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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第1部 異世界グラスティアの異変 第3章 南方編
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第11話 フォーリア公国・公都ルナルガント

 ディアーナの話を聞き、ため息をついた俺を見たリンが、

「ど、どういう事だ?」

 と、困惑しながら問いかけてきた。

 

「ざっくり言うと、ローディアス大陸全体が、謎の力で魔法や魔煌具が使えない上、異界の魔物がいつ這い出してきてもおかしくない、そんな状態になっているって事だな」

「な、なんだそりゃ!? いくらなんでも、無茶苦茶だろ!?」

「ああそうだな。無茶苦茶だ。だから非常にヤバい」


 俺の話を聞いたリンが、青ざめた顔をしながら、ディアーナの方を見て問いかける。

「ディ、ディアーナ様! 公都へ降りる事は出来るのですか!?」


「地下神殿遺跡にもテレポータルで行けたから大丈夫だと思うぞ」

 俺がリンに向かってそう言うと、ディアーナは頷き、

「そうですねー。テレポータルを開く事は出来ますがー、そんな状況なのでー、こちらへの連絡がー、難しくなりそうですねー。これを持っていってくださいー」

 と、そんな事を言いながら、俺とリンに鏃のような形をした結晶を1つずつ渡してきた。

 

「これは?」

 俺が結晶をしげしげと見つめながら尋ねると、

「それはー、『幽星の鏑矢』という代物でしてー、それを空に向かって放り投げるとー、私の所にー、合図が届く仕組みにー、なっていますー」

 と、そう言ってくるディアーナ。


「なるほど……。ディアーナ様への合図に使うのですね」

 リンが頷きながらそんな風に言う。

 

「向こうでー、それを使って貰えばー、私がー、皆さんたちのー、現在位置を特定して―、すぐにテレポータルをー、開きますー」

 ディアーナが眼下――ルナルガントを指さしながら言う。

 

「わっ、それは便利だね!」

「これで、帰りも安心なのです」

 朔耶とクーが、俺の代わりにそんな風に言う。

 

「とはいえー、かなり危険な状況なのでー、十分注意してくださいねー」

 そう言いながら、手を動かし、テレポータルを開くディアーナ。

 

「――ディアーナ様、感謝いたします!」

 リンがそう言うやいなや、テレポータルへと飛び込んでいく。

 はやっ! 気持ちはわかるが焦りすぎだろ!

「って! ちょっと待て!」


 そう呼びかけた所で止まるわけもないので、俺たちもリンの後を追ってテレポータルへと飛び込む。 

 すると、到着した先は円形の建物の中だった。

 

「うわっ、寒っ!」

「ここはどこなのです?」

 朔耶とクーがそう口にする。

 

「ルナルガントのすぐ近くのー、見張り塔ですー。無人だったのでー、そこに繋ぎましたー」

 という、後方からのディアーナの声を聞きながら、見張り塔の入口からまっすぐ伸びる足跡を確認する俺。

 ふむ……雪が降っているとはいえ、そこまで強くはないし、すぐに足跡が消えてしまうような事はなさそうだな。まあ……だからといって、悠長に事を構えるわけにはいかないが。

 

「とりあえずー、その格好だと寒いと思うのでー、これを着てくださいー」

 そう言ってフードの付いた大きめのローブを4着渡される。

 

 3着が俺たちの分で、残りの1着がリンの分という事らしい。

 早速、服の上から被るようにして着てみると、寒さをほとんど感じなくなった。

 

「わ、凄い。全然寒くない!」 

 クルッと一回転しながら、そう口にした朔耶に対し、

「防寒の術式をー、組み込んであるのでー、吹雪でも大丈夫ですよー」

 なんていう説明をしてくるディアーナ。

 吹雪でも大丈夫なのか……寒冷地では最高の代物だな。

 

「あれ? この大陸って、今魔法が使えないんじゃなかったんでしたっけ?」

 そんな疑問を口にする朔耶。

 俺はスフィアを呼び寄せ、魔法が発動出来ない事を確認しながら、

「魔法じゃないんだと思うぞ」

 と、告げる。何しろ、アルミナで星霊術とかいうのを使っていたのを、この目で見ているしな。

 

「はいー、その通りですー。ローブに組み込んである術式はー、魔煌波に作用する魔法術式ではなくー、星霊術の術式でしてー、そのローブに織り込まれている―、アストラルの糸にー、作用しているんですよー」

 朔耶の疑問にディアーナがそんな風に返してくる。

 

「星霊術です? それなら、私も少しだけ使えるです!」

「ん? そうなのか?」

 クーの言葉に対して問いかける俺。

 

「はいなのです! というのも、エンピリアルグラフは星霊術の一種なのです!」

「ああ……あれも星霊術なのか……」

 魔王がどうとかいう物騒な代物なのに、ディアーナの使う術と同じとはな……

 

「……っと、あまりここで話をしていると、リンに追いつけなくなりかねないな」

 色々と気になる点はあるが、考えるのは後にして、俺はそう口にする。

 

「うん、そうだね。そろそろ行こう」

「です! 行くのです!」

 ふたりが同意して頷いてくる。よし――

 

「「「ディアーナ様、ありがとうございました!」」」

 ディアーナの方を向き、三人そろってお礼の言葉を述べる。

 

「どういたしましてー。あ、帰る時はー、鏑矢を使ってくださいねー」

 そう言い残し、テレポータルを閉じるディアーナ。

 

