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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第1部 異世界グラスティアの異変 第2章 ルクストリア編
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第41話 絶霊紋とプリヴィータの花

今回はちょっと長めです。

 そんなわけで方針も決まり、ディアーナによって開かれたテレポータルを使い、ディアーナの領域の外に出ようとした所で、

「あ、ソウヤさんはちょっと残っててくださいー。話がありますー」

 なんて事を言ってきた。――はて?

 

「……という事らしいから、先に戻っててくれ」

 俺がそう言うと、アリーセが、

「はい、わかりました。ではお先に失礼しますね」

 そう言って先に外に出て……行こうとして足を止めた。そしてディアーナの方を見る。


「あの……ディアーナ様、最後に1つお聞きしたいのですが……」

 アリーセが、何やら躊躇いながら問いかける。

 

「はいー? なんでしょうー?」

「えっと……その……ディアーナ様は、死者を蘇らせる……とかも可能なんでしょうか?」

 アリーセがディアーナに対し、そんな事を言った。


 なにやらロゼとアーヴィングが、驚き半分、悲しみ半分といった表情をしている。

 いや、表情の読みづらいロゼの方はなんとなくだけど。

 で、これも同じくなんとなくではあるのだが……そんな表情の理由についても、アリーセの言葉で想像がついてきた。

 だがまあ……それに関しては、今は聞かなくてもいいだろう。

 

「死者の蘇生、ですかー? そうですねぇ……死亡直後――5分以内とかであればー、一応、蘇生可能な場合もありますがー、それ以上過ぎるとー、どうやっても無理ですねー」

 と、俺の方をチラッと見ながら答えるディアーナ。

 ……ああ、たしかにディアーナに蘇生されたっけな、俺。

 

「……5分……。なるほど……そうですか」

 非常に残念そうな暗い表情でそう呟くように言った後、首を左右にブンブンと勢い良く振るアリーセ。

 そして、そこから更に二度頷いたかと思うと、そのまま深く頭を下げて感謝の言葉を紡いだ。

「――お答えいただき、ありがとうございました」


「いえー、どういたしましてー」

 ディアーナがそう微笑みながら言った時には、既にアリーセの顔から暗さはなくなっていた。


 ……まあ、無理矢理そういう表情にしたというのが正しいのだろうが、今はまだ触れないでおくとしよう。俺の思っている事は、あくまでも想像の域を出ないし、聞き出すのも何か違う気がするからな。


 そんな事を考えながら、ディアーナの領域の外へ出ていくアリーセを見送る俺だった。

 

                    ◆


「――さてさてー、ちょっとしたハプニングがありましたけどー、本来の用事を伺いましょうかー」

 アリーセたちがディアーナの領域の外へ出たのを確認したディアーナが、テレポータルを閉じながらそう問いかけてくる。

 

「ちょっとした、ではない気もしますけどね」

 俺がため息交じりにそう言うと、

「まあまあー。私としてはー、ソウヤさんを助けてくれる人がー、多くなるのであればー、悪い事ではないと思っていますー。ソウヤさんがー、この世界で生きていくためのー、サポートをー、私はしたいと思っていますからー」

 そんな風に言って笑うディアーナ。

 

「――サポートしてくれるのはとてもありがたいんですけど、どうしてそこまで?」

「魂がこちらの世界にー、定着する前にー、再び命を落としてしまったりしてー、私の蘇生が不可能だったりするとー、またどこかの世界にー、転生してしまう可能性がありますからねー。それを防ぐためにもー、長く生きて貰わないとー。なのでー、最大限のサポートをするんですよー」

 ディアーナが俺の疑問にそう答えてくる。ふむ、なるほど。

 

「そういう事だったのですか……。よくわかりました」

「いえいえー。そういうわけですのでー、お気になさらずにー。それでー、本来の用事は何なのでしょうー?」

 再びそう問いかけてくるディアーナ。

 

「あー、実はさっきの話でほとんど終わっていますね。あと聞きたかったのは……。っと、そうだ、ディアーナ様は絶霊紋ってご存知ですか?」

 と、シャルロッテの例の紋章について問いかける俺。

 

「絶霊紋……ですかー? ――レヴィン=イクセリア双大陸で生み出された『呪法』の事ですかねー?」

「それです。って……あれって呪法なんですね。まあ、たしかにそんな感じでしたけど」

 毎日0時になると激痛に襲われるとか、呪い以外のなにものでもないしな。

 

