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サイキッカーの異世界調査録(サーベイレコード)  作者: TOMA
第1部 異世界グラスティアの異変 第2章 ルクストリア編
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第38話 マジカルで作成したデザイン画を見せよう

 アリーセたち3人に色々聞いた翌朝――


 とりあえず、アリーセたち3人のお気に入りの服と、昨日見た服の中で気に入った物を混ぜてデザインした物が出来たので、3人に見せてみる事にした。


「え? もう出来たの?」

「ああ。色々聞いている間に方向性は固まっていたからな。とりあえず描いてみた感じだ」

 俺はシャルロッテの問いかけに言葉を返しつつ、テーブルの前に立ち、

「って事で、まずは……アリーセのからだな」

 と、言葉を続けながらデザイン画をテーブルの上に置く。

 

 和装――というか着物特有の丈の長い袖が気に入っていたようなので、着物をベースに、袖口をサンタ服の白い部分みたいな感じにしたカーディガン――前を閉じるとコートのようにもなる――と、その内側に黒いハイネックのインナーと、幅広の帯を付けたノースリーブの袢纏(はんてん)もどきがあり、下は(はかま)風のロングなプリーツスカートだ。

 

 袢纏もどきは、黒いハイネックのインナーと縫い合わせて一体化されているため、帯はたんなる飾りでしかない。

 帯って、慣れていないと扱いが難しいから、ただ被って着るだけでいいように、こっちの方が良いだろうと思ったんだがどうなのだろうか。

 

「これは良いですね! あ、でも、インナーと分離出来るようにして、帯でベルトのように袢纏? というものを縛れる感じにしたら使い勝手が良くなるかもしれません。あと、帯のところに飾りがあるといいかもしれないです」

「なるほど……。じゃあそんな感じで調整してみるか」

 アリーセの感想を聞き、少し考える。

 ベルトのように調整……スライド式にすればいいか。たまにズボンとかで見かけるベルトが組み込まれている奴みたいな感じだな。

 あと、帯の飾りはなんか考えよう。

 

「さて、アリーセの次は……ロゼのだな」


 学院の制服が好みで、忍装束(しのびしょうぞく)が気に入っていたようなので、忍装束……というより、物語に出てくるような、くノ一的な装束をベースに制服と組み合わせてみた。

 いわゆる作務衣(さむえ)の上部分の袖を短くして、襟をセーラーカラーにした感じだな。セーラーカラーの所には和風のリボンもしっかりと付けてある。

 

 下はスカートで、こっちは学院の制服のスカートとあまり変わらないが、柄を和風にした感じだな。アリーセの袴風のスカートに似ているので短めにして差別化した。

 

「ん、動きやすくていいと思う。でも、帯っぽいものが欲しい。(かんざし)みたいな投擲(とうてき)武器を挟んでおけるように」

 なんてことを言ってくるロゼ。


 簪は投擲武器ではないのだが……。っていうか、そもそも投擲武器を挟んでおくという前提が良くわからんが、まあ……そこはロゼだしいいか。うん。

 アリーセと同じく帯のところをスライド式にしておけばいい。

 

「まあ、そのくらいなら簡単だな。ってなわけで、次。――最後はシャルロッテのだ」


 案の定というかなんというか、ゴスロリ風な服が好みらしいシャルロッテ。

 市松(いちまつ)模様が気に入っていたので、その様子を入れつつゴスロリ服っぽくしてみた。

 ……シャルロッテのが一番厄介だったというか、一番時間がかかったんだよなぁ。

 

 とりあえず、姫とかが着そうな着物をベースにして丈の長い袖の袖口をカフスっぽい感じにして、フリルをくっつけてみた。

 ちなみに袖口の下端には蝶結び状にした紐リボンを付けてあり、更に袖の下半分くらいは、斜めにした市松模様にしてある。

 あと、着物がベースなので胸元が空くため、ここにもフリルをくっつけておいた。

 

 スカート部分は、十二単衣(じゅうにひとえ)のように多重にしてある。まあ、多重チュールスカートとか言われるのに似せた感じだな。ついでに、スカート部分の上部――腰の上あたりには、お端折(はしょ)りと呼ばれる余った部分を()()った物を模した感じにしてある。

 

 腰回りは、コルセットっぽい見た目の帯に、編み上げ風にした帯揚(おびあ)げを付けた。コルセットっぽくしてあるので、帯ほど縛るのが難しくなく、付けなくてもいいし、代わりにリボンとかを付けてもいい、という風にしてある。

 

「あら、なかなかいい感じね。この市松模様……だったかしら? この柄が斜めになっているのがなんだか面白いわ。うん、特に調整して欲しい所とかはないわね」

 と、シャルロッテからは特に調整点を言われなかった。


「それじゃあ、こんな感じで他にも描いてみるか」


 ……

 …………

 ………………


 というわけで、2日ほどかけて和要素が濃い物から薄い物まで、色々なバリエーションで20種類ほどの服のデザインを描いてみた。

 このくらいの種類があれば、とりあえずは大丈夫だろう。


 既に日が沈みかけていたので、アヤネさんの所へ行く前に誰かに話をしようと思ったが、メイドさん以外には誰も家にいなかった。シャルロッテは昨日から遠出していていないのは知っているが、他の面々も今日は皆帰ってくるのが遅いな……


