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承 アカデメイア

第0話直後の地球側の話です。

――始まりのあの日。

――竜の血盟・本拠地『アカデメイア』最深部――

 

<Side:Renji>

「一気にカタをつけてやるぜっ!」

 群れるキメラ共を見据えながらそう言い放ち、俺は手に持った刀を、切っ先を後ろに向けた状態で腰の辺りに置く。 

 そして、即座に刀に向けてパイロキネシスを発動。一瞬にして刀身が炎に包まれた。

 当然ではあるが、この程度で俺の刀が燃えたりはしない。

 が、これをこのまま纏っているだけではあまり意味がない。

 

「紅蓮閃・朱雀!」

 掛け声とともに、俺はパイロキネシスの炎を纏った刀を勢い良く振るった。


 と、振るった刀から鳥の形をした炎が生み出され、翼をはためかせるような動きで飛翔。

 辺りを縦横無尽に飛び回りながら、様々な断末魔を生み出していく。無論、その断末魔はキメラどもの物だ。

 俺は中型以下のキメラどもが瞬く間にその断末魔共々、炎に飲み込まれて消えていくのを見ながら、宣言どおりこちらはこれで片付いた事を確信し、姉貴の方を見る。

 

 と、姉貴もまた大型のキメラ――ヌエのように複数の動物が混ざったような奴にトドメを刺す所だった。

 やっぱ、姉貴は銃火器よりも槍を持たせた方が強いな。

 下の階で拾ったもんだが、思ったよりも頑丈だな、あれ。

 ま、RPGでもラスダンで拾える武器は最強クラスな事が多いしな。

 

 なんて事を考えつつ周囲を見回す。……ふむ、動くキメラは存在しなさそうだ。

 どうやら全て片付いたと考えて間違いなさそうだ。さて、そうすると残るは……

 

 俺は巨大なリング状の装置の前に立つ男の方を向き、告げる。

「――アンタの駒は尽きたみたいだぞ?」


「そのようだな。……やれやれ、これほどの力とは想定外だ」

 男はポケットに手を突っ込んだままそう言うと、鬱陶しそうな表情でため息をつく。

 

 だがそれだけだ。慌てている様子もない。……何故、これほど余裕そうなんだ? 

 

 俺が男の方に視線を向けて警戒していると、姉貴がテレポーテーションで男の間近に転移し、姿勢を低くしながら槍で足払いを仕掛けるのが目に飛び込んできた。

 

 って、いきなりかよっ!

 

 おそらく、足払いで転倒させて取り押さえようと考えたのだろう。

 何か隠し玉があるにしても、拘束してしまえばどうにかなるからな。

 まあ……仕掛けるなら仕掛けるで、合図の1つや2つ出して欲しい所だが。


 ――そう心の中でぼやいていた俺の目に、とんでもない光景が飛び込んでくる。

 なんと、男は姉貴の動きを読んでいたかの如く、姉貴の足払いをサラリと躱す。

 と、同時にポケットから手を引っこ抜く男。その手には短剣が握られていた。

 

 姉貴はその短剣による反撃が来ると判断したのか、槍を素早く床に突き立てると、それを支軸にする形で素早く身を翻す。

 テレポーテーションは、ある程度の間を置かないと、再使用出来ないからな……

 っていうか……金属の床に突き刺さるとか、とんでもない代物だな、あの槍。

 

 しかし……あの男、短剣を手に持ったまま、振るう事も投げる事もしてこないな。

 どういう事だ? 反撃のために引き抜いたんじゃないのか?

 そう思った直後、唐突に金色に輝くツタのような物が姉貴を囲むように出現。

 そしてそれが瞬く間に収縮し、姉貴を縛り付ける。

 

 ……って、はあっ!?

 

 なんだありゃ……一体全体どうなってやがる。

 まさか、この男もサイキッカーなのか?

 だが、あんなサイキックみたことないぞ……


「ふむ……。この空間に満たした人造魔煌波は十分そうだな」

 男がそんな事を言う。

 ……魔煌波? 人造というからには、自然に生み出される物もあるのだろうが、そんな物は今まで見た事も聞いた事もない。

 

「では、少し予定より早いが帰還するとしよう」

 そう男が言うと同時に、巨大なリング状の装置が作動し始める。

 

 と、そのリングの内側に、黒いシミのような物が出現。

 それがスパークと共に、渦巻きながらリング全体に広がっていく。

 

 それを見ていた姉貴が、拘束を破ろうとするも、姉貴を縛り付けている謎の拘束はびくともしない。


 しかし、姉貴は無理でも俺の方は動ける。

 俺は、男に向かって刀を鞘から抜き放ちながら走る。

 

 が、走り出した瞬間、

「それでは、失礼するよ」

 そう言い残し、まさに黒い渦そのものとなったリングの中へと男が飛び込んだ。

 その直後、姉貴を拘束していた物もまた、跡形もなく消えた。

 

 ……果たしてこれは飛び込んで大丈夫なものなのだろうか?