「呪いとー、呪いを封じ込める術式をー、セットにした感じの代物ですねー。封じ込める方の術式がないとー、ありとあらゆる苦痛を味わわされ続けてー、精神が壊れますー」

「あー、えっと……その『封じ込める方の術式』が施されなかった人がいまして……」

「え、ええー? よく耐えきれますねー? ドマゾの極みかなにかですかー?」

 驚きの表情でそんな事を言ってくるディアーナ。いや、ドマゾの極みって……


「いえ、そうではなくて……ナノマシンみたいな物を使って制御しているようですね」

「ナノマシン……ですかー? えーっと、ちょっと過去を見てみますねー」

 なにやら過去を見るとか言い出したかと思うと、ディアーナはアルミューズ城の地下を覗き見た時のように目を瞑った。


 そして、目を瞑ったまま「ふむふむ」とか「なるほどなるほど」とか、そんな呟きを繰り返していたが、しばらくすると目を開けて、

「封じ込める術式をー、外から無理矢理ねじ込んでいるみたいですねー。たしかにこれなら呪いを抑えられますねー。まあ、常に変化し続ける呪いなのでー、セットになっていない以上ー、呪いが発現してから抑え込むのが限界な感じですがー」

 と、そんな風に言ってきた。そこまでわかるのか……さすがだな。

 

「それって完璧な物に出来ないんですか?」

「んー、そうですねぇ……。ナノマシンを完全な形にするよりもー、絶霊紋自体をー、本来の形にする方が良いと思いますー。ただしー、本来の形だとー、何故か精神操作の術式まで組み込まれているのでー、そっちは外しますけどー」

 そういえば、シャルロッテがそんな事を言ってたっけな。


 ってか、その精神操作の術式は外せるものなのか。

 ああでも……当然だけど精神操作をする側の人間もいるわけだから、意図的に組み込んだり外したり出来るのは当然といえば当然かもしれないな。


「――絶霊紋を完全な形にする事が出来るんですか? どうやって?」

「術式自体はー、そんなに難しい事をしているわけでもないのでー、必要な物を揃えられさえすればー、ソウヤさんにも出来ますよー」

「あ、そうなんですか? でしたら、その必要な物……というのを全て集めれば?」

「はいー、そういう事ですねー。えーっと……ちょっと待ってくださいねー」


 ディアーナがどこからともなくペンと紙を取り出し、何やら書き始める。

 そして全て書き終わると、それを俺に手渡してきた。

 

「それで全部ですー」

 そう言われた俺は、渡された紙に目を落とす。

 

 なにやらずらりと名前が並んでいるな。うーん……なんちゃらの皮だの骨だのと、害獣の素材っぽいのから草花っぽいのまで色々あるな。

 っていうか、全部で10以上か……

 RPGとかだったら、こういう『何々を揃えてこい』系のクエストは、そこまでの種類を要求されない物なんだが……現実とは恐ろしいものだな。

 いやまあ、逆に同じ物を1000個とか10000個とか要求されない分、こっちの方がいいっちゃいいかもしれないが。

 

 ――なんていうしょうもない事を思っていると、ディアーナが、

「多分ですがー、一番下のプリヴィータの花以外はー、手に入れるのに苦労するような物はないと思いますよー?」

 と、そんな風に言ってきた。

 

「あ、そうなんですか? そうすると逆にそのプリヴィータの花っていうのは、咲いている場所が厄介な所だったりするんですか?」

「んー、そうですねー、ある意味厄介ですねー。少し前まではー、レヴィン=イクセリア双大陸にあるー、『常世の大樹海』と呼ばれる巨大な森の中にー、大規模な群生地があってー、そこで採取出来たのですがー、その絶霊紋を先祖代々受け継いできた者たちがー、野盗の集団によって滅ぼされた際にー、そこがー、全て焼き払われてしまったのですよー」

 ディアーナが、俺の質問にそう返してくる。

 

 常世の大樹海……? アルミナでクライヴが口にしていた地名だな。たしか、魔法や魔煌具が使えなくなる遺跡がある場所だったはずだ。

 しかしそうなると、絶霊紋を代々受け継いで来た者たち――つまり、シャルロッテの故郷の近くに遺跡があったという事になるな……

 うーむ、なんだか色々と繋がっているような気がするな。そして、そう考えるのであれば、件の野盗どもがただの野盗であったなどというのは逆に不自然というものだ。

 