 仕方がないので、メイドさんに出掛けてくる事を伝えると、俺は外に停めてあるレビバイクに跨り、アヤネさんの店へ向かって走り出す。


                    ◆

 

「こんな感じで描いてみましたが……どうでしょう?」

 俺は、ちょうど店じまいをしていたアヤネさんに声をかけると、店内に置かれているコタツに描いた物を広げる。

 ……何故、店内にコタツがあるのか良く分からないが、まあ今はおいておこう。


 アヤネさんは広げたデザイン画を何点か見るなり、 

「これはまた、なかなか面白いですね! 西大陸の衣服と、アカツキの衣服が上手く融合しています!」

 喜びと驚きの入り混じったような声を上げた。

 ふむ……これは、なかなかの好感触だと言ってよさそうだな。

 

 それにしても、西大陸って言い回しする辺りはアカツキの人らしい感じだな。アカツキから見ると、たしかにこのフェルトール大陸は西にあるからな。

 まあもっとも……フェルトール大陸は南北に長く、大陸の南端から東を見た場合、アカツキのあるグラズベイル大陸とは違う別の大陸――ローディアスという名の大陸があるので、フェルトール大陸側の人間が、グラズベイル大陸を東大陸と呼ぶ事はほとんどないのだが。

 

 ……などという、割とどうでもいい事を考えていると、アヤネさんが俺の手渡したデザイン画を一通り見終えたらしく、

「大分細かく描かれておりますし、これであれば、今お店にある物を上手く調整、改良する事で出来そうです!」

 デザイン画を手に持ったまま、そんな風に言ってきた。

 

「それは良かったです。作るのが難しいとか、デザインが微妙とか言われたらどうしようと、内心では思っていたので、一安心です。あ、出来上がったら見せてくださいね」

 そう俺が言うと、アヤネさんは頷き、

「はい! それはもちろんです!」

 そう勢いよく答えた後、苦笑して、

「ただまあ……数が多いので、1週間くらいかかると思いますが……」

 なんて言ってくる。

 

「あー、たしかに少し多かったですかね……。でも、1週間くらいで出来てしまうんですね」

「そうですね。とはいえ……昔でしたらもっとかかったと思いますよ。今は色々と便利な魔煌具があるので、そこまでかからないですけど」

「あ、そうなんですか。なんというか、魔煌技術サマサマですね」

「ふふっ、たしかにそうですね」

 

 実際、俺も魔煌具を使ってこれらを描いたし、やはり魔煌具の有用性は計り知れない。

 例え魔獣が出現するリスクがあろうとも手放せない、というのは良く分かるな。


                    ◆


 ――アヤネさんは早速作成に取り掛かるらしいので、俺は邪魔をしないよう店を後にした。

 

 店を出ると、日が完全に沈んで降り、周囲は真っ暗……ではないか。

 魔煌灯の明かりがそこかしこにあるため、夜とはいえ真っ暗ではなかったりする。

 店の看板がネオンっぽい――魔力を調整して光の色を変えた魔煌灯らしい――光を放っているあたりは、なんとなく地球と似ているな。

 

 ……って、そう言えば夜のルクストリア市内を見るのって、何気に初だな。

 ルクストリアは治安が良く、夜に出歩いた所で特に危険などはないし、むしろ夜に開いている店もあったりするような都市なのだが、なんというか……あえて夜に出歩く気にはならなかったんだよなぁ、今まで。

 まあもっとも、夜に開いている店があるとはいえ、ルクストリアの外から仕事や買い物などに来ている人は、大体が既に帰宅しているか、あるいは帰途についている時間帯なので、昼間に比べると市内の人通りは少ないのだが。

 

 ふむ……という事は、大聖堂も昼に比べて人が少なそうだな。

 そろそろディアーナに話をしたい所ではあったし、このままついでに大聖堂へ行ってみるか。

 

                    ◆


 そんなわけで大聖堂へ来てみると、昼に比べて少ないどころか、誰もいなかった。

 途中の階段で遭遇したシスターっぽい格好の女性から聞いた話によると、24時間開かれているとはいえ、闇の力が強いとされる夜に訪れる人は稀なんだとか。

 なんでも、闇の力に阻害されて祈りが届きにくいとかなんとか……

 

 うーむ。地下にある時点で、昼だろうが夜だろうが闇の力が強いんじゃないかという気もしないではないが……

 いやそもそも、ディアーナには光も闇も関係ないんじゃなかろうか?

 ああでも待てよ……。アルミナで地下神殿遺跡を探索した時は、光属性と思われる術をメインに使っていたっけな。少しは関係ある……のか?

 

 なんて事を考えながら、俺は大聖堂の入口――階段からは死角となる場所に移動し、例のオーブを取り出す。


「ディアーナ様、聞こえますか?」

 念のため、ちょっとだけ声を小さくして呼びかける俺。

 

 アルミナ……というか、夜明けの巨岩の時と同様、オーブに染みのようなものが浮かび上がり始め、それからほどなくして、俺の良く知っているディアーナの姿となる。

 

「――はいー? ソウヤさん、どうかしましたかー?」

 ディアーナの声が聞こえてくる。

 

 と、その直後……カツンという物音が響き、それと同時に、

「え?」

 という声が後方から聞こえたのだった――

おや? 誰か来た……じゃなくて、誰か居たようですね。

誰でしょうね? という所なんですが、次話からは1日ほど時間が戻ります。

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