表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第1部 異世界グラスティアの異変 第3章 南方編
150/764

第22話 VS銀の王

 何か質問するようにと、皆に視線で示された俺はしばし思案。

 そして、考えがまとまった所で口を開き、

「なら、聞きたい。――お前はローディアス大陸で何をしようとしているんだ? 大陸を封鎖したり、国を奪ったり、冥界への道を開いたり、大公家の血を引く者を捕まえたり殺したりする事が目的ではないのだろう?」

 纏めて一気にそう問いかけた。これでも質問としては1つだからな。

 

「……然り。それらは全て大いなる地への竜の帰還が為。――計劃(けいかく)の1段階に過ぎぬ。我が目的は計劃(けいかく)の完遂、成就(じょうじゅ)。大いなる地への竜の帰還なり」

 そんな事を言って返してくる銀の王(しろがねのおう)

 

 大いなる地? 竜の帰還? 大いなる地ってなんだ……? 竜ってなんだ……? まさか、その『竜』は、竜の血盟の『竜』と何か繋がりがあるのか?

 

 銀の王に告げられた内容について考え込んでいると、 

「回答は以上である。我、代価として汝らが(むくろ)を要求せん」

 なんて事を言ってくる銀の王。おいおい、(むくろ)って……

 

「ちょっ!? なにそれ! まるでぼったくりの押し売りみたいなんだけどっ!?」

 銀の王の言葉に対し、そう抗議の声を上げる朔耶。

 ……それに関しては俺も同感だ。唐突すぎてわけがわからない。


 が、銀の王は聞く耳持たずといった様子で、クリスタルと思われる物が先端に取り付けられているワンド――短い杖――を構える。……あれが、銀の王の武器?

 と、そう思った直後、クリスタルの部分から、銀の王の身の丈よりも長い光の刃が生み出された。まるで、シャルロッテの技みたいだな……っ!

 

「――まずは、その生命を刈り取る」

 その一言と共に、その光の刃を振るう銀の王。

 いや、まずはもなにもないだろう!? 普通に殺すって事だろ、それ!


 回避……は、全員間に合うか怪しい。なら、止めるしかないかっ!

 俺は光の刃に向けてサイコキネシスを使う。


 ぐ……っ!? ぐ……おお……っ!?

 とてつもなく重い衝撃が手を伝い、こちらを押し込もうとしてくる。

 駄目だ……これは。押し返せる気が……しないっ!


「みんな、しゃがめ!」

 俺の声に反応して、皆がその場に伏せる。

 それを見て、俺も伏せながらサイコキネシスを解除。というより、押すのをやめる。

 

 直後、空気が震え、横薙ぎに振るわれた光の刃が頭上を掠めていく。

 こいつの攻撃……触れただけで即死しかねないな……

 

「情報を教えるだけ教えて殺す気満々かよ。冥界だけに冥土(めいど)の土産ってか? まあ、何も仕掛けて来ないはずはないと思っていたけどさ」

 俺はあえて、そんな軽い言葉を投げかけて挑発してみる。

 

 が、銀の王は静かに、

「質問への回答は、計劃(けいかく)進行の時を得るためである」

 と告げてきた。


 なるほど、俺たちの質問にわざわざ答えていたのは、要するに何かの時間稼ぎのためであったって事か。

 ……けど、だったら最初から攻撃を仕掛けてくれば良かったんじゃ……?

 なんだってわざわざ質問に答えて、それで時間稼ぎをするだなんていう良くわからない方法を選んだんだ? まあ、俺たちは情報を得られたからいいんだけどよ。

 

「故、これ以上、時を得る必要なし」

 そう言いつつ、今度は光の刃を勢いよく振り下ろす銀の王。

 狙いは……リンか!

 

 そう認識した直後、キィンという甲高い金属音が響く。

 音のした方に顔を向けると、リンが盾で光の刃を受け止めているのが見えた。

 

「ぐうう……っ! な、なんだよ、この力……っ!」

 苦しげな表情で狼狽するリン。

 盾の光の刃が直撃している部分にヒビが入っており、このままでは破砕されそうな勢いだった。


 ――アポート!

 

 アポートでリンを引き寄せると同時に、押し止める力がなくなった光の刃が床に衝突し、床に大きな爪痕を残す。

 

「今のは転移か何かか? ともあれ、助かったぜ」

 リンはそう俺に言った所で一度盾を確認し、それから再び言葉を発する。

「対魔法特化の防御魔法を付与してある盾が、こうも簡単に押し負けるとはな……」


「もしかしたら……あれも銀の王の使う飛行艇と一緒で、魔煌技術――魔法じゃない『何か』で作られている物なのかもしれないな」

「なるほど……たしかにありえてもおかしくねぇな、そいつは」

 俺の推測に頷き、そう返してくるリン。

 

「他者転送……? その力、未知であり、興味深い」

 そう口にすると、光の刃を俺以外の皆に対して連続して振るう銀の王。

 なるほど、俺が引っ張る事を見越してそう来たか。

 

 クーは犬狼化してあっさり回避したが、セルマと朔耶は回避が怪しかったので順番にアポートで引っ張る。

 銀の王の思惑に若干乗ってしまっような感じがするが、このくらいなら大した問題でもないだろう。

 それに、ここでアポートを隠そうと使わずに、セルマと朔耶が攻撃をまともに受けたりでもしたら、アポートが使える事の意味がないというものだ。

 

「あ、ありがとうございます」

「助かったよ! ありがと!」

 

「変身? 同じく未知なり。……ブラックドック・ファクター反応。――シンクロレート……マキシマム。――想定外なり。されど、得心せん」

 再び兜の茜色の光が赤色に変わったかと思うと、銀の王がそんな事を言った。

 そんな事まで解析出来るのか……?

