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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第1部 異世界グラスティアの異変 第3章 南方編
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第25話 救援、撤退、思案

「はあぁ!? 次元境界を越えるゲートだとぉぉっ!? 特異点同士を利用して、ようやく開けるようなゲートが何でこんな所に開きやがるんだよ!?」

 銀の王(しろがねのおう)がディアーナの開いたテレポータルを見て、理解出来ないと言わんばかりの――というか、完全に理解不能といった感じの困惑に満ちた声を上げる。

 

「あの奇妙なー、甲冑のような物をー、(よろ)った人は何ですー!?」

「敵です! とりあえず撤退します!」

 首を傾げて問いかけてくるディアーナに対し、そう告げる俺。

 

「よくわかりませんがー、了解ですー!」

 ディアーナはそう言うと同時に、テレポータルと俺たちとの間にいるラゾス=ディラード目掛けて6つの光球を生み出し、それを飛ばす。

 

 そして、変則的な動きで襲いかかる6つの光球をまともに食らったラゾス=ディラードが、粉々になって砕け散った。

 

 ……が、やはりと言うべきか、あっさり再生する。


 ディアーナの力でも倒すのは難しいのだろうか? と、そう思った所で、

「おやー? 随分と厄介な存在ですねー。でしたらー、こうしますかねー」

 そんな事を言って新たな光球を生み出すと、それをラゾス=ディラードの真上へと飛ばすディアーナ。


「浄化ですー!」

 という声と共に、光球から放射状に広がるオーロラのような光が、ラゾス=ディラードへと照射される。

 

「ギギャァァァアアアァァァ!」

 光に完全に包み込まれる形となったラゾス=ディラードの悲鳴と思しき声が響き渡る。

 しかし、それもあっという間に聴こえなくなり、それと同時に光球からの照射が停止した。


 ――と、そこには何もなかった。

 そう……ラゾス=ディラードの姿は、最初からそこにいなかったかの如く、きれいさっぱりと消え去っていたのだった。

 まさか……一撃で完全消滅させたのか?


「うええぇっ!?」

「ほわわぁっ!?」

 朔耶とクーが驚きのあまり、素っ頓狂な声を上げる。

 

 俺も今のが何なのか気になるが、今は後回しだ。

 俺はセルマに駆け寄ると、すぐさまアスポートを実行。

 テレポータルの繋がる先――つまり、ディアーナの領域へとセルマを転送する。

 

「その人の治療をお願いします!」

 俺はそう言いながら、テレポータルへと走る。

 

 驚きの声を上げて硬直していた朔耶とクーも、俺の声に我に返ったのか、リンと合流して邪獣を1体撃破すると、そのままテレポータルへと向かっていく。

 

「ラゾス=ディラードを一撃で消すとか想定外にも程がありすぎんだろぉ!? ああっ!? だからよぉ! そんな奴を逃がすわけにはいかねぇよなぁ!? おらぁぁっ! まとめて喚ぶぜぇぇっ! ――召喚っ!」

 銀の王が腕を俺たちの方へと突き出し、言い放つ。

 

 ……が、何も現れない。

 

「……はあ? なんだこりゃ……? どうなってやがる?」

 銀の王が腕を見ながら呟くように言う。

 視線を向けてみると、例によって兜の茜色の光が赤色になっていた。

 

「空間の歪みを感じたのでー、次元干渉阻害結界をー、展開させて貰いましたー」

 なんて事を言うディアーナ。

 

 あー、そう言えばアルミナの地下神殿遺跡を探索した時に、そんなの使ってたな。

 あれ、召喚の類にも有効なのか。

 

 そんな事を思っているうちに、テレポータルへと到着。

 ほぼ同時に朔耶たちが駆け寄ってくる。

 

 そのまま俺たちがテレポータルに飛び込んだ直後、

「次元干渉阻害結界……だぁ? ちぃっ、とんでもねぇモンをさらっと使いやがって! けどよぉ……そいつのせいで召喚出来ねぇってんなら、他の手を使うまでなんだぜぇぇっ! うぉらぁぁっ! こいつを食らいやがれやぁぁっ!」

 銀の王は怒りに満ちた叫びと共に、どこからともなく2本のメイスを取り出す。

 そして、メイスの先端部分をこちらへと向けてきた。

 

 ……って、待て。あれ……メイスじゃなくね?

 そう思った瞬間、爆音と共にメイスの先端部分がこちらへと超高速で飛んでくる。

 

 ――はあっ!? マジかよ!?

 

 俺はそれをサイコキネシスで強引に停止させ、そしてそのまま押し返す。

 

「んなっ!?」

 押し返されるとは思わなかったのが、絶句する銀の王。

 その銀の王にメイスの先端――否、弾頭が迫り……そして炸裂した。

 

「ぐがあああぁぁぁあああぁぁぁっ!?」

 銀の王が絶叫しつつ巻き起こされた爆風に吹き飛ばされ、壁に激突する。


 ……だが、あの至近距離で爆発を食らってもなお致命傷ではなかったのか、立ち上がってこようとする銀の王。っていうか、どんな耐久力だよ……

  

 と、そこでテレポータルが閉ざされた。

 銀の王の姿が視界から消え、代わりにディアーナの領域が視界に広がる。

 

「ふぅ、なんとかなったか……」

「あんな所に銀の王がいるとは想定外だったぜ……」

 安堵の息を漏らした俺の横でそんな事をリンが言う。

 

