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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第1部 異世界グラスティアの異変 第3章 南方編
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第15話 VS謎の冥界の悪霊

 走って朔耶とクーを追いかけていくと、ふたり――正確に言うならクーとアルは既に交戦中だった。

 そして、朔耶は先程の悲鳴の主と思われるシスターと思しき格好をした、雪の上に倒れ込んでいる女性の様子を確認している。

 

「セルマ!」

 リンがそう呼びかけながら女性に向かって走っていく。

 どうやら顔見知りのようだ。


「私たちが辿り着いた時にはもう倒れていたんだけど、多分大丈夫だと思う」

 と、リンに告げる朔耶。


「……ああ、そうだな。心臓の音もするし、問題なさそうだ」

 リンがセルマと呼んだ女性に耳を近づけて言う。おそらく例の異能で聞き取ったのだろう。


 ともあれ、あっちは大丈夫そうだな。

 ……というわけで、クーとアルが交戦中の敵だが……見た事がないな。

 

 口に鋭い牙のあるドクロを思わせる土気色の頭と、筋骨隆々といった感じの全身タイツの如き見た目の黒い肉体を持つ化け物だ。

 更に、背中には所々が赤黒く変色している骨――骨格を思わせる翼が2対あり、首の左右から角が生えている。

 しかも、どうやらそいつの爪――槍のように鋭く尖った爪はある程度伸縮するらしく、クーやアルを突き刺そうと何度かそれを伸ばしていた。

 ……もっとも、クーもアルもやすやすとそれを回避していたりするが。

 

 と、その化け物が後方へと大きく跳躍し、地面に手をついた。

 いや、違うな。爪を地面に突き刺したのか。

 

 直後、化け物の周囲の地面に墨汁が垂らされたかの如き黒い染みが幾つも生み出され始める。

 なんだかよくわからんが、止めた方が良さそうだな。

 俺は即座に霊幻鋼の剣を取り出すと、それを飛ばす。

 

 攻撃するべきだと判断したのは俺だけではないようで、クーとアルも俺の飛ばした剣に合わせるかのようにして、化け物へと突っ込む。

 刹那、黒い染みから骨で出来た犬と鳥が飛び出し、それぞれクーとアルに襲いかかっていく。

 

 クーとアルがその場で停止し、犬と鳥をそれぞれ迎撃。

 湧いてきた犬2匹がその身で剣を受け止めようとしてくるが、俺はアスポートを使って剣を化け物の目の前へと転移させた。

 そして、突然の転移に困惑する化け物に向け、サイコキネシスで剣を勢いよく振るう。

 

「グガアァァァアァァァアァァァッ!?!?」

 化け物は苦悶の声を上げながら大きく仰け反り、真紅色をした極小の結晶が噴き出す。

 

「この結晶……って!」

 噴き出す結晶に驚く朔耶。

 

「――どうやらあの獄炎戦車と同じ、冥界の悪霊って事みたいだな」

「って事は……すでに地上に出始めやがったって事かよっ!」

 俺の推測を聞き、リンが忌々しげに吐き捨てる。

 

 続けて斬りつけようとするも、それよりも早く化け物は爪を振るって防いできた。

 早々簡単に攻撃を連続して食らってはくれないか。獄炎戦車よりも攻撃を受けた後の判断が早いな……

 

 そんな事を考えている間にも、次々に骨の犬と鳥が生み出される。

 アルがブレスで焼き払っていくが、追いついていない。

 

 クーは人間形態と犬狼形態を切り替えながら、ハンマーでの攻撃を主体にする方向性に切り替えたようだ。

 ……まあ、ハンマーでの打撃の方が有効そうだしな。あの骨どもには。

 

 ってか……ずっと疑問に思っているんだが、クーの服、形態を切り替える度にしっかり消えたり現れたりしてるけど、どうなってんだ……?

 

 なんていう、どうでもいい事を頭の中で呟いた直後、リンの近くに骨の犬が出現する。どうやら、セルマを狙っているようだ。


「リンっ!」

 俺はサイコキネシスで操っている剣で化け物と打ち合いながら、リンに向かって呼びかける。


「任せとけって!」

 リンはそう答えるなり、腰につけたベルトポーチから葉っぱのような形をした盾を取り出し、それを投げつけた。

 

 ……盾? そう言えば、リンがどんな武器を使うのか知らないな。

 そう疑問に思って剣を操りながら横目でチラチラと見ていると、骨の犬に盾が勢いよく激突するのが見えた。

 

 その一撃で骨の犬の顔部分が半分砕けるが、その程度では動きを止めない。

 と、次の瞬間、盾がまるでアッパーカットをするかのように勢いよく浮かび上がり、その直撃を受けた骨の犬もまた、のけぞりながらふわりと浮き上がる。

 

 そして盾は浮き上がった骨の犬めがけて真上から急降下し、骨の犬を地面に叩きつける。

 ガシャン! という破砕音とともに骨の犬が粉々に砕け、白い砂へと変わった。

 

「ま、こんなもんさ」

 息を吐きながら盾を手元に戻すリン。

 よく見ると、その盾には鎖のようなものが連結されていた。

 なるほど……盾をヨーヨーのように振り回して使うのか。


「あんな感じの攻撃をするゲームが昔あった気がするなぁ……。まあ、盾じゃなかったと思うけど」

 なんて事を言う朔耶。

 

「じゃ、こっちはこうすっか」

 俺はアポートで剣を手前に引き戻した。

 

