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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第1部 異世界グラスティアの異変 第2章 ルクストリア編
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第40話 竜の血盟と裏位相

「まさか、そんな事が起きていたとはな……」

 アリーセから話を聞いた俺は、腕を組んだままそう呟くように言うと、組んでいた腕を左右に開き、首を左右に振ってから続きの言葉を紡ぐ。

「で、それ以上に驚きなのは室ち――秋原さんがこっちに来ていた事だけど」


 どうやってこちらの世界に来たのかさっぱり分からないが、とりあえず室長がいるという事は理解した。ついでにキメラや竜の血盟が存在している事も。

 

 ――そして、ふと思う。

 先日、アリーセの家に侵入して来た珠鈴にそっくりの女性は、そっくりなのではなく、本人だったのではないだろうか、と。

 というか、そうであるならばシャルロッテの使う刀の技……あれ、実は蓮司本人が教えた物なんじゃなかろうか……?

 

 しかし、銃ってこの世界に存在していなかったんだな。

 もっとも、魔煌弓はあるのに、同じような原理で作れるであろう魔煌銃がないという時点で、なんとなくそんな気はしていたけどな。

 でも、なんで存在しないんだ? というかそもそも、どうして室長は銃を作らなかったんだ? なにか作れない理由でもあるのだろうか?

 

 ……まあ、そこらへんは室長と話してみればいいか。

 近い内に会う事になるだろうしな。

 

 うーむ……。それにしてもなんというか、色々とわけのわからない状況になってきたなぁ……

 

 と、そんな事を考えつつ心の中でため息をついていると、

「竜の血盟ですかー、古の時代に存在したー、研究機関とー、同じ名称ですねー」

 なんて事をディアーナが口にした。

 

 ……そう言えば、『古の時代に異世界へと繋がる門を生み出す研究をしていた人がいた』って、この世界に来た直後にディアーナから言われたな。

 っていうか、それを聞いて俺は調査を手伝おうと思ったんだし。

 

 そして俺はふと思う。この『古の時代』っていうのが何年前なのか、と。

 もしかして、億単位の昔なのでは? と。

 

「その古の時代というのは、どのくらい昔なんですか?」

 そう問いかける俺に対しディアーナは、

「んー、大体ですがー、2億と48万5300年前くらいですかねー」

 さらりとそう答える。……ああ、やっぱりか。

 

 だとすると……あの遺跡が、その『古の時代に異世界へと繋がる門を生み出す研究』が行われていた施設なんじゃなかろうか……?

 なにしろ冥界の悪霊――つまり『異界』の魔物が現れたくらいだし。


「なにか気になる事でもー?」

 俺が考え込んでいると、ディアーナがそう問いかけてくる。

 

「アルミナで訪れたあの遺跡の事を覚えていますか?」

 ディアーナの問いかけに対し、そう問い返す俺。


「もちろんですー。正体不明の化け物のー、封印が解けかけてー、冥界の悪霊がー、顕現するようなー、状況下になっていましたねー。あの時はー。まあー、今は安定していてー、冥界の悪霊がー、顕現する事はなさそうですがー」

 そう言ってくるディアーナ。ふむ……。なら、再びアルミナ近辺に魔獣が出現するような事はなさそうだな。一安心って感じだ。まあそれはともかく――


「その遺跡が、約2億年前の物である可能性が高そうなんですよ。あそこで発見された遺物を解析したら、そのくらい前の物だったので……」

「ふむー、なるほどー。つまりソウヤさんはー、あそこはー、異世界へと繋がる門をー、生み出す研究がー、行われていた施設でー、冥界の悪霊がー、顕現したのはー、その影響であるとー、そう考えるのですねー?」

 俺の言葉を聞き、言いたい事を理解したディアーナがそう述べる。うーむ……この理解力の高さは、さすがというべきか。

 俺はそれに対して頷き、その通りである事を告げる。


「たしかにー、可能性としては大いにありえますねー。それとは別にー、あの化け物自体がー、異世界へと繋がる門を開くー、鍵である可能性もありえますー」

「……なるほど。たしかにありえますね」

 ディアーナの言葉に頷く俺。

 なにしろあの化け物を再封印したら、その直後から魔獣や冥界の悪霊が出現しなくなったからなぁ……

 

「……先日のアルミナの事変に、ディアーナ様も関わっていたんですね。てっきり、ソウヤさんとソウヤさんの里の仲間の方だけかと思っていました」

「あー、まあ、あえてディアーナ様の事は口にしていなかったからなぁ……。っていうか、口にしても信じられずに終わるか、もしくは逆に大事になるか……どっちかな気がしたし」