「たしかに、あれは想定外だな」

「ああ、しかも倒したかと思ったら、変なものを振りまいて、そのせいでセルマが――」

 俺の言葉に対してそこまで返した所で、ハッとするリン。


「そうだ! セルマだ! ディアーナ様、セルマを助けてくれ! じゃなくて、助けてください!」

 既にセルマの状況を確認していたディアーナの方に向かってそう言いながら、リンが駆け寄っていく。

 

「これはー、魔煌異常と呪いの類ですねー。まあ、問題ありませんー。まずは――」

 ディアーナがリンに対して説明しながら、セルマに術式を複数重ね始める。

 ふむ……。どうやらセルマの方は任せておいて大丈夫そうだな。さすがはディアーナというべきか。

 

 俺の横にやってきた朔耶が、その様子を見ながら胸に手を当てて息を吐き、

「あっちは大丈夫そうだね……良かった」

 そう言った後、俺の方を見て、

「――ところでソー兄、銀の王が最後に使ってきたあれって……ロケットランチャーだよね?」

 と、そんな風に尋ねてきた。


「ああ。まあ、正確に言うならロケットランチャーっていうよりは、対戦車擲弾(たいせんしゃてきだん)発射器(はっしゃき)――いわゆるパンツァーファウストとかそういった類の代物に近い感じだったけどな」

 以前、室長から見せて貰った本に載っていたそれを思い出しながら語る俺。


 パンツァーファウストという言葉にいまいちピンと来なそうな朔耶。

 ……まあ、俺も室長の本を見て、話を聞いていなかったらわからない気がする……


 どう説明しようかと思っていると、クーが、

「な、何故あのような物騒な代物を銀の王が持ってるです? というか、こちらの世界には銃火器の類は存在しないはずなのです」

 と、そんな事を言ってくる。……あのような?


「え? クーちゃん、パンツァーファウストがどういう物なのかわかるの? 私、名前は知ってるけど、それ以外――どういう形状なのかとか、そういうのはさっぱりなんだけど」

「はいです。知ってるのです。室長さんに見せて貰った本に載ってたです」

 ああ、そう言えばクーもあの本読んでたな……


「な、なるほどね……。ま、まあそれはいいとして、どうして銀の王があんな物を持ってたんだろう?」

「それに関してはさっぱりだな。……ただ、室長やアリーセたちが関わったエクスクリスの学院長がキメラを生み出していた事件で、その首謀者である学院長は、何者かにスナイパーライフルで狙撃されて口封じされた。という事は……だ」

 俺は朔耶の疑問にそこまで答えた所で、朔耶の方へと顔を向ける。


 朔耶が俺の言葉をヒントに、導き出した答えを口にする。

「えーっと……つまり、銀の王や狙撃されたその学院長と繋がりのある組織や人間によって、銃火器が生み出され、そして与えられている……と?」

 それに対し、俺はそういう事だと言って頷く。

 

「なるほどなのです。けど、この世界には銃火器のような遠距離からの物理的な攻撃――どころか、爆風や爆炎すらも防ぐ魔法があるです。作ってもあまり有用だとは思えないのです」

「ああ、そういう魔法がある事は聞いた。そして、たしかに魔法が使える場所であれば微妙な代物だが……今のローディアス大陸のように魔法が使えない場所であれば話は変わる」

 

 俺はクーに言葉を返しつつ心の中で呟く。

 ――この世界で銃火器の使い勝手が微妙なのは、あくまでもそれを防ぐ魔法が存在するからであり、魔法が使えなければ地球同様、銃火器は非常に強力な武器となる……と。

 

「むむう……。言われてみると、何故そんな事が出来るのかという大きな疑問はあるですけど、銀の王は大陸1つ丸ごと魔法使用不可能にしてしまえるです。自ら魔法を使えない状況下に出来るのであれば、たしかに圧倒的に有用なのです」

 と、考え込みながら納得の言葉を紡ぐクーに続くようにして、朔耶が顎に手を当てながら、疑問を口にする。

「……銀の王って何者なんだろうね? あの甲冑……どうみてもパワードスーツとかそっちに近いフォルムだったし」

 

「――クー、1つ気になる事があるんだが、機械や金属と関係のありそうな名前の異界って伝わっていたりしないか?」

「機械や金属……です? ううーん……」

 俺の問いかけに対し、こめかみを指で撫でながら考え込むクー。

 

「もしかしてソー兄、銀の王が機械生命体的な存在で、どっかの異界から来たとか考えてる?」

 なんて事を言ってくる朔耶。

 

「ああそうだ。冥界、混沌界と2つの異界がある時点で、他にも異界があるのは間違いない。であれば、そういう存在――機械生命体のようなものが住む異界があったとしても、おかしくはないからな。……ってか、そう聞いてくるって事は、朔耶も俺と同じ事を考えているんじゃないのか?」

「あ、うん、その通り。私もそう思ったんだ。……っていうよりさ、そう考えた方がしっくりくるんだよねぇ……色々と」

 俺の言葉に対し、そんな風に返してくる朔耶。


 と、そこでクーがなにかを思い出したのか「あっ!」という声を上げる。

 俺と朔耶が顔を向けると、クーは、

「黒い海と鈍色の空が広がる、鋼を鎧いし鬼神たちの住まう異界……鬼哭界(きこくかい)――」

 そう呟くように俺たちに告げてきた――

さらっと登場する3番目の異界です。


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