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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第1部 異世界グラスティアの異変 第3章 南方編
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第24話 襲い来る魔物たち

 再生するラゾス=ディラードを見ながら俺は、

「あんなもん、どうやって倒せっていうんだ……?」

 と、独りごちりつつ、朔耶たちの方へと救援に向かう。

 

 ――否、向かおうとしたが、トカゲもどきの魔物――オルドラ―サがその俺の動きを阻止するように立ちはだかってきた。

 

 くっ、先にこっちをどうにかしないと駄目か……っ!

 そう考え、オルドラーサに視線を向け直す。

 

 先に動いたのはオルドラーサ。

「ギシャァッ!」

 という叫び声と共に、その口から火球が吐き出された。

 

 だが、その程度ならサイコキネシスで止められるというものだ。

 ……いやまてよ? そうだ、リンの応用でいくか!

 

 突き出した手で火球を受け止め、そしてそのまま左方向へと曲げて押し返す。

 と、火球はオルドラ―サの脇をすり抜け、後方から接近してきていたカーヴェロスの三ツ首の真ん中の奴に激突する。

 

「ガアアァァッ!?」

 不意打ちだったのか、まともに食らったカーヴェロスが、直撃した顔を震わせ、動きが鈍る。

 

「そこだっ!」

 いつの間にかオルドラ―サを大きく迂回する形でカーヴェロスの真横に移動していたリンが盾を振るい、右側の顔に叩きつける。

 

「ギイイイィィィッ!」

 カーヴェロスが前足を大きく持ち上げて叫びを上げる。それによって完全に動きが止まった。

 

「せいっ!」

 リンが更に盾を振るい、今度は左の顔に盾を叩きつけた。

 

 その動きに呼応するかのようにして、後方へと跳躍したオルドラーサが、サソリの如き尻尾を持ち上げたかと思うと、勢いよく床へと振り下ろす。……いや、突き刺す。

 

 んん? 俺は接近してきていたクロンガッシャに対し、スフィアでの魔法攻撃――光線による攻撃を仕掛けつつ、尻尾の動きを見る。

 と、リンの足元――床にひび割れが走る。……って、そういう事かっ!

 

 俺は即座にアポートを使い、盾でカーヴェロスを攻撃中のリンを引き寄せる。

 刹那、リンのいた場所に、槍の如き鋭さを持つサソリの尻尾が穿(うが)たれる。

 

 ふぅ……間に合ったか。

 やっぱり、そういう攻撃を仕掛けてくるよなぁ……

 

「うおっ! あいつ、あんな事も出来んのかよ!? ソウヤ、助かったぜ!」

 リンは俺に対して礼の言葉を口にすると、オルドラーサの方へ顔を向け、

「……それで、なんだが……。あのトカゲヤロウのツノの近くまで、私を飛ばせないか?」

 なんて事を続けて問いかけてきた。

 

「可能だぞ」

「マジか! んじゃ、魔法の発動準備が完了したら即やってくれ!」

 俺の回答を聞き、そう告げると同時に、リンが魔法の発動準備に入る。

 数秒ほどで発動準備が完了。俺はアスポートを実行する。

 

「くらいやがれっ! 《蒼冷の錬水刃》」

 アスポートで転移したリンが言い放ち、盾を振るう。


 同時に魔法が発動。盾の軌道に則する形で、螺旋状に渦巻く青い光線のようなものが発射され、オルドラーサの角が切断された。

 って、これは……ウォーターカッター? それの魔法版?

 

「ガギアアアァァァッ!」

 切断された部分から赤いオーラのようなものを放射しながら、苦悶の咆哮を発するオルドラーサ。

 

 のたうち回るオルドラーサに向かって、リンが空中から盾による乱打を仕掛ける。

 と、盾になんらかの魔法がかかっているのか、盾を叩きつけられたところが瞬時に凍りついていく。……もしかしてさっきの魔法、攻撃と同時に自身を強化する……のか?