 アリーセの言葉にそう返すと、アーヴィングが腕を組みながら、

「ふむ……。実際、ソウヤ君がアルミナの討獣士ギルドにそう報告したら、おそらくその時点で大事になっていただろうな。あそこのギルドの支部長――ロイドは、ソウヤ君のその言葉を信じただろうし」

 なんて事を言ってくる。

 

「うん? ロイド支部長とも知り合い?」

「ああ、古い友人だよ。というか……だからこそ、その事変に関しての様々な情報をいち早く得る事が出来たわけだしな」

 ロゼの問いかけに対し、そんな風に言葉を返すアーヴィング。

 

 ……なるほど。いくら国のトップだからとはいえ、アルミナでの出来事に関して妙に詳しすぎる――それこそ、見てきたかのように知っていると思ったら、そういう事だったのか。

 

 俺がロイドとアーヴィングの関係に納得していると、何かを思案していたアリーセが口を開いた。

「――2億年前の遺跡……。もしかして、アルミューズ城の地下にあった『門』もそうなんでしょうか?」

 

「ふむ……『門』という点で何か関係があってもおかしくはないな」

 そう言葉を返しながらディアーナの方に視線を向けると、

「アルミューズ城の地下、ですかー? ちょっと見てみましょうかー」

 俺の視線の意図を察したらしいディアーナが、そう言ってアルミナの時と同じように目を瞑る。

 

「んー、たしかに変な門……いえ、これはー」

 そう言った後、口をつぐみ指を口元に当ててしばし考え込むディアーナ。


 そのまましばらく待っていると、目を開き、

「うーん、やっぱりですー。この門はー、裏位相コネクトゲートですねー」

 と、そんな事を言ってくるディアーナ。


「えっと……裏位相コネクトゲート……ですか? それは一体どんなものなのです?」

 アリーセがそんな風にディアーナに問いかける。俺も同じく知りたい。


「はいー。簡単に言うとー、裏位相空間という名のー、異次元空間の出入口……みたいなものですねー。で、このアルミューズ城の地下にある出入口はー、裏位相空間にある『遺跡』の本体に繋がっていますねー」

 そう説明するディアーナ。アリーセはいまいち理解出来ないようで、ポカーンとしている。


「ふむ……要約すると亜空間に遺跡があって、そこへ行くためにはあの門を使う必要があるという事ですね」 

 そう俺が言うと、ディアーナはその通りだと言った後、

「ちなみにー、こじ開けるのは無理でしたー。門を開くためのー、正規の条件をー、満たすしかありませんねー。ちょっとややこしい術式ですがー、解析出来ると思うのでー、解析しておきますねー。条件が分かったら伝えますー」

 なんて事をさらっと言ってきた。


 ……どうやら、いつの間にかこじ開けるのを試みていたようだ。

 しかし、そっちは無理でも条件を解析する方は出来るのか。相変わらずとんでもないな。

 

「ディアーナ様でも解析が必要な術式が施された遺跡……ですか。これはまた、なかなか厄介そうな場所ですな。――ふむ、軍の精鋭部隊を送っておくとしよう。……ああ、件のゴーレムが現れた時のために、クレリテ殿にも協力を要請しなくては」

 アーヴィングが呟くようにそんな事を言う。

 ……クレリテ? 誰だ? 

 

「ん? クレリテ? 誰?」

 俺が思った事をそのまま言葉にするロゼ。

 

「この間、円月輪の話をした時に知り合いの魔女がいると話しただろう? その知り合いの魔女の事だ。昔、ロイドと共にとある事件を追っていた際に偶然出会ってね。それから度々協力して貰っている」

 そう説明してくるアーヴィング。

 あー、そう言えば知り合いの魔女がどうとかこうとかと、そんな事言ってたっけな。円月輪の話になった時に。

 

 ふーむ……という事は、軍の精鋭部隊のみならず魔女までが、門の警戒および防衛に加わる形となるわけか。

 それだけの戦力があれば、あの男やあの男の仲間が現れたとしても、そうそう簡単に突破されたりはしないだろうし、ひとまずは安心そうだな。となると――


「とりあえずディアーナ様の解析待ちをしながら、他にアルミナの遺跡のような遺跡がないかを調査するのが良さそうだな」

 俺がそう言うと、アリーセたちアーヴィング一家が揃って頷く。


 俺はそれを見ながら、なんだか変な事になってしまったが、この一家が味方なら頼もしいのはたしかだな。なんて事を思うのだった――

1章冒頭での話にようやく繋がりました……


追記

誤字を修正いたしました。

ご報告ありがとうございます!

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