 

「だったら、これもどうかな!」

 朔耶がそんな事を言い放ちながら、銀の王の方へと接近しつつソーサリーグレネードを発射。

 そこは更に召喚したアルが雷撃による攻撃を仕掛ける。

 

「ぐっ!?」

 攻撃が直撃し、片膝をつく銀の王。

 身に纏っている鎧からバチバチと火花が飛び散る。

 ……やっぱりあの鎧、機械――パワードスーツの類なんじゃ……

 

「ダメージは中程度以上……。――未知多数、危険と判断せん」

 銀の王が、もう一発放とうとする朔耶めがけて光の刃を振る……じゃない! 投げつけた!? 狙いは……アルの方か!

 

「アル!」 

 朔耶が呼びかけると同時に、アルは小さくなる事で飛来する光の刃を回避。

 

 が、ほぼ同時に銀の王が跳躍。俺の方へと飛び蹴りを放ってくる。

 なるほど、こっちを狙ってきたか……っ!

 

 だが、俺は回避せずにそのまま待ち構える。なにしろ好機でもあるのだから。


「ぬ?」

 待ち構える俺に不審の声を発する銀の王。

 

 しかし、遅い。

 ――直後、光の刃が銀の王を貫く。

「ぐうっ!?」


「今なのですっ!」 

「がふっ!? があぁっ!?」

 銀の王が光の刃によって貫かれたその直後、犬狼姿のクーが真上から急降下。

 銀の王を勢いよく床へと叩きつけ、さらに光の刃でそのまま床へと縫い付ける。


 そう、光の刃――ワンドが投擲された事によって奴の手から離れたのであれば、それを俺のサイコキネシスで操る、というのは造作もないわけで……

 その事を知らない無警戒の銀の王に直撃させるのは容易いというものだ。

 

「続けてこちらもです!」

 いつの間にか魔法の発動準備に入っていたセルマが、俺たちの攻撃に続く形で魔法を発動。

 銀の王を中心として、床に金色の十字が出現する。

 

「――《金煌の十字烈閃》っ!」

 その背妻の声と共に、まるで噴火した火山のマグマの如く、金色の十字から金色の光が噴き上がり、

「ぬぐおああぁぁあああぁぁぁっ!?」

 という叫びと共に光の中へと飲み込まれる銀の王。

 

 ――金色の光が収まると、銀の王は動かなくなっていた。

 

「倒した……のか?」

 リンがそう言って近づく。

 

「思ったよりも強くなかったような……」

 朔耶がそんな事を言う。

 

「っ! 公女殿下っ!」

 なにかに気づいたらしいセルマが、慌てた様子でリンへと近づく。

 と、同時に動かなくなった銀の王から、眩いばかりの閃光が放たれた。

 

「うおっ!?」

「うわわっ!?」

「ひゃあっ!」


 俺、朔耶、クーの3人が驚きの声を上げた直後、閃光は紫色をした靄へと変わり、セルマとリンを飲み込む。

 

「アル!」

「キュピィ!」

 朔耶の声を聞いたアルが再び大きくなり、翼で風を起こして靄を吹き飛ばす。

 

 ――が、そこに銀の王の姿はなく、そのかわり、重なるようにして倒れているセルマとリンの姿が目に入ってくる。


「セルマ! リン!」

 と、呼びかけながら急いでふたりの方へ走る。

 

「……私はセルマに押し倒されただけだから心配するな。それよりセルマだ!」

「う、うぅ……」

 セルマは、服の背面が溶けた事で背中が大きく露出しており、その露出した部分が焼けただれたような状態になっていた。

 どうやらセルマは、リンを庇うために覆いかぶさった事で、あの靄をまともに浴びてしまったようだ。

 

「すぐに回復する!」

 俺は次元鞄からアリーセの作った回復薬を取り出し、セルマの背にかける。


 ……が、どういうわけか効き目が薄い。

 更にもう1本回復薬を取り出す。


「こっちも使うです!」

「同じく!」

 朔耶やクーからも回復薬を手渡される。


 それらと一緒にまとめて数本振りかける。更に更に連続で振りかける。

 しかし、それでもあまり効いているようには見えなかった。

 これだけ使ったというのに、何故だ……!?

 

「なんで効きがこんなに悪いんだ……!?」

「……も、もしかして……過剰状態です!?」

 俺の焦りの声に、ハッと気づいた顔をしながらそんな風に言ってくるクー。

 

「過剰状態ってのはなんだ!?」

 リンがクーに詰め寄るようにして問う。

 

「か、回復系の魔煌薬は、た、短時間の間に連続で多量摂取すると効果がどんどん下がっていくです! そ、そして、最終的に効果がほとんど発揮されなくなる……です!」

 クーがリンの剣幕に驚いたのか、少し竦みながらそう説明する。

 ……そ、そう言われてみると、そんな累積耐性みたいなのがある事を、どこかで見たか聞いたかした気がするぞ……?

 

「それはつまり、セルマ既に大量に回復薬を摂取していたっていう事か!?」

「そ、それはわからないですが、今の容態からすると、可能性が高いのです!」

 リンの言葉にそんな風に返すクー。

 

「とにかく、この場に留まるわけにはいかない。一度離脱す――」

 俺が最後まで言い切るよりも先に、

「――召喚」

 という短い言葉が響き渡った。

 

 ……って、おいまて、この声は……銀の王……っ!?


魔煌薬の制限は、用語集その1を見ると一番わかりやすいと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