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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第1部 異世界グラスティアの異変 第3章 南方編
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第58話 人形と施錠魔法と……

エイプリルフールですが、特にそれらしいのは何もありません……

(用意する余裕がありませんでした…… orz)

「人形……です?」

 クーが俺の言葉に対して首を傾げ、そう問いかけてくる。

 

「ああ。ルクストリアでシャルロッテを襲撃した魔法生物だ」

「魔法生物……。そういう存在がいるのは聞いた事があるのです。でも、見た事はないのです」

 こめかみに手を当てながら、俺の言葉にそう返してくるクー。

 まあたしかに、俺もルクストリアでの一件以外では遭遇した事がないし、おそらくレアな存在なのだろう。


「たしか、最初はピエロの姿をした奴と遭遇して、それを倒したら、普通の見た目の奴が偵察にやって来た……って話だったよね」

「ああ、そうだな。で……だ、この先にいる連中の中に、その後者の奴と同じ顔を持つ奴がいたんだよ。つまり――」

「うん、この先にいるのは、ルクストリアでソウヤさんたちが遭遇した人形――魔法生物だという事だね。そして……魔法生物であるが故に、クーさんが『人の気配』として察知出来なかった……ともいえるね」

 俺の言葉を引き継ぐようにそう告げてくるカリンカ。

 

「なるほどなのです。たしかに魔法生物というのは見た事がないので、気配を掴めないのです。……それにしても、この先にそのような魔法生物がいるというのは、一体全体どういう事なのです?」

「そうだな……ルクストリアでシャルロッテを襲撃した組織と、月暈の徒(げつうんのと)、あるいは緋天商会との間には、なんらかの繋がりがある……。と、そう考えるのが妥当かもしれんな」

 クーの疑問に対し、俺はそんな推測を述べた。

 

「うん、たしかにね。……でもまあ、それを調べるのは後にして……今はこの先にいる人形を排除しないと、だね。察知されたら情報を飛ばされてまずいから、なんとかして察知される前に倒さないといけないんだけど……」

 カリンカがそう言いながら右手――小型の盾を前へ突き出す。


「このまま近づいて行って、不意打ちでいいんじゃないか?」

 俺はカリンカの持つ小型の盾を指差しながら言う。


「多分、近づいたら見破られるかな。その人形だけど、ギルドが掴んだ情報によると、インスペクション・アナライザーと同等の機能を有しているみたいだし」

 そう告げてくるカリンカ。


 ふむ……なるほど。魔法はバレるというわけか。となるとサイキックでどうにかするのが一番、という話になるのだが、この場面で使える手となると――

「アスポートでの奇襲……しかないな」


 向こうの配置は、手前に2人……いや、2体、そして奥に2体だ。

 つまり……手前の2体を倒したら、速やかに残る2体も気づかれる前に倒す……。それが最良と言えるだろう。

 となると……クーと俺で、1体ずつ魔法を使わずに素早く倒すのが良さそうだな。

 霊幻鋼の剣をクーに持たせてアスポートして……って感じでいけるはずだ。


 俺はふたりに今考えた作戦――などという程の物ではないが――を説明し、クーに霊幻鋼の剣を持たせる。

「えっと……飛んだら手放せばいいです?」

「ああ、そしたら俺が向かって左側の奴を倒す。クーは向かって右側だ」

「了解なのです!」

 クーが霊幻鋼の剣を掲げながら返事をする。

 

 そのまま、感知されるであろうギリギリまで接近した所で、 

「クー、上側の奴が階段を上り始めたら即行くぞ! カリンカ、後方の見張りは任せた!」

 と、告げる俺。

 

「うん、任せといて!」

「いつでもどうぞなのです!」

 ふたりの了承の声を聞いた俺は、上側の2体が階段を上り始めると同時にアスポートを実行。

 既に変化済みのクーを飛ばす。

 

 転移したクーの透明化が解除されると同時に、霊幻鋼の剣がクーの手から離れる。

 ――今だ!

 俺は剣に向かってサイコキネシスを使いそれを浮かせる。


 直後、剣を手放したクーが、右手側の人形へと鋭く爪を振るう。

「がっ!?」

 それと時を同じくして、俺がサイコキネシスで操っている霊幻鋼の剣が左手側の人形を襲う。

「ぎっ!?」

 クーの爪の連撃と、霊幻鋼の剣による十文字斬りによって、人形はあっさりと倒れ伏す。

 

 クーが素早くその場に伏せながら、まだ残りの2体には気づかれていない事を示すジェスチャーをしてくる。

 俺はそれを見ながら全力で階段へと走る。

 

「――《翠靴の疾走》ッ!」

 カリンカのその声と共に、俺の走る速度が上がる。

 どうやら俺に対して強化魔法を使ったようだ。

 急に速度が上がっても、感覚がおかしくなったりしないあたりは、さすがは魔法、というべきか。

 

 ナイス! と、心の中でお礼を言いつつ、クーの元に走りながら、クレアボヤンスで上にいる人形の様子を探る。

 と、どうやらまだこちらには気づいていないようだ。

 

 既に霊幻鋼の剣を拾い終えていたクーに合図を送り、再度アスポート。

 先ほどと同じ動きで残りの2体も速やかに葬り去る。

 

「――よし、片付いたな。思ったよりも雑魚で助かった」

「ですです。人形の動きが鈍かったお陰で、あっさりいけたのです。でも、なんでこんなに動きが鈍いです?」

「んー、まあ……人にそっくりとはいえ、魔法――術式という一種のプログラムで動いているだけのロボットみたいなもんだしなぁ、こいつら」

「あ、たしかにそう言われるとそうなのです。納得したです」


 変化を解いたクーとそんな事を話しながら上を見ると、そこには黒い大きな鉄扉があった。

 なんだ? この扉だけ随分と新しいような……

 

 そう思いつつ扉に近づき、開くかどうか確かめてみる。

 ……と、案の定、施錠されているらしく開かなかった。

 けど、この扉、鍵穴のようなものはどこにもないぞ? 

