表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第1部 異世界グラスティアの異変 第3章 南方編
133/764

第5話 国境上空・エンゲージ

「え? なにそれ? なんだか、そういう感じのをロボットアニメで見た事ある気がするけど……」

 朔耶が俺の呼び出したスフィアを見てそんな疑問の言葉を口にする。まあ、朔耶ならそう思うよなぁ……


 俺は朔耶に対し、

「ある意味、似たようなもんだ」

 とだけ答えると、接近してくる飛行艇目掛けてスフィアを飛ばす。

 

 敵の数は……3か。よし、一気にいけるな。


「全魔法……一斉掃射!」

 俺はあえてそう言い放ち、全ての魔法を解き放つ。

 

 氷柱、雷撃、火球――

 これまでとは比べ物にならない大きさになったそれらが、敵飛行艇目掛けて一斉に襲いかかっていく。

 

 そしてそこに続く、閃光、爆炎、砂塵――

 魔法が生み出す様々なものによって視界が遮られる。

 

「うわぁ……これは酷い」

 視界が晴れ、朔耶のそんな声が聴こえてきた時には、敵飛行艇は既に海へと沈んでいくその最中であった。

 

「これはまた……閣下から先に話を聞いていなければ、驚きで硬直してしまう所でしたな」

 なんて事を苦笑気味に言ってくるジークハルトに、

「はっはっは。な? 言った通りだっただろう?」

 と、笑いながら言うアーヴィング。


「というか、なんだかどこかで見た気がする部品がついてるわね……」

 ビジョンスクリーンを通してスフィアが見えていたのだろうか?

 シャルロッテがそんな事を言った。……見た気がするってのは、おそらくアーデルハイトの所へ行った時に見かけたんだろうな。

 

 しっかし、そのアーデルハイトが魔改造したこれは、やっぱり威力がありすぎだな。まあ、魔力消費もシャレにならないんだけどさ。

 

 と、魔力切れになったスフィアを順次戻しながらそんな事を考えていると、

「あ、追われている飛行艇がこちらに舵を切りましたよ」

 というアリーセの声が聴こえる。

 

 目を向けると、たしかに追われていた大公家の飛行艇とやらがこちらへ向かってきているようだった。

 ふむ……。さっきの主砲攻撃で敵飛行艇の数が大きく減った今が、こちらに近づくチャンスだと考えた……といった所だろうか。

 

「ふむ、なかなか良い判断をするな」

「この飛行艇に接舷するつもりと考えるべきだろうね」

 感心するジークハルトの言葉に、アーヴィングがそう続ける。

 どうやらふたりも、俺と同じ結論に至ったようだ。


「ん? さっきの全部しまった?」

 スフィアを全て戻し終えた所でそう問いかけてくるロゼ。


「ああ。あれは1発で魔力が尽きるんでな。一旦回復させないと無理だ」

 俺が頷きながらそう答えると、横から朔耶が手を上げて、

「じゃあ、次は私のターン!」

 そんな宣言をしつつアルを召喚した。

 ……いや、私のターンって。ターン制バトルじゃないんだから。

 

「アル、大きくなって!」

「キュピィッ」


 アルは朔耶の言葉に応えるかの如く、クルリと宙返りをする。

 と、その直後、アルの身体が人ひとり乗れるほどの大きさになった。

 

 おおう、ちょっと驚いたぞ。

 ってか、こっちが本来の大きさなんだろうか?