 まあ……その辺はよくわからないが、とりあえず間違いないのはチャンスだという事だ。

 ――俺は即座に氷属性のスフィアを浮かべ、高威力状態の冷気を放射。

 リンと俺の多重攻撃を受けたオルドラーサが、瞬く間にその動きを止め、床へと倒れ伏す。

 ……よし、まずは1体倒したか。

 

 と、そう思ったのも束の間。

 今度はクロンガッシャとカーヴェロスが同時に動いた。

 目の前で1体倒されたのを見て連携しようと考えたのか? 思ったより知能があるな。

 

 空中にいるリン目掛けて雷撃を放つカーヴェロス。

 引き寄せようとするも、その瞬間、クロンガッシャの手に生み出された氷の槍が俺の方へと飛んでくる。


「くっ!」

 俺はその氷の槍をサイコキネシスで止める。

 

 そのままの状態でリンの方をみると、リンは空中で盾を構えていた。

 雷撃が直撃し、その勢いに押される形で壁まで吹っ飛ばされるリン。

 

「ぐあぅっ!」

 壁に背中から激突し、その衝撃で盾を手放したリンが床へと落下してくる。

 

 氷の槍をサイコキネシスで投げ返した俺は、急いでリンの方へと走り、アポート。

 どうにか床に叩きつけられる前に引き寄せる事に成功する。

 

 そこへ氷の槍を掴み取ったクロンガッシャが跳躍しながら襲いかかってくる。

 ……即席の連携は悪くなかったが、その跳躍は悪手だ。

 俺は、先程と同じく高威力化したスフィアで、今度は火炎魔法を浴びせてやる。

 

「グガアアアアアァァァァァッ!」

 燃え上がりながらもなお、こちらへと迫るクロンガッシャ。

 幸いカーヴェロスは俺の攻撃で警戒したのか後方へと距離を取ったため、間近にいるのはこいつだけだ。これを(しの)げば……! だが、どう(しの)ぐ……!?


 その直後、リンが床に転がる自身の盾に視線を向け、言葉を発する。

「ゲホッ! ソウヤ……あれを……飛ばせ!」

 

「わかった!」

 俺はそう短く返すと、即座にサイコキネシスで盾を浮かせ、そのままクロンガッシャの方へと飛ばす。きっと、リンに何か考えがあるんだろう。

 

 刹那、盾が例の光の膜に覆われる。

 ……やはりか。良く分からんがさっきのように何らかの魔法が発動したようだな。

 そう心の中で納得した直後、クロンガッシャが盾――光の膜に接触し、激しいスパーク音と白い火花を散らす。

 

「オオオオオォォォォォンッ!」

 恨みがましそうな叫びを上げつつ、空中で盾に阻まれたクロンガッシャが床へと落下。そのまま動かなくなった。

 

 よし、これで2体目!

 心の中でそう叫んだのとほぼ同時に、ラゾス=ディラードを中心に4つの銀色の杭が床に落下した。

 ……って、これってたしか、さっきセルマが使っていた銀杭のなんちゃら……とかいう魔法だよな。……誰が発動したんだ?

 

 そう思って周囲をよく見てみると、セルマが這いつくばりながら魔法を発動させているのが目に入った。少しは回復薬の効果があったのだろうか? 

 いや、でもそれにしては……

 

 と、そうこうしている内にセルマの魔法が炸裂し、ラゾス=ディラードが床に倒れ込んでそのまま動きを止めた。どうやら気絶させる事に成功したようだ。


 ……ってか、あんな骨の魔物でも気絶ってするんだな。なんだか意外だ。

 などという感想を抱きながら、改めてセルマの方を見ると、

「倒すのが……困難なよう……でしたら……止めて……しまえば……」 

 苦しそうにそう告げて、再び倒れ伏した。


 ……って、それを眺めている場合じゃないだろ、俺っ! 

 慌てて駆け寄ると、朔耶が「あっちの魔物は任せて!」と言いながら、俺と入れ替わる形で、アル、そしてリンと共にカーヴェロスへと向かっていく。 

 

 セルマのもとに辿り着いた俺は、容態を素早く確認する。

 ……とりあえず呼吸も脈も弱いがあるな。ふぅ、やれやれ……

 安堵して一息つくも、安心出来る状態ではない事に変わりはない。

 ……ディアーナのテレポータルはまだなのか……? そもそもちゃんと届いているのか?

