第8話 『商業組合レボリューション』
トライズンより馬車を飛ばしてセントランス領に戻ったリョーマとセバスチャンは急ぎ新たにザベート王国の商業組合本部へ加盟しセントランス領に〝商業組合レボリューション〟を立ち上げる。このギルドではまずリョーマが錬金した様々なポーションを大量に取り扱う事にし…特に目玉商品として推すのが特級回復薬ポーションだ!そもそもポーションは各国の様々な商業組合が扱っているがそれは中級までであり、上級回復薬ポーションは滅多に市場には現れない。
〝儂が上級回復薬ポーションを遥かに凌ぐ特級回復薬ポーションを扱うともなれば、他の商業組合が放っておくはずもない!必ず取り入ろうとしてくるはず…そうなった場合逆に返り討ちぜよ♪〟
この特級回復薬ポーションとはリョーマがトライズンでワイバーンに襲われた子連れの母親に使用した物で傷は愚か、斬り落とされた腕や胴体すら生きていれば完治させてしまうという代物であった————。
「ではこのギルドの代表は一時的ではありますが僕が着任し、時期を見てセバスチャンに代表を任せます」
「はい! 今は旅商人として国籍を持たない方が動きやすいですからね」
「あとセントランス領の名産商品を扱う予定ですが他に何かありますかね?」
「そうですねぇ〜塩なんかは貴重ですし、質のいい武具何かも錬金出来ればいい商品になるのでは?」
「成る程… その程度なら錬金出来なくないですね」
「他にも思いついたらお伝えします」
「ありがとうございます! 頼りにしてますねセバスチャン」
商業組合レボリューションを立ち上げ本格的に始動しだした頃…やはり予想通り王都の主立ったギルドがコンタクトを取りに来た。中でもあからさまな態度で来たのが本部の代表だった。
「どうも初めまして…私は商業組合王都本部の代表ザル・カッパーニと申します」
「どうもレボリューションのセントランスです」
「この度ご挨拶に伺いましたのはセントランス卿のレボリューションで扱っているポーションについてなのですが!」
「はい どうされました?」
「困るんですよねぇ〜 正直本部よりも優れた商品を扱いになられるのは!!」
「ハハハッ 正直な方ですね …しかし商業組合の決まりは売上高の20%を税として納める事と必ず主たる組合に加盟する事、それに商品の値崩れ防止に努める事ってだけでは?」
「確かに! ですのでレボリューションさんにはお願いに参った次第です」
「お願い?」
「我々にレボリューションさんの特級回復薬ポーションの卸販売権利をお譲り頂こうと思いましてね」
「成る程… 体裁の為ですか?」
「もちろんそれもありますが! 商業組合王都本部ですら扱えていない特級回復薬ポーションですので、こんな片田舎では折角の特級も宝の持ち腐れでは?と思いましてね! 我々なら超御得意様の貴族様方を顧客に持っておりますし♪」
「ふむっ…一応私も貴族ですけど?」
「うっ……」
「貴族の顧客が必要なら私の人脈でいくらでも作れますよ♪」
「くっ……」
「それはそうと本部のギルドさんは他にこれぞ!という商品は何を扱いですか?」
「ハハハッ! 我々の一番の商品は専属契約している一流ドワーフ職人による武具なんかですかね」
「ほぉ〜 それはこのオリハルコンの魔法剣やミスリルのフルプレートなんかよりも凄いんでしょうなぁ〜?」
「なッッッ!!!」
「因みにレボリューションではこの様な武具の在庫を一万点程確保してあります!」
「いっ、一万点———————ッ!!!?」
「更に特級回復薬ポーションはその倍の数程所有しておりますので我々レボリューションの価値は既に本部さんと同等の価値があると考えておるのですが如何ですか?」
「ばっ、ばっ、倍ぃぃッ!!!!?」
「特級回復薬ポーションって一本辺り白金貨500枚ぐらいですから仮に権利を買うなら白金貨1千万枚は必要ですねぇ〜♪更にその卸権となると一体幾らご用意するおつもりですか?」
「ちょっ、ちょっと用事を思い出しました! まっ、まっ、またお伺いします セントランス卿」
「そうですか 何もお構いもできずに申し訳ない」
「それでは……」
儂はトライズンを旅立って直ぐに《意欲》で講話交渉術の能力を手に入れレベルを高めていた。こんなに早く役立つとは思ってもみなかったが取得しといて正解ぜよ!
「セントランス卿 終わりましたか?」
「セバスチャン…僕の事はリョーマと呼んで下さい! これからは同志なんですから!!」
「分かりました… リョーマ」
「よしッ! ではここらでセバスチャンの出番ですよ♪」
「私の?」
「ふふふふっ……」
儂はセバスチャンにレボリューションの商品を他国への売り込みに旅立ってもらった。他国でも商業目的ならば入国が許される事が多く、レボリューションの知名度を上げる目的が狙いであった!その狙いとは他国へのパイプ作りと折角立ち上げたレボリューションを他の大きなギルドに簡単には潰させない様にする為ぜよ♪
こうして一年後……
リョーマの狙い通り商業組合レボリューションは忽ちその名を轟かせ、その勢いはとどまる事を知らずレボリューションは本部をセントランス領に置き、クライシス殿下の力もあって各国の王や権力者と面会を果たすリョーマは次々とレボリューションの支部を各国に置く許可を得る事に成功 ! こうしてレボリューションを見事大ギルドへとスピード成長させていった!!
「リョーマ正直驚いている…… 今ではトライズンを始めとし武闘大公国ライオネルや聖騎大公国ムサナにまで支部を置き! 僅か一年足らずでここまでレボリューションを大きくさせるとは畏れ入った」
「セバスチャン… まだまだだよ! 確かにザベート王国を買い取れるであろう資産をレボリューションは持っているが勝負はまだこれからさ!!」
「では遂に————ッ!?」
「あぁ…… 革命開始だッ!!!」
ーーー《ザベート王国 王城》ーーー
「クラックス国王陛下! お呼びで?」
「うむっ 財務大臣バハムよ 最近レボリューションなる商業組合が肥大化しとるそうじゃな?」
「ハッ! まさに仰る通りで御座います」
「話では我が国では飽き足らず他国にまで支部を構えておるそうではないか?…実に目障りじゃのぉ〜 即刻潰せ!!」
「それが……そのぉ〜…………」
「なんじゃ? 申してみよッ」
「ハッ! 只今我が国の財政を担っているのはそのレボリューションで御座います」
「ッッッ!!!! 何だとォォッ!?」
「今や我が国へレボリューションが納めている税金は年間総額白金貨6000枚!! これを失う事になれば我が国は破綻してしまいます……」
「それではレボリューションに我が国は命を掴まれているも同然と申すか!!!」
「それは…その…… はい………」
「くっ! …聞けば男爵家の子供が代表を務めているそうだな? ならば王族の余はその男爵よりも下と申すかッ!?」
「めっ、滅相もございません!! そのような事は断じて…」
「くぅぅッ………」
コンコンッ…
「誰だぁッ!!!」
「国王陛下に面会を申し込んで来ている者が御座います!」
「面会じゃと!? 誰じゃ?」
「ハッ! 名をレボリューションの代表セントランス・リョーマと申しております」
「なっ、何ィィ—————ッ!!?」