「――その野盗どもって、本当に野盗だったんですかね?」

 そう問いかけてみるが、ディアーナは眉間にしわを寄せて考え込んだ後、

「うーん、どうなんでしょうねぇ……? 今の話はー、アレストーラ教国で発表された内容ですからー、真実がどうなのかはー、残念ながら私にはわかりませんねー。でもー、ソウヤさんが感じたようにー、どう考えても怪しいのはたしかですけどー」

 と、言ってきた。さすがにディアーナでもそこまで知るのは難しいようだが、怪しいのは間違いないな。……アレストーラ教国も含めて。


「なるほど。少しアレストーラ教国には気をつけておいた方が良さそうですね」


 クライヴが過去を語りたがらないのは、アレストーラ教国の何かが関係しているんだろうな、多分。

 ああそれと、アリーセたちが出会ったシスティア・レティア・アルマティアとかいう、妙に韻を踏んだ名前を持つ傭兵もそうか。


 俺はその事をディアーナに伝えると、ディアーナは、

「なるほどー。そういった特定出来る何かがある物に関してはー、調べやすいのでー、後でちょっと確認してみますー」

 と、そんな言葉を返してきた。よくわからないが調べやすいらしい。

 うーむ……それにしても、なんだかディアーナにこっそり人の過去を暴かせているみたいな感じで気が引けるな……。まあ、仕方がないっちゃ仕方がないんだけど……


「さて、アレストーラ教国の件はそんな感じでいいとして……話を元に戻しますが、プリヴィータの花って常世の大樹海以外ではどこで手に入るのでしょう? まさか、そこにしかなかった……とか?」

「そんな事はありませんよー、そこに関しては心配せずとも大丈夫ですよー。まあ、育つ環境がかなり特殊なのでー、適合する場所はー、あまりないんですけどねー」

 もうどこにも咲いていないとか言われたらどうしようかと思ったが、そんな事はなさそうだ。もっとも希少である事には変わりないっぽいけど。

 

「フェルトール大陸内ですとー、ディンベル獣王国の霊峰アスティアに咲いているんですけどー、王家の紋章に使われている事もあってー、しっかりと管理されているのでー、テレポータルを繋いでー、こっそり立ち入って採ってくるというのもー、難しい気がしますねー」

「なるほど……。話を聞く限り、なかなか厳しそうな感じですね……」

 王家の紋章に使われているくらいだし、花盗人への警戒は厳重だろうからな。


「他にはー、ローディアス大陸のー、コルナム氷原とー、アデルカーナ砂漠の境界あたりにも咲いている場所があるようですがー、あのあたりはー、魔力――最近は魔煌波って言うんでしたっけー? それの乱れが酷いのでー、テレポータルを繋げられないんですよねー。なのでー、氷原か砂漠のー、どちらかを横断する必要がありますねー」

 ……なんだか聞いた事もない場所だな。

 というか、氷原と砂漠が隣接しているとかどんな環境だよ……そこ。

 

「うーん、どっちも厄介ですね。ああでも……アーヴィングに協力して貰えば、ディンベル獣王国の方はどうにか出来る可能性はあるなぁ……」

 なにしろアーヴィングは国家元首だからな。俺が単独で獣王国の王家に会って話をする……というのよりは、難易度が下がるだろう。かなり。

 

「――よし、別の大陸まで行くのは厳しいので、とりあえず獣王国の方で考えてみますね。……全部揃ったら、また呼べばいいですかね?」

「いえー、私が渡した『この世界について色々書かれている本』の307ページにー、術式――儀式のやり方を記載しておいたのでー、そちらを見てくださいー」

 俺の問いかけにそんな風に返してくるディアーナ。

 

 ……どうやっているのかはさっぱりだが、どうやらあの本の中身がリアルタイムに追記されたようだ。まあ……後で見ておくとするか。

 

「さてー、こんな所ですかねー?」

「そうですね。また何かあったら来ます」

 俺がディアーナに対して、そう言葉を返すと同時にテレポータルが開かれる。

 

「はいー。いつでもお待ちしていますねー」

 というディアーナの言葉に見送られながら、俺はディアーナの領域を後にした。

なんだか冒頭の部分は、前回の部分にくっつけても良い気がしますね……


さて、今回の話の内容から分かる通り、次の章はディンベル獣王国です。

……なんですけど、何やらそれ以外の地名も出ていたり……?

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