 

 と、不安にかられた所で、カーヴェロスの断末魔の叫びが響き渡る。

 どうやら朔耶たちが倒したようだ。さすがだな。

 

「ほぉ? あれだけの魔物を全て倒すたぁ。なかなかやるじゃあねぇか。さすが公都の要石(かなめいし)の破壊を阻止してくれやがっただけはあるぜぇ」

 銀の王(しろがねのおう)が拍手をしながら、そんな事をのたまってきた。……公都の要石(かなめいし)

 

「ああ、やはりあの襲撃は貴様だったか」

 リンが銀の王を睨みつけながら言う。


 どうやら要石(かなめいし)に関して何か知っているみたいだな、リンは。

 まあ……公女だし、そのくらい知っていても別におかしくはないか。


「そうさ。お陰で少しばかり計劃(けいかく)が遅延しちまったぜぇ」

「そう言いながら楽しそうだぞ? しかも、高みの見物とは……さっきと大違いだな」

 銀の王の言葉に対し、俺が思った事をリンがそのまま口にした。


「ククッ、ああそうだなぁ。たしかにその通りだぜぇ。まあ……なんだぁ? さっきはさっき、今は今。さっきと一緒にしないでくれや」

 拍手を止め、肩をすくめてそんな事をいう銀の王。


 ……うん? 今の言い回し、なんだか妙に気になるぞ……

 俺は思考を巡らせようとするが、続く銀の王の言葉でそんな余裕はなくなってしまう。

「つーわけで、まだまだ高みの見物といくぜぇ! ――召喚!」

 

 その宣言通り、再び冥界の悪霊と混沌界の邪獣が召喚されたのだ。

 しかも、先程よりも数が多い。


 って、ラゾス=ディラード2体かよ……。厄介さが半端じゃないぞ……

 しかも、新顔――額から伸びる曲がった3本の角を持つ猪のような体躯で、背中が赤い亀の甲羅のようになっている……そんな魔物もいるし。――なんなんだ? あの魔物。


「さ、さすがに厳しいのです」

 クーがそう言った通り、たしかにこの数はまずい。

 特にラゾス=ディラードが2体いるというのが、実にまずい。

 

 スフィアの最大出力で放てば、ラゾス=ディラード以外の大型は一掃出来るかもしれないが、そうすると残る手札は霊幻鋼の剣と呪紋鋼のナイフのみになってしまう。

 次にまた大型を召喚されたら、もう手がない。

 それに、その2つではラゾス=ディラードをどうにか出来る気がしない。

 

 ……が、やるしかないか。

 そう決断し、2つスフィアを最大威力状態にし、魔法を放つ。

 

 俺から一番近くにいた新手の――名称不明の魔物が、その魔法攻撃をまともに食らい、文字通り跡形もなく消し飛ぶ。

 魔法に気づいて、なにやら防御障壁みたいなものを展開していたが、問題なくぶち抜けたようだ。

 

「クハハッ! 頑丈さがウリのファノケロンを一撃で消滅させるたぁ、とんでもねぇなぁ、オイ!」

 銀の王の笑い声が降ってくる。本当、こいつは性格変わりすぎだろ……

 どうでもいいが、今の魔物は『ファノケロン』とかいう名前みたいだな。

 

 朔耶たちもまた、邪獣へ攻撃を仕掛けるが、ラゾス=ディラードに妨害され上手く動けない。……やっぱり、ラゾス=ディラードが厄介すぎるな。

 

 いっそ、ラゾス=ディラードに最大威力状態でスフィアの魔法を撃ったら消し飛ばせるのだろうか?

 ……だが、あの大きさを完全に包み込むほどの魔法となると……

 

 俺は久しぶりの思考加速状態に入る。

 ……しかし、どうにも『可能である』という結論が出ない。

 というのも、どうやってもあいつを包み込んで消し飛ばせるほどの攻撃範囲を得られる手段がないのだ。……ならどうすれば?

 他の手段を考えるためのヒントがないかと思い、周囲の状況を確認しようとした所で、視界の端にゆっくりと大きくなる渦のようなものを捉えた。

 

 っ! あれは……っ!

 

 思考加速状態を解除し、視界の端に見えた渦へと視線を向ける。

 と、その直後、待ち望んだ声が俺の耳へと届いた。

 

「ようやく繋がりましたー。……って、なんですかー!? この状況はー!?」

久しぶりの思考加速です。

ちなみに、第3章でのローディアス大陸側の話はあと少しで終わります。

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