第11話 『冒険者ギルド』
経済大公国レボランスの大公王となったリョーマは帝国と魔人の情報を秘密裏に集めつつ、多忙な公務に励んでいた。
「冒険者組合?」
「はい 我々の商業組合と異なり一般冒険者を登用し、ランク付けをしてその能力に見合った依頼を受けさせ報酬を渡すギルドの事です」
「成る程… ザベートだった頃の冒険者ギルド本部もレボランスが引き継いだって訳か」
「はい… そこで問題なのが現在本部代表が空席だということです」
「あぁ そういえば前代表って買収されていた大貴族の1人が座ってたんだっけ?」
「そこで陛下に本部代表を選んで頂こうと思いまして!」
「セバスチャンがそこまで心配するのには何かあるのかい?」
「実は今代理で冒険者ギルドを統括している副代表から相談を受けまして…」
「貴族か?」
「はい… 現在冒険者ギルド副代表 大貴族侯爵家のロロノフ・ビエンゴ卿です!」
「そのロロノフ卿から相談とは?」
「ロロノフ卿は今年で80歳を迎える御高齢で自分の命がいつ尽きてもおかしくない御年齢です!更に国民を心から愛している人物でして…ギルドの代表を自分が選べば陛下の折角の改革に異議を唱える者も現れ、それが引き金でまた国民を苦しめてしまう可能性があるかもしれないから早急にギルドの代表を陛下にお決め頂きたいと……」
「成る程…ロロノフ卿とはとても気持ちの良い方の様だな」
「はい 私も尊敬しております!」
「分かった… 冒険者ギルドをこの目で観たいし明日にでもロロノフ卿を訪ねに冒険者ギルド本部へ足を運び話を聞こう!」
「ありがとうございます! ではロロノフ卿にもそのようにお伝えしておきます」
「あぁ!だがロロノフ卿以外には報せないように取り計らってくれないか?普段の冒険者ギルド内を観たいからな」
「畏まりました」
ーーーー翌日リョーマは変装をし一人で冒険者ギルド本部のある商業都市ワシルへと足を運んだ。街の活気や国民達の笑顔溢れる様子を目にしたリョーマは、高揚して清々しい気持ちであった。
ドンッ…「きゃあッ!」
「いててっ… あっ、すみません大丈夫ですか?」
「いいの私こそごめんなさい! 久しぶり帰ってきたらこの街も様変わりしていて、目新しい物ばかりあるものだから前を見ていなかったわ」
耳が長くベッピンな金髪の女子じゃ!人間?では無さそうだがこの娘は一体……〝鑑定眼ッ〟
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名前:ススリー・キャンベルク
性別:女
年齢:101歳
種族:エルフ族
レベル:70
二つ名:風来の金剛エルフ
称号:風神の加護
職業:Sランク冒険者
能力:風魔法Lv85/剣術Lv35/体術Lv95
特殊能力:精霊召喚Lv60/統率Lv20
「エルフ族?」
「あら? 貴方…エルフに会うのは初めてかしら?」
「あっ、はい 話では聞いた事あったのですが実際にお会いするのは初めてです」
しまったぁぁぁ! 思わず表示された種族名を読んでしまったぜよ……しかし何とか誤魔化せたか?
「僕はリョーマと言います…お姉さんは?」
「私はススリーよ 宜しくねリョーマくん」
「はい こちらこそ」
「ところで冒険者ギルドって何処かしら?知ってる?」
「冒険者ギルドなら僕も行く途中ですので御一緒しましょうか!」
「助かるわぁ〜 ありがとう♪」
ーーー《商業都市ワシル 冒険者ギルド本部》ーーー
「ここです」
「ありがとうリョーマくん♪ 今度お礼するわね」
しかしとんでも少女だったな…年齢101歳か……エルフ族は長生きする種族だと何かの本で読んだ事があったが人間でいう所の18歳位にしか見えんぜよ。しかも国家危機依頼を受ける事の出来るSランク冒険者だとは……畏れ入った。
「うわぁ〜 ここが冒険者ギルドかぁ〜! 広いし色んな人が出入りしている所だなぁ〜!」
「オイッ! ガキの来る場所じゃねぇ〜ぞ」
「ん?」——————何だ? ……儂絡まれてる?
「ん? じゃねぇ〜よ さっさと帰りなッ」
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名前:アンドロス・ダッカーヌ
性別:男
年齢:31歳
種族:人族
レベル:25
二つ名:二刀流
称号:なし
職業:Bランク冒険者
能力:剣術Lv45/体術Lv20
特殊能力:強化魔法Lv10
Bランクの冒険者か…さてさて面倒くさそうな奴に絡まれたな……どうしよう。
「止めとけ二刀流のアンドロス! 子供に絡むな」
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名前:ツツンゴ・ペペット
性別:男
年齢:56歳
種族:ドワーフ族
レベル:31
二つ名:土煙
称号:なし
職業:Bランク冒険者
能力:斧術Lv35/土魔法Lv41
特殊能力:鍛治Lv33
オォォッ! ドワーフ族初めてみたぜよ。小ちゃいオッさんだが気の良さげな感じ♪
「チッ! 土煙のツツンゴ… 俺のする事にいちいち突っかかって来るんじゃねぇ」
突っかかって来てるのは君の方ぜよ アンドロス君…
「入口で何を揉めてるんだ? 通行の邪魔だぞ」
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名前:テクノ・サイダー
性別:男
年齢:28歳
種族:人族
レベル:50
二つ名:暗葬の魔導師
称号:龍神の加護
職業:Aランク冒険者
能力:闇魔法Lv50/火魔法Lv44
特殊能力:強化魔法Lv35/状態異常耐性Lv40
今度は銀髪の魔導師キタァ——————ッ!!!