 そんな事を考えている間に、朔耶はアルに飛び乗り、そのままデッキから飛び出していく。

 クレアボヤンスで追跡すると、アルは大公家の飛行艇を大きく迂回するように弧を描きつつ、後方から追っている飛行艇の横へと回り込んでいくのが見えた。

 

 と、次の瞬間、アルの口から放射状の青白い電撃が放出され、近くにいた2艇の飛行艇に襲いかかる。……放電っぽいけど、口から吐いてたからブレスだと思うが……

 ともあれ、離れていても聴こえてくるバチバチというスパーク音と共に、放たれた電撃をまともに食らった飛行艇は2艇とも煙を噴き上げながら、海へと落下していく。

 おそらく、強烈な電流を浴びた事で飛行用の魔煌機関が壊れたのだろう。

 

 即座に周囲の敵飛行艇から魔法弾が連射される。

 が、アルはそれを小刻みな上昇と下降、そして旋回で回避していくと、隙を突いて手近な飛行艇目掛け、今度は冷気を吐き出した。

 うん、これは冷気のブレスだとわかるな。

 

 真っ白な冷気を浴びて凍りついた飛行艇は音もなく海へと落下していく。

 あそこまで凍結させられては、さすがに動けないよなぁ……

 

 と、その直後、敵飛行艇集団から、朔耶とアル目掛けて一斉に魔法弾が放たれ、弾幕が周囲を埋め尽くす。どうやら先に迎撃すべきと判断したようだ。

 さっさと逃げるに限ると朔耶は考えたらしく、アルが大きく上昇した後、一回転するようにしてこちらへと舞い戻ってくる。


 クレアボヤンスが朔耶を捉えた時、朔耶が「弾幕シューティングは苦手なんだよねっ」みたいな事を言っていたような気がした。

 まあ、実際に聞こえたわけじゃなくて口の動きからの予測だけど、あいつ、実際に苦手だからなぁ。弾幕シューティング。

 

 っと……それはさておき、そんな風にして朔耶とアルによって時間が稼がれている間に、大公家の飛行艇がこちらの飛行艇のすぐ近くまでやってきていた。


「いやぁ、弾幕シューティングは苦手だから逃げてきたよ」

 アルから降りてきた朔耶がそんな事を言ってくる。って、やっぱりか。


「ああ、離脱する時もそう言ってたな。見えていたぞ」

「え? あの独り言聴こえてたの?」

「違う。見えていたんだ。クレアボヤンスで」

「あーなるほど、そういう事かぁ。納得だよ」


 などというどうでもいい会話を朔耶としていると、 

「こちらはフォーリア公国大公家公子エルウィン。貴艇の支援に感謝します」

 通信機を通じてそんな声が聴こえてきた。おそらく、向こうの飛行艇からの通信がブリッジに届いたのだろう。

 

「こちらはイルシュバーン共和国元老院議長アーヴィングだ。公子エルウィン殿、事情は不明だが貴殿を狙う輩の迎撃について、我々に任せて戴いても構わんかね?」

「無論です。むしろ私の事を信用していただき有り難い限りです」

 アーヴィングの言葉に対し、そう返すエルウィン。


「まあ、公子殿とは以前にも会って声は知っているのでね。――ああ、客人の出迎えも出来ずに申し訳ないが、我らの飛行艇へ歓迎しよう」

 アーヴィングがエルウィンに向かってそんな風に告げると、それに続くようにしてジークハルトの声が響く。

「よし、接舷扉を開け! フォーリア公国の大公家の者を迎えるぞ!」


 そして、接近してくるエルウィンの乗る飛行艇に一番近い、側面に取り付けられた扉が開かれる。……どうやってあそこから乗り移るのだろう?

 

 俺がそんな疑問を抱いていると、

「エアリアルアンカー、射出するであります!」

 エルウィンとは別の声――女性の声が通信機から聴こえた。


 直後、エルウィンの乗る飛行艇から緑色の鎖付きの(いかり)が2つ射出され、開かれた扉の左右、飛行艇側面に打ち込まれる。

 ふむ……。見た目と名前からして、魔煌波で生み出された魔法の(いかり)だな、あれ。

 

 こちらの飛行艇に乗り移らせまいとする敵飛行艇集団が攻撃を仕掛けてくるが、エルウィンの乗る飛行艇の手前で、青と白、2色のハニカム構造の障壁に阻まれ、攻撃が届かない。

 

「既にそこは、こちらの魔煌シールドの展開領域内です。敵の魔法弾は一撃たりとも貴艇に当てさせはしませんのでご安心を」

 ジークハルトがそう告げる。さすがは最新鋭の飛行艇だというべきか、防御面も完璧のようだ。っていうか、シールドの範囲広すぎじゃね?

