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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第1部 異世界グラスティアの異変 第2章 ルクストリア編
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第44話 カニのち空港

第2章ラストです。

 依頼を受けた俺は、早速レビバイクを駆り、ルクストリア都市圏の1つ『ディーグラッツ』へと向かう。

 そう、空港があるという街だ。まさか依頼で来る事になるとはな……


 ギルドで貰った地図を確認すると、討伐依頼の目的地はアレッゾ海岸という所らしい。

 なんでも砂浜がとても白い事で有名で、ルクストリア都市圏におけるデートスポットの定番の1つになっているんだそうだ。……砂浜で追いかけっこでもするのだろうか?

 

 と、そんな事を考えているうちに、アレッゾ海岸が見えてきた。

 ふーむなるほど……たしかに綺麗な白い砂浜――


(おお)っ! カニ(おお)っ! しかもデカッ!」

 ついそんな独り言を吐いてしまうほど、その白い砂浜を埋め尽くす勢いで、俺6人分くらいはあるであろう巨大なカニが群れていた。

 

 っていうか、ハーフシザー・ドリルクラブって変な名前だなぁ……と思っていたけど、実際にその姿を見て納得だ。

 何故ならそいつは、5対10本の脚があるところは普通のカニと同じなのだが、左側の一番上の脚がドリル状になっているからな。

 しかも、右側の一番上のハサミは異様に巨大化しており、挟まれたら一撃で真っ二つにされてもおかしくはない。

 

 まあ……接近戦にならなければ大丈夫だろう。遠距離から叩き潰していくとしよう。

 っと、そうだ。ハサミとドリル、どっちが該当の素材になるのか良くわからんから、そこだけは壊さないようにしないと。

 

 方針を決めた俺は、光線タイプの魔法杖と物質タイプの魔法杖を複数呼び出す。

 放射タイプや魔法球タイプなどは攻撃範囲が広く、うっかりハサミやドリルを巻き込んでしまいやすいので、今回はやめておいた。

 光線タイプと物質タイプの魔法であれば、当てる位置にさえ注意すれば済むからな。

 

 ――さて、数が多いから先手を取るに限るな。というわけで、早速杖を横一列に並べて掃射。

 こちらに近い位置にいた3体のカニが、杖による多重の魔法攻撃をまともに食らい、あっという間に動かなくなる。

 ふむ、耐久力は大した事なさそうだな。一気にいくとするか。

 

 が、その攻撃によって、俺の事を敵性存在であると認識したカニどもが、一斉に左のドリルを俺の方へと突き出してきた。

 そしてその直後、ドリルが放電しながら回転し始める。

 

 なんだか攻撃を放とうとしているようだが……どうやって攻撃してくるんだ?

 うーん、ドリルだけに高速での突進……というのが一番ありえそうだな。

 接近されて囲まれないようにしないと。


 突進に警戒しつつも、魔法杖で攻撃を仕掛け、攻撃準備中のカニを5体ほど始末する。

 

 が、そこでカニどもの攻撃準備が終わり、電撃が一斉にドリルから俺目掛けて放たれた。

 って、突進じゃなくて電撃――遠距離攻撃かよ! しかもはえぇ!

 

 雷撃のスピードは凄まじく速く、その上に数も多い。

 回避するのは難しそうだが、放置で問題ないだろうと考え、攻撃を続行する。

 害獣が使うこの手の攻撃は、魔煌波を使った物である事は既にわかっている。

 であれば、服の防御魔法で無効化出来るはずだ。

 あの珠鈴そっくりの女――もしかしたら珠鈴本人かもしれないが――と、戦った時のように。

 

 そう考えたその刹那、俺に雷撃が命中し視界が真っ白に染まる。

 ……しかし、予想通りダメージはない。眩しいだけだ。

 対魔法特化という極端過ぎる性能を持つ防御魔法だが、こういう時には便利だな。

 

 遠隔攻撃が効かないのであれば、残る脅威は接近される事だけなので、防御は捨ててひたすら攻撃を仕掛けていく。接近されないようにするにはこれが一番だからな。

 

 ――とまあ、そんな感じでカニを駆逐し続ける事しばし……


「どうにか片付いたな……」

 そう言葉を漏らしながら周囲を見回す俺。

 

 どっちを見てもカニ、カニ、カニ。おそらく50体くらいだろうか。

 討伐依頼が出たのが納得出来る数だ。

 

 まあそれはさておき、とりあえず収納鞄に――って、これ入り切るのか?

 そう思いながら片っ端から入れていくと、あっさりと全てのカニが鞄の中に収まってしまった。

 うーむ、さすがはディアーナ製……というべきなのだろうか? 改めて考えるとなかなか凄いな、これ。

 

                    ◆

 

 ――さて、害獣討伐の依頼はこれでいいな。

 後はルクストリアに戻るだけだが……ディーグラッツまで来た事だし、このまま空港へ行ってみるか。飛行艇がどんなものなのか、見てみたいしな。

 

 そう思った俺は、空港へ向かって海岸線の道を進む。

 この海岸線の道、舗装こそされてはいないものの、それなりに整備されているのは、海岸――白い砂浜がデートスポットの定番の1つになっているからなのだろうか?


 そんな事を思いながら走っていくと、今度は空を飛ぶ船がいくつも目に入ってきた。

 なるほど、あれが飛行艇か。うーむ……なかなかに凄い光景だな。

 

 空を行き交う飛行艇は、海を往く普通の船と大差のない見た目をしており、豪華客船のような物や、戦艦のような物まで様々だ。

 普通の船との違いは、底の部分が平たい事と、側面に飛行機の翼のようなものがいくつか並んでいる事ぐらいだろうか。もっとも、後者は翼にしては小さすぎるのだが。

 ちなみにその両方に、魔法陣のようなものが浮かんでいるのが見えた。

 あの魔法陣のようなものによって、浮遊のための力が作られているのだろうか?

