第3話 『神級能力』
儂は週に三度ケナの店に行くようになった…何故なら錬金術を間近で学ぶ為だ!錬金術で薬草を回復薬に調合するにはまず薬草に術者の魔力を練り合わせて調合していく、次に火力を調整しながら湯煎させ冷ましてまた魔力を練り合わせる。基本この工程を何度か行えば回復薬…ポーションの出来上がりだ。
熟練の錬金術士になればこの作業を一度行うだけで何本ものポーションが作れるそうだ!ケナはまだ新米らしく数度の工程を経て5〜10本程度のポーションしか作れないそうだけど、かなり勉強になる。
薬草をケナの店に卸し錬金術の勉強をしたら、午後からはローラとお昼を食べて食後の運動と称して遊んでいる。まぁまだ5歳だし少女と遊んだっていいじゃないか!中身は31歳のオッさんだけど…。
そして週の三日は父上と姉上の剣術稽古を受けている。
相変わらず儂は姉上にポコスカやられておるが、正直避けたり躱したりしようと思えば出来なくもない。しかし儂が生前の様な動きを見せて二人に変な火が付いても嫌なので敢えてやられている。街へ行く時間を剣術稽古に潰されかねないからな…
そして夜は魔力操作の鍛錬ッ!なんとか枯渇寸前を見極めれる様になってきたので気絶はせずに済んでいる。
そして月日は流れ5年後…儂も遂に10歳となった!
「お誕生日おめでとうリョーマ」
「パパ、ママ、マリアンヌ、ミミもありがとう」
「さぁ食事にしよう」
「今日はミミも席について一緒に食べてよ」
「えっ!? いえ…私はメイドなので」
「何言ってるんだ家族じゃないか 僕の誕生日何だから一緒に食べようよ いいでしょ?パパ、ママ」
「えぇ ミミも一緒に食べましょう」
「奥様…」
「さぁ座りなさい」
「旦那様……分かりました 御一緒致します」
「さて…リョーマも10歳になったんだ これでお前にも神様から能力を授かり受けたはずだがどんな能力を授かったのか感じ取れるかい?」
この世界では10歳になると自然に能力が発現し、使用できる仕組みらしい。どんな能力を得たのかは自然と頭に浮かんで来る…嬉しい事に儂は念願の錬金術の能力を得ていた。まぁ儂の場合鑑定眼で視る事も出来るのだが、何とも奇妙な特殊能力も授かっておった。
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名前:セントランス・リョーマ
性別:男
年齢:10歳
レベル:4
前世:坂本龍馬
称号:転生神の加護
能力:剣術Lv3/錬金術Lv15
特殊能力:鑑定眼Lv5/意欲Lv1=積極的に取り組むとそのまま自身の能力として取得出来る神級能力。
〝神級能力って何ですかぁぁぁッ!!!〟と心の中で雄叫びを上げた儂は平然を装い、この《意欲》の事は伏せておく事にした。
「れっ錬金術の能力と剣術の能力を得た様です」
「まぁ! リョーマが熱心に勉強しているという錬金術の能力ね♪ 良かったじゃない」
「あっ、ありがとう マリアンヌ」
「そうか剣術の能力も得ていたか♪さすが俺の息子だッ! ハッハッハッ」
父よ…幸せそうでなによりだ。
恐らくだがこの錬金術の能力は意欲によるものだろう…熱心に取り組んできた為、能力として得たと考えた方がいい。何故なら発現していきなりLv15だ!これは5年間ケナの元で錬金術を学べるだけ学んできたからに違いない!!転生神キュラソウめ…中々嬉しい贈り物をしてくれたものぜよ♪
儂は早速父上に頼んで庭に錬金部屋を作って貰った。
儂はこの錬金術Lv15で何処までの事が出来るのかをまず試した…上物薬草やその他薬草はかなりの量採取していたのでポーションを作れるだけ作った。するといきなり下級、中級、上級の回復薬ポーションが作れてしまい驚愕ッ!しかもポーション作成を一度の工程で済ませてしまった。いきなり師匠越えである!!
「さすがに特級回復薬までは作れなかったがケナには何て言おう……傷つくだろうなぁ」
儂はレベルの事は伏せてケナに錬金術の能力が発現した事だけを報告!不器用な口調でケナに告げると凄く喜んでくれて、お祝いにケナお手製の中級回復薬ポーションをプレゼントしてくれた。
…正直嬉しかった!師匠と思っている人がこんなにも儂の事で喜んでくれている事に感動すら覚えた。その反面レベルの事を伏せているのが心苦しくもあったが、言わなきゃ分からない!鑑定眼が無ければ他者のステータスは覗けないし、このまま黙っていよう。
「そういえばローラも先日10歳になったんだっけ? 帰る前にどんな能力を得たのか視に行こッ♪」
ローラの家は元々何処かの国の由緒ある家柄だったらしいのだが、それ以上語らないので儂も聞いた事がない。
「ローラぁぁぁ 遊ぼぉぉぉ!」
「ん? これはこれはリョーマ様」
この人はローラと一緒に住んでいるお爺さんで元執事長のヤタナルト・ブレッドさん。ローラの親代わり的存在だ!
「こんにちは ローラ居ますか?」
「ローラ様なら湖に行かれましたよ」
「湖に? 釣りにでも行ったの?」
「何でも発現された能力を使ってみたいそうで」
「湖で試すって事は…水魔法でも取得したの?」
「御名答でございます」
「成る程ね じゃあちょっと行ってみるよ」
「いってらっしゃいませ———」
ーーー俺は駆け足で湖のある街外れの林まで急いだ。
「確かこの先が湖だったような… オッ!居た」
「《————命の水面 清らなる汝 我の御霊に応えたまえ… 流水ッ!!!》」
チョロチョロチョロ…… 「出たわ♪」
「ブフッ!!!」
「ッ!? リョーマ?」
「やっ、やあ ローラ 水魔法の能力が発現したんだって?」
「えぇ見て 凄いでしょ♪」
「うっ、うん凄いね……」
正直ジョボ過ぎて吹き出してしまったぜよ……。
他にも何か覚えたのかな?ちょっと覗いてみよう…鑑定眼ッ!!!
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名前:パドリック・フ・ローラ
性別:女
年齢:10歳
レベル:3
称号:水神の加護
能力:水魔法Lv1/光魔法Lv1
特殊能力:聖回復魔法Lv1
オオッ!!凄い!水魔法だけじゃなく光魔法も持っておるし、加護持ち♪更に特殊能力に回復魔法まで兼ね備えておるぜよ!
「リョーマは神様から何の能力を賜わったの?」
「えっ? 僕は剣術と錬金術だよ」
「ホント!? やったねッ! ケナさんのお店に良く顔出してたし錬金術だったらいいなぁって言ってたもんね♪ おめでとう」
「ありがとう ローラ」
良い子ぜよォォォッ!! さっきは笑ってゴメンよぉ!
「ローラ折角だから遊んで帰ろっか♪」
「うん!」
儂はローラと夕陽が湖に反射し辺りを赤く染め上げるまで無邪気に遊んだ———。のちにあんな悲劇が降りかかる事など想像もせずに…
ーーー《クロノスト帝国 帝都ダムス》ーーー
ここはキャセイン六大国家のひとつ
クロノスト帝国のとある酒場…
「なぁ聞いたか?」
「何を?」
「なんでも女帝様が遂にザベートへ進軍なさるそうだ」
「本当かッ!? じゃあ遂に戦争だな…」
「あぁ 近いうち… 血の雨が降るぞ」