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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第1部 異世界グラスティアの異変 第3章 南方編
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第56話[Dual Site] 水路と劇場

<Side:Souya>

 さて、把握と判断を行うとするか――


 アスポートの距離……ギリギリ。

 見張りの視界……積まれた空き箱である程度遮られる。

 船……人影なし。

 操縦……アルチェムが可能。

 魔法感知装置……設置されていないため問題なし。

 

 ――よし! いけそうだ!

 

「侵入する方法だが、1つ思いついたぞ」

 俺は、そう皆に告げる。

 

「どういった方法なのです?」

 そう問いかけてきたクーに対し俺は、

「劇場内の桟橋にある船を奪ってこちらに接岸。この空き箱を運び込むフリをしつつ中に侵入する。魔法感知装置はこちら側にはないみたいだから、桟橋に辿り着いてしまえば、あとは魔法で姿を隠してしまえば大丈夫だろう」

 と、そんな感じで軽く侵入方法――流れを説明する。

 

「アポート……いえ、アスポートを使うのですか?」

 今度は室長がそう問いかけてくる。

 そんな風に言ってくるという事は、俺のやろうとしている事に既に気づいているのだろうな。

 まあ、さすがは室長……といった所か。

 

「はい。最初は船をアポートしようかと思ったのですが、あのくらいの大きさの物を引き寄せるのは少々厳しいですし、出来たとしていも、いきなり船がワープしてきたりしたら、警備の連中に気づかれてしまう可能性がありますからね」

 俺が室長にそう話していると、アルチェムが眼鏡のテンプルを軽く2回叩き

「なるほど……。つまり、倉庫の時と同じように……私が向こうへ渡り、船をこちらへ移動させればよいのですね……?」

 と、尋ねてきた。どうやらこちらも、俺のやろうとしている事を理解したようだ。

 

「ああ、その通りだ。……ただまあ、今回は船の移動というのが追加されるから、念の為に護衛要員が必要になるが……」

「でしたら、お任せくださいなのです! きっちりアルチェムを守るです!」

「ふむ……。クーレンティルナ君だけだと、女性2人で船を動かす事になるので、怪しまれる可能性がありますね。私も同行いたしましょう」

 俺の言葉にクーと室長がそう告げてくる。

 たしかに、このふたりが適任と言えるかもしれないな。

 

 という事で、早速行動に移す俺たち。

 まずは、アスポートで3人を順番に桟橋まで飛ばす。

 

 正確に言うと、停泊中の船に、だな。そこが俺のアスポートで届くギリギリの範囲だったともいう。もうちょっと停泊している位置が奥だったらヤバかったな……

 

                    ◆


<Side:Kou>

「上手く船に着きましたね」

「はいです。さすがは蒼夜さんなのです」

 私の言葉に、クーレンティルナ君が首肯します。

 

「それで、船の方はいけそうです?」

「……これなら、問題ありませんね……。幸い、ロックもかかっていません……。すぐにでも動かせます……」

 クーレンティルナ君の問いかけに対し、様々な色の光を発するプレート――操縦盤を指でポンポンと叩きながらそう返してくるアルチェム君。


「まあ、その操縦盤の根幹を作ったのは私なので、ロックされていても解除するのは簡単ですけどね」

 そう私が告げると、アルチェム君が驚きの表情でこちらを見て、

「え……? これを作ったのは、コウ様だったのですか……?」

 そんな風に言ってきました。

 

「室長さんは、レビバイクや高速列車などの、魔煌の力で動作する乗り物を幾つも作っているのです!」

 人差し指をピッと立ててそう告げるクーレンティルナ君。

 

「……そうだったのですか……。凄いです……」

 アルチェム君が何やら尊敬の眼差しを向けてきます。

 私は、その眼差しに少し気恥ずかしくなってしまいました。

「あー、まあ……全部ではありませんけど、結構な数を作りましたね……」

 

 え、えーっと……そこまで尊敬されるような事ではないというか……

 こちらの世界に来て学んだ魔煌技術が、なかなかに面白くて、ついつい色々作ってしまっただけなんですよね……。

 まあ……正直、やりすぎたと思っています。

 

 ちょっと作りすぎたのと、エステルや師匠に自重しろと言われたので、最近は作っていませんが、そろそろ何か新しい物を作りたい気分なんですよねぇ……

 でも、エステルや師匠に自重しろと言われるのは目に見えていますし……

 

 あ、そうです! エステルを巻き込んで一緒に作れば良いのではないでしょうか!