 テレポータルが閉じたのを見届けた俺たちは、見張り塔から出て早足で足跡を追って歩み始める。

 本当は走りたい所だが、この雪深さでは走るのは厳しいので仕方がない。

 うーむ……あまり遠くに行っていなければいいんだが……

 

                    ◆

 

 ――足跡を追って行くと、ルナルガントを囲む城壁へと辿り着いた。


「向こうに城門があるけど閉ざされているね」

 朔耶が雪を遮るように額に手を当てながら、そう告げてくる。

  

「多分だけど、魔煌具の類で開閉する仕組みなんじゃないか?」

 と、推測を述べる。城門の大きさからして、手動じゃ厳しいだろうからな。

 

「あ、なるほど! 魔煌具が使えないから動かせないって事だね!」

 両手をパチンと合わせながら、そんな風に言ってくる朔耶に対し、

「ああ。実際魔煌具が使えない事は確認出来たしな」

 と、そう言いながらスフィアを戻す。


「となると……どこからなら入れるんだろう?」

「足跡を追っていけば分かるです。どうやらリンさんも城門の方へは向かっていないみたいなのです」

 朔耶の疑問に対し、クーが足跡を指さしながら答える。

   

「ふーむ。むしろ城門のある方とは逆の方へ向かっているな。このまま後を追うとしよう」

 俺はクーの言葉に頷くと、そう告げて足跡を追う。

 

 ……

 …………

 ………………

 

 城壁沿いに、おおよそ300歩くらい進んだ所で急に足跡が途切れた。

 ……む?

 

「おかしいのです。足跡がここで途切れているのです」

「んー? これ、足跡が城壁の方へ向いているな」

 クーの言葉を聞きながら足跡を確認すると、足跡の向きが変わっており、思いっきり城壁の方に向いていた。これって……

 

「……こういう時って、そこに隠し通路の類があるパターン多いよねぇ」

 壁の方を見ながら、俺が思った事をそのまま口にする朔耶。


「ああ、そうだな。ある意味定番だとも言える」

 というわけで、足跡が途切れいている場所まで行き、壁に向かってクレアボヤンスを使ってみる。

 

 ――案の定、壁の向こう側に下り階段があるのが見えた。

 

「やっぱりというべきか、隠し階段があるな」

 そう俺が告げると、

「でも、どうやって開けるです?」

「アルに壊してもらう?」

 ふたりがそんな風に返してくる。

 

「まあ、急いでいるし壊したい所だが……普通にスライドした」

 そう言いながら城壁の一部を横へとスライドさせる俺。


「ず、随分と雑な隠し扉だね。これじゃ誰でも簡単に出入り出来ちゃうよ」

「いや……多分、本来は施錠魔法の類で封鎖されているんだろう」

 俺は朔耶の懸念に対し、そう答えると、うっすらと見える紋様を指さす。

「実際、ここにそれっぽい紋様もうっすら見えるしな」


「たしかに、魔法の術式のようなものが見えるです」

 朔耶に代わって、紋様の部分に顔を近づけて確認しながらそう言ってくるクー。


「あ、そうか! さっきの城門と同じってわけだね!」

「魔法が使えない状態になっているから、施錠魔法も効果が失われているですね!」

 納得がいった様子のふたりに対し、

「ああ、そういう事だ」

 という言葉を返した所で、下へと続く階段がその姿を見せた。

 

「おおー、たしかにいかにもな感じの隠し階段っ!」

 朔耶がそれを眺めながら、そんな感想を口にした。


「この先にリンさんがいるですか……」

 そう呟くように言ってくるクーの方に顔を向け、そして告げる。

「おそらく……いや、足跡からして間違いないだろう。ってなわけで、行くぞ」


                    ◆              


「……なんだかこの隠し階段、大分古い感じがするです」

「あー、なるほどー。そう言われるとたしかに中世っていうより古代遺跡って感じかも」

 階段を降りながらそんな感想を口にするふたり。


 ふーむ、中世時代より更に古い感じの構造ではあるな。

 もしかして公都は、なんらかの遺跡の上に作られた都市……なのだろうか?

 

「それにしても、思ったよりも暗さを感じない気がするんだけど……」

「そう言えばそうなのです。もう大分降りて来たですが、普通に見えるです」

 そんな事を言うふたりに対し、俺は周りを見回し、

「天井、床、壁、全てがうっすらと光を放っているみたいだな」

 そう言葉を返した所でふと気づく。っていうか、そもそもこの感じは……


「あれ? これって……もしかして『幽霊トンネル』と同じ……じゃ?」

「ああ。俺もそう思った所だ」

 俺は朔耶の言葉に対して頷き、そう返す。

 ……そう、まさに『幽霊トンネル』と同じなのだ。

 

 何故こんな所で? と、考え込んでいると、首を傾げながらクーが問いかけてくる。

「えっと……幽霊トンネル、とは何なのです?」

 

 まあ、クーと出会うよりもずっと前――サイキックを得るきっかけとなった時の話だし、知っているわけがないよな。……っていうか、今まで話した事もなかったな。

 ふーむ……。丁度いいっちゃ丁度いいし、ここらで話しておくか。


 そう考えた俺は、クーに『幽霊トンネル』を話をし始めるのだった――

久しぶりに登場の『魔法の使えない場所』です。

まあもっとも、前回と違って規模がかなり大きいですが……

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