「ゲッ! 暗葬のテクノ・サイダー…… 別に揉めてねぇ〜よ」
「君…大丈夫かい?」
「はい 助けて頂いてありがとうございます」
「何ここの連中は物騒な奴らが多いが根は良い奴ばかりだ! 気を悪くしないでおくれ」
「はい!」
「今日は何か依頼を出しにでも来たのかい?」
「いえっ……そういう訳では………知り合いがいるもので逢いに来ただけなんです」
「そうか… 何か分からない事や困った事があったらあそこの受付に行くといい!」
「はい お気遣いありがとうございます」
………しかし色々な者が居るもんぜよ!うーむ…なんか冒険者って面白そう♪儂も今度こっそり冒険者登録してみようかな! 変装して偽名を使えばバレないだろうし♪
「あのぉ〜 リョーマ様ですか?」
「えっ? あっ、はい」
「私副代表の秘書をしております ククアと申します! 副代表よりお部屋に御案内する様承っておりますのでどうぞこちらへ」
「はい 分かりました」
もう少し見学したかったけどまた次回にするか…と残念な感じでガッカリしつつ副代表の待つ部屋へと案内された。
「ようこそ セントランス大公殿下」
「こんにちわ ロロノフ卿 本日は代表の件でお伺いに来ました」
「それはそれは! こちらへどうぞお掛け下さい」
「早速ですがロロノフ卿! 貴方的に今後の冒険者ギルドの代表候補者は現在いらっしゃいますか?」
「そうですねぇ〜…正直貴族の中には居ませんが冒険者の中には二人程目ぼしいのがおります」
「ほぉ〜冒険者ですか…良ければその二人の事を詳しくお教え願えますか?」
「はい まず一人目が———————」
ロロノフ卿の話によると現在目を付けているのがSランク冒険者として現在活躍している人間の男性冒険者オンリド・ソクラティスとエルフの女性冒険者ススリー・キャンベルクの二人だそうだ。ススリーは先程会ったので分かる!確かに彼女なら経験と統率スキル持ちという事を考えても納得のいく人選だろう。またオンリドという冒険者は49歳という年齢でそろそろ引退も視野に入れているベテランの冒険者らしく、生まれは旧ザベート王国の子爵ソクラティス家の末っ子で社交慣れはしているとの事。
「ではロロノフ卿 早速ですが明日にでも二人を城まで連れてきてもらえますか?」
「勿論です! では直ぐに手配を……」
こうして郷に入っては郷に従えという様に儂はロロノフ卿の人柄を見て、この人が選んだ者ならば二人のどちらかに任せても大丈夫だろうと感じていた。
そして翌日……約束通り王城にロロノフ卿がオンリドとススリーを連れ、リョーマの元に訪れてきた。
「まさか噂の大公殿下に御呼ばれするとわね… 私お城って初めて入ったわ!」
「あまりはしゃぐなよススリー」
「何よオンリド! はしゃいでません〜っだ!」
「これこれ… 二人ともいい年して……子供じゃないんじゃから喧嘩はお止めッ」
「やぁ! よく来てくれたね 僕が初代大公王に就任したセントランス・リョーマだ! 宜しく♪」
「殿下 本日は御招き頂き誠に有難うござい…」
「えぇぇッ!!! もしかして昨日の…リョーマくん!?」
「ふふふっ バレちゃったか…ススリー」
「何なに!アンタ大公殿下だったのぉ〜!?」
「オイッ! ススリー口を慎め!!」
「貴方がソクラティス卿ですね」
「はっ!陛下… 私は訳あって家を出た身ですので気軽にオンリドと御呼び下さいませ」
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名前:オンリド・ソクラティス
性別:男
年齢:49歳
種族:人族
レベル:75
二つ名:瞬速
称号:太陽神の加護
職業:Sランク冒険者
能力:火魔法Lv50/剣術Lv50
特殊能力:強化魔法Lv50/光魔法Lv85
「そうですか……ではオンリド! そしてススリー!其方達を呼んだのは他でもありません、今日は二人のどちらかに冒険者ギルド本部の代表をお願いしようと思い呼び出しました」
「ッッ!!! 私達のどちらかにギルドの代表になれと!?」
「えぇ! 嫌ですか?」
「私はお断りだわ! それならオンリドを選んであげて下さい」
「なッ!! ススリーどういうつもりだ!?」
「私はまだ冒険者を続けたいから断るのよ! 貴方はもう歳なんだから現役は引退してこの話を受けなさい」
「ススリー……」
「えーっと………じゃあオンリド 貴方はこの話受けて下さいますか?」
「…………陛下 ワガママをお聞き願いますでしょうか?」
「何です?」
「現役を退く前に今一度、冒険者として力を試したいと考えております……その相手にススリーを指名したいのですが」
「ほぉ? 未練を断ち切りたいのですね? …いいですよ」
「ありがとうございます!」
「私もいいわ! 私が引導を渡してあげる!!」
「あぁ… 全力で行かせてもらうぞススリー」
「私の風は老体には堪えるわよオンリド」
「では二日後に各々支度を整え、また城へ来なさい! 僕が立会人となろう」
「ははッ!!」