 と、化け物の振るった爪が空を切る。

 

 そこを狙い、再度剣を飛ばす俺。

 ただし、次元鞄から引っ張り出した20本の呪紋鋼のナイフと一緒に、だ。

 

 霊幻鋼の剣1本に、呪紋鋼のナイフ20本。

 

 化け物は防ぐのは難しいと判断したのか、翼を広げ垂直に飛翔して、それを回避しようと試みる。

 しかし、それらは普通に飛ばした物ではなく、サイコキネシスで飛ばした物だ。

 一直線にしか飛ばせないわけじゃない。

 ――化け物の真下で軌道を直角に曲げる。

 

「ギッ!?」

 化け物驚きの声を上げつつも、両の爪を振るい、剣とナイフを防ごうとしてきた。

 

 が、その物量を防ぎきる事は出来ず、ナイフ8本が突き刺さった。

 そこにさらに、防がれた剣とナイフを別方向から突き刺す。


「グオァァァアァッ!?!?」

 

 例の結晶を撒き散らしながら、化け物が地面へと落下する。

 と同時に、今まで次々と湧いて出て来ていた骨の犬と鳥が現れなくなった。

 

「召喚が止まったのです!?」

「チャーンス! アル!」

 クーと朔耶はそう告げると、ふたりともこちらへと向かってくる。

 

「ルオオオォォォッ!」

 咆哮し、立ち上がった化け物が撒き散らされている結晶を浮かび上がらせる。

 そして、それらを結合させ、幾つもの赤い杭に変えると、一斉に撃ち出してきた。


 ……って、そんな器用な事まで出来んのかよ、こいつ。

 なんというか、こいつは他の冥界の悪霊とは格が違う気がするな。

 まあもっとも、どんな攻撃でも『塊』である以上、まったく脅威ではないんだが。

 

 俺は手を殺到する赤い杭の方に向けて精神を集中する。

 ――最近、魔法攻撃ばっかりしていたが、こういう事も出来るのを忘れて貰っては困る、という奴だ。

 

 心の中でそんな事を呟いた直後、間近に迫っていた赤い杭が停止。

 強化される前ですら、ガトリングによる弾丸の嵐を防げるのだから、強化された今ならこの程度防ぐのは造作もないわけで……

 俺は更に力を加え、赤い杭の向きを変ると同時に、勢いよく押し出した。

 

「ギッ!?」

 自分の放った攻撃が戻ってくるという想定外の現象に、化け物が狼狽えた様子を見せる。

 

 そして、そのスキが仇となり、赤い杭を防ごうとするも防ぎきれずに被弾。

 そこへさらにクーとアルが炎とハンマーによる攻撃を仕掛けた。

 

「グオォォオォォオォォオォォッ!!」

 一際大きい咆哮を上げたかと思うと、化け物はそのまま倒れ込み動かなくなった。


「ここで、『やったか』って言ったら蘇ったりしてね」

 なんて事をほざく朔耶。

 

「言うわけないだろ」

 肩をすくめてそう返しつつ、なんだか気になって化け物の方を一瞥する。

 と、何やら結晶が胴体全体に付着しており、キラキラと輝いているのが目についた。

 

 …………? なんだ? どうにも嫌な予感がするぞ……

 

 俺は素早く化け物を掴むと、アスポートで少し離れた位置、かつ上空へと転送。

 と、その直後、上空に転送された化け物が赤黒い閃光と共に炸裂。白い砂が地面へと降り注いだ。


「うわわっ!」

「きゃあっ!」

 朔耶とクーが短い悲鳴を上げる。


「蘇るんじゃなくて、自爆かよ……」

「キュキュピィ」

 俺の呟きに反応するかのように鳴き声をあげるアル。

 

「しかもあれ、呪いがこもってるって言ってるよ」

 アルの言葉を通訳してくる朔耶。呪いって……なんて厄介な奴だ。

 

「まあ、見るからに普通の爆発じゃなかったからなぁ……。朔耶がアホな事を言ったお陰で気づけて良かった」

「変な事を口走ったお陰で助かったです。さすが朔耶さんなのです」

 俺とクーがそう言いながら朔耶の方を見る。

 

「ねえ、それ褒めてる? けなしてる?」

 という朔耶の言葉はスルーして、リンの方へと向かう。

 

「リン、その人はどうだ?」

「皆が戦闘している間に気つけ薬は飲ませておいた。もうすぐ目覚めるんじゃねぇかな」

 俺の問いかけにそう返したところで一度言葉を区切ると、近寄ってきたクーと朔耶の方を交互に見て、それから続きの言葉を紡ぐ。

「ルナとサクヤが素早くたどり着けたお陰ってところだな。感謝するぜ」

 

「どういたしましてなのです。間に合ってよかったのです」

「だね。最初、倒れているのを見た時は、手遅れかと思って焦ったよ」

 クーと朔耶がそんな風に言葉を返す。


「う……ん……」

 リンが言ったとおり、ほどなくしてセルマが目を覚ました。

 

「おう、目が覚めたか!」

 リンがそう呼びかけると、セルマは、

「リンスレット……様?」

 と、寝ぼけ眼といった感じの様子で呟く。


「おう、私だ」

 その言葉に、セルマは何かを思い出したのか目を見開く。

 

「っ! リンスレット様! 救援を! 救援をお願いしますっ!」

申し訳ありません。色々ミスっていた為、投稿が遅くなってしまいました…… orz

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