ? 人形を操るのはさすがにルクストリアからじゃ無理だし。それを見つけ出すためよ」


「ああ……なるほどそういう事か、理解した。やっておく」

 と、レンジ。これでとりあえず、正確な情報が得られるはず……

 果たして連中は、どっちの勢力に加担しているのかしらねぇ?

 

「ええ、任せるわ。他には何もないかしら?」

「そうだな。今ので話は全てだ」

「それじゃ、通信を終了するわね。良くわからないけど、さっきから守備隊が慌ただしく行き来しているから、あまり不審に思われる事をしていたくないし」

 そう、さっきから妙に駆け回っているのよねぇ……


 というか……妙にやつれた様子の人たち――大半が女性だけど――に付き添いながら、どこかへ向かっている守備隊員もいるわね……。もしかして、なんらかの事件に巻き込まれた人を保護しているとかなのかしら? 

 うーん……そうだとしたら、とても気になるわね。なにか起きたのか調べてみないと。


「ふむ……。王都でなにかあったのか……? まあ、もしその理由が何なのかわかったら、次の定時連絡の時にでも教えてくれ」

「ええ、了解よ。それじゃ、またね」

 私はレンジにそう答えると、通信機の起動スイッチを切る。

 

 さーて……それじゃあ早速調べてみましょうかしら。

 うーん……。とりあえず、やつれた様子の人たちがやって来る方へ行けば、事件が起きた場所にたどり着くはず……よね?

 

 そう考えた私がそちらに向かって歩いていくと、

「あれ? シャルロッテさん?」

 という、アリーセの声が聞こえてきた。


 そして、その声で私は悟る。

 また、ソウヤたちが何かやらかしたのだろう、という事を――


                    ◆


<Side:Souya>

「あれ? シャルロッテさん?」

 という疑問の声を口にするアリーセ。

 

 そのアリーセの視線の先に顔を向けると、たしかにシャルロッテがいた。

 

「うん? どうしてシャルロッテがこんな所にいるんだ?」

「それはこっちのセリフよ……。まあ、また何かやらかしたんでしょうけど」

 俺の問いかけに対し、呆れた表情でそう返してくるシャルロッテ。

 いや、またやらかしたって……

 

「ん、ちょっとばかし人身売買をしていたバカを掃討しただけ。うん」

 アリーセの横に立つロゼがそんな風に告げる。

 

「えっと……それ、ちょっとばかし、じゃないわよね……?」

 困惑しながら俺の方を見てくるシャルロッテ。

 

「……まあ、なんだ? とりあえず何があったのか説明しようか?」

「ええ、お願いするわ」

 俺の問いかけに対し、シャルロッテは頷き、そう言ってくる。

 

「わかった」

 俺は短く言葉を返すと、今日の出来事をシャルロッテに語るのだった――

思った以上に、蓮司とシャルロッテの会話が長くなってしまいました。

なんだか、Dual Siteにしなくても良かった気もしなくはないです…… orz


それと……来週(次回)からですが、火、木、土の更新に固定しようと思います。

2日に1回だと、更新のタイミングがやや分かりづらい様な気もするので、週刊誌や定期メンテナンスのように、一旦「この曜日に更新する」というのを決めてみようかと思いまして……


追記

『月暈の徒』が『月運の徒』になっていたので修正しました。

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