 

 そんな事を考えながら走っていくと、すぐに空港が見えてきた。

 空港とは言うが、見た目は駅――ルクストリア中央駅とあまり変わらず、地球の空港とは大分違う雰囲気だ。

 

 俺は、空港のレビバイク置き場にレビバイクを停めると、そのまま空港の中へと足を踏み入れる。

 と、中も外と同様、駅とあまり変わらない造りになっていた。


 あれこれと空港内を見回していると、案内のアナウンスが流れてくる。

「ローディアス大陸フォーリア公国行き旅客飛行艇、あと10分で出港時間となります。受付がお済みでないご搭乗予定のお客様は、受付カウンターまでお急ぎください」


 ふむ……ローディアス大陸行きか。 

 そう思いながら正面の案内板を見ると、そこには各飛行艇の出港時刻と飛行時間が記されていた。

 

 なになに、ローディアス大陸行き飛行艇の飛行時間は……約15時間半か。

 さすがに約7000キロも離れている所には、飛行艇を使ったとしてもそのくらいの時間はかかるようだ。

 まあもっとも、15時間半で着くという事は、時速500キロ近いスピードが出ているという事でもあるので、かなり速い方ではあるのだが。

 とはいえ……だ。やはりちょっと遠いので、もしローディアス大陸に行く必要がある時は、ディアーナにテレポータルを開いて貰った方が良さそうだな。

 

 と、そんな事を考えていると、

「ソー兄!」

 という声が聴こえてきた。……は?

 

 聞き慣れたその声に、慌てて振り向くと朔耶が頭から突っ込んでくる所だった。

 サラリとそれを回避する俺。

 

 あ、いけね。

 

「ふぎゃっ!」

 床にダイブしてそんな声をあげる朔耶。

 

 アポートで引っ張ろうとしたが、少し遅かったようだ。

 スカートが捲れた時に何かがチラッと見えたが、そこは見なかった事にしよう。

 

「あいたたた……。ちょっと、ソー兄っ! そこは受け止める所でしょ!?」

 あっさり起き上がり、軍人が被っていそうな帽子を拾いながら詰め寄ってくる朔耶。

 ふむ……とりあえず問題はなさそうだな。

 

「いや、こういう時に避けるパターンもあるだろ」

 俺はとりあえず、そんな言葉を返した。

 

「たしかにそういうパターンもあるけど! あるけど! ここでやるのは違う!」

 朔耶はまくしたてるようにそう言うと、むぅ……といった感じで頬を膨らませる。

 

「その……なんだ? とりあえずケガはなさそうだな。無事で良かった」

「……その無事で良かったってセリフ、私のセリフなんだけど……」

 俺の言葉に対して呆れた表情でそう返すと、首を左右に振る朔耶。


「そうは言うが――」

 ……って、なんか普通に会話してしまっているが、おかしくないか?

 …………何故、ここに、朔耶が、いるんだ?

 

「――お前は本当に存在が超展開だな!」

 それ以外に表現のしようがなかった。


「存在が超展開って何!? っていうか、今の会話の流れおかしくない!?」

「いきなりわけのわからん登場の仕方ばかりしてくるお前が悪い!」

「あれ!? 私のせい!?」


 困惑する朔耶。まあ、勢いで言い放った俺も俺だが、こいつはどうしていつも唐突に現れるんだ……ホントに。

 まあ、とりあえず一旦落ち着くとしよう……

 

 スーハー、スーハー。

 

 そんな感じで深呼吸をし終えた俺は、改めて言葉を紡ぐ。

「――その事は置いておくとして、なんでお前がここに?」


「あ、それなんだけど――」

「ふぅ……。ソウヤの幼馴染だとか言ってたから連れて来たんだけど、その感じだと本当にそうだったみたいね」

 朔耶の言葉を引き継ぐ形で、唐突に横から別の声が聴こえてくる。これは……シャルロッテの声か。

 

「シャルロッテ――」

 そう言いながら顔を向けると、呆れ顔のシャルロッテの姿がそこにはあった。


 ……そう言えば、ロンダームっていう名の山岳都市に行ってたんだっけな。

 て事はつまり、朔耶もロンダームにいたってわけか。

 

 そう考えながら朔耶を改めて見ると、緑色のダブルボタンのツーピースに、縁にギザギザの線が入ったケープを身に纏っていた。

 ツーピースの方は、上着が若干中世ヨーロッパのガンビズンっていう服に似ている気がしないでもない。

 うーむ……ブーツやケープのデザイン的に、なんとなく民族衣装っぽさを感じるな。

 どれも新品とは言い難い感じなので、少なくとも最近この世界へ来たというわけではなさそうだ。

 

「ねえ、ソー兄」

 服装を眺めていた俺に、朔耶がそう言葉を投げかけてくる。

 

「ん?」

「色々話したい事はあるけど……。とりあえず一言だけ先に言うよ」

 朔耶はそこで言葉を区切って深呼吸をする。そして、

「――また逢えてよかった」

 屈託のないとびきりの笑顔で、そう言葉を続けた。

 

 ……ああ、そうだな。

 俺もそう思うさ、本当に……な。

地球組が全員登場しました! という所で、第2章は終わりです。

とはいえ……展開的にこの後の間章は、この直後からの話になるで、冒頭は第45話みたいな感じですが。


そして、その間章数話を挟んだ後は、第3章へと入っていきますよー

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