第12話 『Sランク同士の闘い』
オンリドの引退試合当日…リョーマは自身を守る為に覚えていた結界魔法を城の庭園一面に張り巡らし、二人の魔法が城外に漏れない様にしていた。
「さぁこの庭には特別強力な結界魔法を施してある! 二人とも存分に闘うといい!! しかしコレはあくまで試合だ…決着にはルールを決めさせてもらう! 勝敗はどちらかが敗けを認めるか戦闘不能になった場合とする、どちらかが誤って殺した場合その者には厳罰を受けてもらう」
「はい!」
「いいわ!」
「よろしい……では… 始めッ!!」
開始直後にオンリドが強化魔法で速度上昇させながら光魔法を詠唱し、同じ様にススリーは精霊召喚魔法を詠唱していた————ッ。
「太陽の神よ 我が腕 我が脚 我が身体を神々の力によって光の速さへと誘い賜え…〝閃光状態〟」
「神聖なる精霊達よ その身を我が元へ 力を示し 汝の敵を打ち賜え…〝風の大精霊ジン・ジーニー召喚ッ〟」
オンリドは自らの身体を光魔法で強化し光速で移動出来る状態にし、目では捕らえきれない程の動きを見せた。対するススリーも風の大精霊を召喚し、精霊の強力な風魔法で対処していた!
どちらも規格外の攻防を見せ、ぶつかり合う魔力の反動をリョーマの結界もミシミシと音を立て破られそうになっていた。
「くっ… なんて魔力だ! もう少し結界魔法のレベルを上げておけば良かったかも……」
ズッドォォォォォォォンッッッ!!!!!!
————二人の闘いは二時間程経過したがまだヤル気みたいだ… まったく逆にこっちが参ってきたぜよ……
「ハァ… ハァ… ハァ… そろそろキツくなってきたんじゃないのオンリド?」
「ハァ… ハァ… 貴様こそ初っ端から大精霊なんて大量の魔力を使う魔法を使って魔力切れが近いのではないか?ススリー」
「ふふふっ… 私はまだまだイケるわ!」
「ふっ… 奇遇だな私もだ————ッ!」
「猛々しき焔よ 我が隻腕に集いて来たれ 力の限り炎殺せよ…〝爆焔爆破ッ〟」
「自由に流れし風よ 大気を震わし 大地を揺らせ 我が瞳に波紋を示せ…〝超風振動衝撃〟」
二人とも…もう止めてくれぇぇぇぇッッッ!!!
心の中で悲痛の雄叫びを上げていたリョーマの気も知らず、オンリドは火魔法の上位魔法〝爆焔爆破〟を…そしてススリーは風魔法の上位魔法〝超風振動衝撃〟を放つと巨大な炎と風がぶつかり合い、大爆発が起こってしまった!予期せぬ事に二人は爆発に巻き込まれ、共に倒れ試合は終止符を打った。
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ーーーー「ん…… ここは?」
「目が覚めたかい?オンリドさん」
「へっ……陛下……………… ハッ! こっ、これは見っともない姿をお見せして申し訳ありません!」
「そんな飛び起きなくても大丈夫ですよ」
「…ススリーは? そうか私は負けたのですね」
「いや試合は相討ちでした! ススリーは先程目を覚まして帰りましたよ」
「そう…ですか……」
「どうですか? 未練は断ち切れましたか?」
「はい! このオンリド・ソクラティス…ギルド代表の件……お受け致します」
「宜しくお願い致します オンリド代表!」
「しかし陛下の結界魔法には驚かされました! 我々Sランク二人の全力とも言える魔法攻撃を見事に抑え込んだのですから!!」
「いやいや…死ぬかと思いましたから! ただの火事場のクソ力ですよ」
「御謙遜を…」
「いやいやいや! マジっす!!」
こうして無事に新たな代表を冒険者ギルドに迎える事が出来、ひと段落したリョーマは今後の引き継ぎなどをロロノフ卿に任せ冒険者ギルドの問題を解決させた。
ーーー《クロノスト帝国 極秘研究施設パクロ》ーーー
「ベネシスム様! 魔法陣と闇魔導師達の準備が整いました」
「そうか…ふふふっ いよいよだな! さぁ闇魔導師達よ お前達の全生命力を注ぎ込み… 帝国の世界制覇の為、見事魔人を召喚せよッ!」
「深淵の理 見えなき闇夜 暗黒神の名の元に その魔道を駆ける姿を見せよ 汝の御霊を我が主人に捧げ 我らの願いを受け入れ賜え… 〝圓魔召喚ッ〟」
10人の魔導師達が揃った声で召喚魔法を詠唱すると床に描かれた魔法陣がドス黒く発光し出し、黒い電流がバチバチと現れ空間が歪んで見えた。魔力を注ぎ込む魔導師達は瞳を真っ赤に血走らせ鼻血を出し、次々と魔力が枯渇し倒れて行く……すると魔法陣からゆっくりと凶々しいオーラを纏う角の生えた魔人が頭を出して現れ出した!
「オォォォォッ!!! キタキタキタァ———ッ!」
「ベネシスム様……恐ろしゅうございますッ」
「パロワクトよ 怖がるでないッ!魔人は我が国の味方なのだからな!! ハッハッハッハッ」
『我を呼びし者よ 我に一体何を望む?』
「しゃ、喋ったッ!! 喋ったぞパロワクト!!ハッハッハッ」
「そりゃ喋るでしょうけど………」
『……人間よ 我を魔人と知っての召喚か?』
「勿論だ! 私はクロノスト帝国ベネシスム 今より貴様の主人の名だ! 覚えておけッ」
『主人? ふふふっ…貴様が?』
「なっ、何がおかしい!! 召喚契約により貴様は召喚主の私に逆らう事は出来んのだぞ!!!」
『そうか…ふふふっ それは悪かったな』
「分かれば…分かればいいのだ ハッハッハッ」
高笑いをするベネシスムの横でニヤリと不敵な笑みを浮かべる魔人にパロワクトは戦慄を感じた。