 どうやって施錠されているんだ? まさか、カードキーとかの類か?

 

 扉を見回しながらそう思っていると、

「その扉、魔法で施錠されているみたいだよ」

 階段を上ってきたカリンカがいつのまにか付けていた眼鏡――おそらく、インスペクション・アナライザーだろう――に指を添えながら、そんな事を告げてくる。

 

 ああ、なるほど……施錠魔法か。

 ルナルガントでも見かけたが、あれは機能していなかったからなぁ。


「その魔法は、解除する事が出来そうな感じの物なのです?」

「んー、少なくとも私には無理かな。アキハラさんやエステルさんなら解除出来るかもしれないけど……あのふたりでも時間かかるかも? さらっと見た感じではあるけど、術式の構造がかなりややこしいし、これ」

 クーの問いかけに対し、カリンカは扉を指差しながらそう返す。


「それなら、力づくで壊すしかないな」

 そう言いながら、扉へ向かって右手を突き出す俺。

 

 ……壊すと言ったが、正確にはサイコキネシスで吹き飛ばす、だな。

 なんて訂正を心の中で呟きつつ、サイコキネシスを軽く使って扉の重さを調べる。

 

 ……ふむ、扉自体は先日の倉庫と大差ないが、妙な重さが追加されている感じだな。

 これは……施錠魔法によるものか? まあ、この程度なら余裕そうだ。

 あとは、向こう側だが……

 

 というわけで、クレアボヤンスで透視して扉の向こう側を覗く。

 と、そこはレンガ造りの狭い円形の部屋で、上へと続く螺旋階段が壁際に取り付けられていた。

 ……とりあえず人はいないな。

 

「せいっ!」

 俺は掛け声と共に扉をサイコキネシスで押す。

 すると、扉はあっさりと吹き飛び、その先にあった別の鉄扉にぶつかって止まった。

 

「うわぁ……無茶苦茶だねぇ……。施錠魔法の力を上回る力で吹き飛ばすなんて……」

 驚き半分、呆れ半分といった表情で呟くように言うカリンカ。

 

「まあ、魔法による施錠も絶対ではないって事だな」

 そう(うそぶ)きながら、俺は吹き飛ばした扉をサイコキネシスで横にどかし、もう1つの扉を調べる。

 

「ふむ……こっちの扉も施錠されているけど、こっちは魔法じゃなくて、いたって普通の鍵が使われているな。鍵穴があるし」

 この世界でも地球でもどちらでも良く見かける、シリンダー錠と呼ばれるタイプの奴だ。


「どうしてそっちは普通の鍵なのに、こっちは魔法の鍵にしてるですかね?」

「んー、向こうの扉は一般的に使われている――要するに、人が日々普通に出入りしているんじゃないかなぁ?」

 クーの疑問に、カリンカがそんな推測を言って返す。

 クレアボヤンスで外を透視して視ると、住宅街――高級と前に付きそうな感じだが――のようなので、その推測は当たっている可能性が高そうだ。

 

「……まあ、そうかもしれんな。なにしろ、扉の向こう側は、大きな屋敷が建ち並ぶ住宅街になっているようだし。……で、見た感じ、周囲に人影はないようだが……こっちの扉も吹き飛ばしてしまうか?」

 俺はクレアボヤンスで扉の向こう側――街の様子を伺いつつ、そう問いかける。

 

「あ、このタイプの鍵なら、ちょちょっとやれば開けられるから大丈夫だよ、任せといて」

 俺の横にやってきて鍵穴を見たカリンカが、そんな風に言いながら、どこからともなく2本の針金を取り出して見せた。……ピッキングか?

 

「そうか? じゃあ任せる」

 俺はお手並み拝見とばかりにそう言って後ろへ下がり、カリンカの動きを眺める。

 

「えーっと……ここはこれで……こう。で、あとはこっちをこうして……。はい、終わりっと」

 なんて事を呟きながら、1分もせずにあっさりと解錠してみせるカリンカ。

 おお、なかなかのピッキングスキルだな。

 

「わっ、凄いのです! あっさり開いたのです!」

「まあ、昔散々練習したからねぇー」

 クーの感嘆の言葉に対し、カリンカはそんな風に言葉を返しつつ扉を開ける。

 そして、外に出て、

「あ、これ時計塔だ」

 と、見上げながら言ってきた。

 

「あ、本当なのです」

 カリンカに続いて外に出たクーもまた、見上げながら同意する。

 

 俺は外に出て上を向く。

 すると、ふたりの言うとおり大きな数字盤のある時計塔が、視界に入ってきた。

 

 ふむ、という事は……中の螺旋階段は、数字盤の整備のための物って所か。

 

「とりあえずこっちはどうにかなったな。あとは室長たちの方だが……」

 リズという少女や、その他の囚えられている人たちを見つける事は出来たのだろうか?

 戦闘になっていたりしなければいいのだが……

 

 と、そんな事を思いながら、決めておいた合流場所へ向かって、来た道を戻るのだった――

なにやら不穏な予感が……


来年のエイプリルフールは、何かしらのネタをやりたい気はしています。

(この物語でなのか、別の物語でなのかはさておき)

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