第14話 『魔人兵プロトタイプ』
ーー《武闘大公国ライオネル 武装都市サンシュパーム》ーー
「うわあぁぁぁぁ—————ッ!!!」
「きゃあぁぁぁぁ—————ッ!!!」
ズドォォォォンッッッ!!……
それはリョーマが防衛結界部隊を編成して数日後…武闘大公国ライオネルの首都、武装都市サンシュパームが突然何者かに攻撃を受けていた!
「セン・ゴ・クーン大公陛下! 御報告致します!」
「何事だ!?」
「はい!報せによりますと瘴気を纏った強力な魔法を使う何者かが街で暴れている模様でかなりの被害が出ているとの報せがありました!」
「何ッ!? それで被害は!?」
「ハッ!人的被害が15人の負傷者と6人の死亡者が確認されており建物被害は四棟が倒壊していると…そこで只今我が国の達人級の部隊…〝武人烈戦隊〟を向かわせ対処に当たらせております!」
「そうか…相手は何人だ?」
「それが……」
「なんだ? 申せ!」
「はい! 相手は一人にございます!!」
「何ッ!?一人だと? 何やら嫌な予感がするな… ワシも出るッ!」
セン・ゴ・クーンの予感は的中していた。その場に到着したセン・ゴ・クーンが目にしたモノは凶々しい瘴気を放ち黒き風を操る魔人兵の姿だった!
「こっ、これは……」
「おっ、お逃げ下さい……陛下!」
「武人烈戦隊ッ! お主らがまさか全滅とは…」
「お逃げ……下さ……い………」
「安らかに休むが良い………さて質問に答えて貰おうか化け物よ! 貴様は何者だ?」
『ワッ……吾ハ…私ハ…クロ…ノスト魔人?……兵…』
「クロノストの魔人兵だとッ!? ではセントランス大公が申しておった事が現実となった訳か……成る程のぉ〜…」
「陛下! おっ、お逃げ下さい」
「馬鹿たれッ! ワシは武猿王のセン・ゴ・クーンぞ? 敵に背中は見せぬわッ!!」
「陛下ぁぁぁぁ!!」
「魔人よ! 我が魔拳の餌食となれぇッ!!!」
『………………』
大猿獣人である武猿王のセン・ゴ・クーンはその魔拳で幾度となくライオネルを窮地から救い、彼は国の為民の為に多くの疵をその身に刻んで生きてきた…まさに英雄王!今もまたライオネルの為に立ち向かっていった。
セン・ゴ・クーンは拳と脚に自身の能力雷魔法を付与し、特殊能力体術〝猿冥拳〟を発動させた!
「天の裁きは雷と成りて 我が拳脚に宿り 力を示せ… 融合能力〝雷装・猿冥拳〟」
『常闇ヨリ吹キシ風ハ 呪イヲ纏ウ刃ト成リテ 我ガ敵ヲ蝕ミ 我ガ敵ヲ侵セ…〝黒風〟』
「何ッッッ!!! ぐわっ!!」
魔人兵は聞いた事もない呪文を唱え聞いた事もない魔法を発動させ、瘴気を帯びた風の刃がセン・ゴ・クーンに襲いかかった。それは魔人族特有の特殊能力〝暗黒風魔法〟————ッ!
ズドドドドドドドドォォォォォォォォォンッ!!!
雷装・猿冥拳で本能的に防御したセン・ゴ・クーンは直撃を免れ、瓦礫の中から巨体を起き上がらせる…
「くっそぉ〜、やりおるわい… さすがは魔人と言ったところか! だがワシは負けんッ!!」
『………………』
「我が雷装・猿冥拳をとくと味わうがいい!」
ーーー《経済大公国レボランス 王城》ーーー
「なんだって!? ライオネルに魔人兵が!?」
「はい! 先程ライオネルの使者が虫の息ながらに報せて参りました」
「遂に仕掛けてきたか… クロノスト」
「陛下…如何致しましょう?」
「決まっている! レボランスの防衛システムを最大限まで引き上げ警戒態勢を取れッ!! 僕はライオネルへ向かう!」
「そんなッ! お止め下さい危険です!」
「同盟国の窮地に動かずにいつ動くぜよ! 早く準備致せッ!!」
「かっ、畏まりました」
儂が行くまで死ぬなよ! セン・ゴ・クーン!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
リョーマが錬金術で生み出した飛行型ゴーレムで武装都市サンシュパームに到着した時には既に街は戦火に覆われ見るも無惨な程荒されていた。
「オーイ! セン・ゴ・クーン!!! 何処だぁぁ! 生きていたら返事をしろぉぉ!!!」
リョーマは叫ぶがセン・ゴ・クーンの返事は無い。
「セン・ゴ・クーン!! 返事をしてくれぇぇ!」
叫び続けるリョーマの耳にガラガラッ…と瓦礫の音が微かに聞こえ、急ぎ音のした瓦礫の山へ駆け寄ると弱々しい声が下からした。
「待ってろッ! 今助けてやる!!」
リョーマは錬金術で瓦礫の山をゴーレムに変えるとそこには身体中に生々しい疵を浮かべ、左腕と右脚を切り飛ばされている満身創痍のセン・ゴ・クーンの姿があった。
「オイッ! しっかりしろセン・ゴ・クーン!!」
「ぐはっ… その声はセントランスの……来てくれたのか…ぐふっ…ゴホッゴホッ」
「喋るなッ 今治してやるからッ!」
リョーマは自身の錬金した特級回復薬ポーションをセン・ゴ・クーンに与え、身体中の疵と切り飛ばされた部位を復元回復させた。
「—————ッ!!! 何とッ!!切り離された手脚まで治るとは…驚いたッ! これが特級回復薬ポーションか」
「セン・ゴ・クーン大公 魔人は何処へ?」
「あぁ… 魔人ならワシを討った後 黒き風に乗り何処かへ翔び去ってしまったわい」
「そうか…… ならば今はまだ生き残っているライオネルの民衆達へ僕のポーションを配るとしよう」
「そっ、それは有り難い! 感謝する!!」
「しかし… これは酷いな…… これが魔人の力か」
「あぁ…ワシもよく生き残れたと思う…… まさしく奴一人で一国の軍事力に匹敵するからな!」
「そうか………」
今回の魔人兵襲撃と武闘大公国ライオネル半壊の報せは瞬く間に世界中へ広がり、同時に各国がクロノスト帝国への脅威と警戒を強めていた———。
ーーー《クロノスト帝国 王城》ーーー
「陛下ご覧頂きましたでしょうか!?」
「えぇ! 素晴らしかったわ!!水晶映写で観ていてゾクゾクしたもの♪ 」
「プロトタイプも先程帰還致しました! しかし流石は武猿王のセン・ゴ・クーンと申しましょうか… 我々の魔人兵に抗う様は見事でした」
「ふむっ 奴も名のある武人だからのぉ〜 だが奴ですら歯が立たないのであれば攻略は容易くなるな」
「いよいよで御座いますか!」
「量産化の方はどうなっておる?」
「残念ながらプロトタイプに並ぶ個体に難色を示しておりますが3日程度ならプロトタイプの半分の力を使用可能だと報告されております」
「使い潰しの兵と言う訳か……何体まで揃う?」
「10体程ご用意してあります」
「ふふっ そうじゃのぉ〜 挨拶程度に寄越してみるかプロトタイプとその10体…… レボランスに!!」
「畏まりました! 挨拶程度に攻めさせます!!」
「ふふふっ… セントランスの小僧もさぞ絶望するだろう ハッハッハッハッハッハッハッハッ……」