 レビバイクのレースが終わったら話をしてみましょう!

 

 ――などというような事を思案し、さらに結論まで出している間に、船は動き出していました。

 

「見張りの人がこっちを見ているようなのです」

 クーレンティルナ君が小声で囁いてきました。

 

 ふむ……たしかに入口の見張りのひとりが、こちらに顔を向けていますね。

 おそらく、船が動いている事に関心を持ったのでしょう。

 

「まあ、気にせずこのまま船を接岸させてしまいましょう」

 という私の言葉に従い、アルチェム君が船を蒼夜君たちの居る方へと近づけます。

 

 ……

 …………

 ………………

 

「上手く行ったのです!」

 接岸した所で、クーレンティルナ君が蒼夜君に言葉を投げかけます。

 

「ああ、グッジョブだ。って事で……次は、この積み上がっている空き箱を運び込まないと、だな」

 蒼夜君がクーレンティルナ君に対して頷き、そう言いながら積み上げられた空き箱をサイコキネシスで持ち上げました。

 

 手で持ち上げたように見えますが、手は添えているだけです。

 さすがにこの積み上がった空き箱を手で持ち上げてバランスを取るのは難しいですからね。

 しかし、先程のアスポートもそうでしたが、本当に蒼夜君のサイキックが全体的に強化されていますね……。一体どういう原理なのでしょう?

 

 と、そんな事を考えつつ、横目で見張りの居る方へ視線を向けると、先程の見張りが顔を正面へと戻すのが見えました。

 どうやら単なる荷運びの最中だと思って、関心を失ってくれたようですね。

 

 さて、このまま速やかに侵入してしまうとしましょうか――

 

                    ◆

 

<Side:Souya>

 こうしてあっさりと劇場の中へと侵入した俺たちは、姿を隠す魔法を使って劇場内で作業していた者たちの横をすり抜けつつ、適当な空き部屋に入った。

 

「たしかに魔法感知されなかったのです! でも、なんで装置がないです?」

「おそらく、荷運びや作業で、身体強化魔法や魔煌具を使うからだろうね。魔法感知装置なんて設置していたら、反応しまくっちゃうし」

 クーの疑問に対し、設置されていない理由の推測を述べるカリンカ。

 たしかにそれが理由だろうな、と俺も心の中で同意する。

 

「……とりあえず中に入る事は出来ましたが……ここからどう動くか……ですね」

 いつの間にか眼鏡を外したアルチェムがそう告げると、エステルが腕を組みながら提案を口にする。

「――ここは、再び二手に別れるのが良いのではなかろうかの?」

 

「はい、リズさんを探す組と地上へのルートを探す組、ですね」

 エステルの言葉に頷き、そんな風に言うアリーセ。

 

「ああ、それが妥当だな。とすると……リズを探す方の組に、アルチェムと室長が居た方が良いだろうな」

「うんそうだね。あと、エステルさんもかな? セキュリティ装置が設置されていた時に、それに対して確実にミスなく対処出来る人が必要だし」

 俺の言葉にカリンカがそう返し、首を縦に2回振った後、

「逆に地上へのルートを探す組には、ソウヤさんと私が居た方がいいかな? 私も姿を隠す魔法、使えるようにしてあるし」

 と、俺の方を見てそんな風に言葉を続けてきた。

 

「カリンカが居た方が良いのはまあ分かるけど……俺?」

「そうそう、もし障害物とかあったら退かせる要員が必要だし」

「ああ、なるほど……そういう事か」

 疑問に対するカリンカの説明に納得して頷く俺。

 

「私は衰弱していた時のために、リズさんを探す方に入りますね」

「でしたら、私は地上へのルートを探すのを手伝うのです!」

 というアリーセとクーの発言により、編成が確定した。

 

 つまり、リズ組が……室長、エステル、アルチェム、アリーセの4人で、脱出路組が……俺、カリンカ、クーの3人、というわけだな。

 

「――よし、それじゃ行動開始といこうか」

 俺がそう告げると、皆が首を縦に振って立ち上がる。

 

 さて、俺たちは地上へ繋がっている通路――脱出路探しか。

 一体どこにあるのやら……だな。

最近は長い話が多かったので、相対的に短く感じますね……

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