 

 そう思っていると、

「追いかけるぞ!」

 拘束が解けた姉貴がそう言い残してリングの中へと飛び込んでいってしまう。

 まったく躊躇しない……か。なんとも姉貴らしいな。

 

 俺は腰に右手を当てため息をつくと、その姉貴を追って黒い渦へと飛び込んだ――

 

                    ◆

 

<Side:Coolentilna>

「蒼夜君に続いて、蓮司君と珠鈴君の反応も消えた? 一体なにが……」

 室長さんが、狼狽気味に言いましたです。

 

「――キメラの反応はもうほとんどないんですよね? だったら……見てきます!」

 そう言うやいなや、朔耶さんが飛び出して行きましたです。

 

 ……朔耶さんは蒼夜さんの反応が消えた直後、居ても立っても居られないと飛び出して行こうとしていたです。

 キメラが多数存在していたため断念していたですけど、キメラがほとんどいなくなった今なら行ける……と、そう考えたですね。

 

「ま、待ってください! まだ安全というわけではありません……! ひとりで行くのは危険です!」

 室長さんがそう声をかけますが、既に朔耶さんの姿はなかったのです。

 

 室長さんが慌てて朔耶さんを追って行ったです。

 ……だから、私もその後を追いかけるです。

 あの3人の事が心配なのは、私も同じなのです。

 

 ……

 …………

 ………………

 

「この扉の向こう側あたりが、蒼夜さんの最後の反応があった場所です」

 室長さんと共に朔耶さんと合流した私は、目の前にある鉄の扉に視線を向けながらそう告げるです。

 

「この先が……」

「ですが、完全にひしゃげてしまっています。これでは開きませんね……。別ルートを探すとしましょう」

 室長さんが朔耶さんの言葉に続く形でそう言ってきたです。

 

 私と朔耶さんはそれに頷くです。

 

 ……うん?

 

 今、頷いた時に何かあったような気がするです……

 という事で目を凝らして見てみると、壁の下部に人ひとりが十分潜り込めそうなダクトがありましたです。

 

 覗いてみると扉の向こう側と思われる部屋が見えたのです。

 ダクトには鉄の柵がはまっていますが、外せば入れそうなのです。

 

「ん? クーちゃん、どうかしたの?」

 ダクトを覗いていると、朔耶さんがそう問いかけてきたです。

 

 私がダクトの事をふたりに伝えると、ふたりが近寄って来ましたです。

 

「ふむ、ダクトですか。……どうしてこんな大きいダクトを壁の下部に設置しているのでしょう……? まるで、ここから入れと言わんばかりです」

 室長さんがそう呟くように言って首を傾げたのです。

 

「でも、繋がっているなら入るしかないと思うんですけど」

「そうですね……。まあ、入ってみましょうか」

 室長さんは、朔耶さんの言葉にそう返すと、鉄の柵を力任せに外し、銃を手に持ったまま真っ先に入っていきましたです。

 

 何故真っ先に? と思ったですが、よく考えたら、私も朔耶さんもスカートだったのです。さすが室長さん。紳士的なのです。

 

 なんて事を心の中で呟いていると、銃声が連続して響いてきたのです。

 

「室長さん!? 大丈夫です!?」

 私はつい反射的に、ダクトに顔を突っ込んでそう叫んだです。

 

「大丈夫です。サハギンタイプのキメラが1匹潜んでいたので、始末しただけです」

 と、そんな声が聴こえてきたです。

 ――サハギンタイプのキメラは奇襲が得意なので厄介なのです。

 でも、さすがは室長さん、あっさり撃退したようなのです。

 

 そんなわけで、室長さんから来ても大丈夫だと言われた私と朔耶さんは、ダクトを抜けて扉の向こう側の部屋へと足を踏み入れたのです。

 

 その直後、床に手をついている室長さんの姿が視界に入ってきたのです。

 どこか具合の悪い所でもあるですかね?


 そう思って駆け寄ろうと思った所で気づいたのです。

 よく見るとその床には、赤い血がべっとりとくっついている事に、です。

 もしかして、サイコメトリーを使っているです?

 

「……血?」

 朔耶さんが不安げな表情で、そう呟いたです。


「……今、サイコメトリーで調べたのですが、どうやら蒼夜君は、ここで先程始末したサハギンの奇襲を受けて斬られたようですね。つまり……この血は蒼夜君が流したものです」

 室長さんがそう言うです。やはりサイコメトリーを使ったですね。


 その言葉を聞き、朔耶さんがショックのあまり硬直したのです。そして、

「え……?」

 と、かろうじてその一言だけを発したです。

起、承と来ているので、分かりやすいとは思いますが、今回の間章は残り半分です。

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