 

 魔法弾が飛来する中、エルウィンの乗る飛行艇がエアリアルアンカーに導かれる形で、こちらの飛空艇に並行。そのまま接舷扉へとゆっくり近づいていく。

 その飛行艇目掛け、なおも執拗に攻撃を仕掛けてくる敵飛行艇集団。

 障壁に攻撃を弾かれ、更にこちらのフォトンガトリングカノンによる攻撃で数を減らしているにも関わらず戦闘を中止する気配すらない。

 

 ……っていうか、だ。

 なんでこいつら、こんな状況なのに攻撃を継続してくるんだ? 普通だったら撤退してもおかしくない状況だと思うんだが……

 命を捨てる勢いというか、死をも(いと)わないというか、ともかくそんな感じだ。

 

 敵飛行艇が手で数えられる程にまで減った所で、攻撃が中断された。

 ん? ついに撤退するのか?

 

 と、そう思った直後、残った敵飛行艇集団は矢の様な形で隊列を組むと、そのまま全速力で突撃を仕掛けてきた。

 

「まさか、飛行艇自体を弾としてシールドを突破するつもりか!?」

「攻撃を集中! 急いで殲滅しろ!」

 アーヴィングとジークハルトの声が響く。

 

 よもや、そこまでしてエルウィンたちの飛行艇を潰したいとは……っ!

 俺は早めに戻していた、魔力の回復がある程度終わっているであろうスフィアを呼び寄せる。

 

「アル!」

 朔耶がアルに飛び乗り、デッキ付近からの迎撃の構えを取る。

 

「効果は薄いでしょうが……っ!」

 そう言いながら、アリーセがチャージショットを放った。

 どうやら既にチャージしていたらしい。

 

 先頭の敵飛行艇にチャージショットが着弾。敵飛行艇が衝撃で傾く。

 そこへ俺が続けざまにスフィアの魔法を叩き込んでやった。

 完全回復ではないため、例の超高火力な魔法攻撃は使えないが、それでも十分なはずだ。

 

 チャージショットと魔法を多重に浴びた敵飛行艇が、爆炎と共に落下していく。

 と、同時にフォトンガトリングカノンによる攻撃で2艇が爆散。

 更にアルのブレス攻撃によって1艇が氷の塊となって海へと落ちていった。

 

 時を同じくして、エルウィンたちの飛行艇が接舷扉の前に停止。

 エアリアルアンカーによってその場に固定された。

 

 が、その飛行艇を狙い更に残った敵飛行艇が接近する。


「残存敵飛行艇、全艇シールドを突破! フォトンガトリングカノン1番、5番、攻撃続行不能!」

 乗組員の声が聴こえてくる。

 シールドを突破された上、最前方と最後方にあるフォトンガトリングカノンが死角に入ってしまったようだ。

 

 俺たちがデッキ上から攻撃を試みるが、全てを撃破するには時間が足りなかった。

 遂に残る3艇のうち2艇を、エルウィンたちの飛行艇の間近にまで接近を許してしまう。

 

 朔耶の駆るアルがブレスでの攻撃では間に合わないと判断したのか、爪を振るって直接攻撃を仕掛け始めた。朔耶も手に持った小型の杖から火球の魔法を放っている。

 俺の魔法、アリーセの魔法矢、ロゼの霊力を纏った投擲(とうてき)用の短剣。

 それらも全てそちらへ集中させ、1艇をなんとか撃破。

 

 よし! 急いでもう片方をっ!

 俺は心の中でそう叫びつつ、魔法を放つ。

 

 ……が、連射するつもりで放ったはずの魔法は、1発しか発動しなかった。

思ったよりも空中戦が長くなりました……

前回に引き続き、ロゼとシャルロッテの出番が戦闘では皆無に近いですが、どちらも近距離での白兵戦タイプなので、遠距離の射撃戦ではどうしても不利です……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