第10話 『噂』
革命の第三段階である財政再建は既に立ち上げていた商業ギルド〝レボリューション〟の力により難無く再建ッ!国は豊かになり国民は歓喜した。ザベート王国は新たに〝経済大公国レボランス〟と名を変え、当初の予定通り三公連合へ加盟を果たし連合も新たに〝ジェネシス大連合〟と名を改名。クロノスト帝国が簡単には手が出せない程の大連合へ進化を遂げた!
「いよいよ三日後は戴冠式ですねリョーマ」
「あぁ ここまで来れたのもクライシス殿下とセバスチャンのお陰だよ! 本当にありがとう」
「いえいえ リョーマの実力ですよ…いや陛下か」
「やめてくれよぉ〜!」
「ハッハッハッハッハッハッ」
ーーー《クロノスト帝国 皇城》ーーー
ドンッ…と大理魔石で出来たテーブルを強く叩き心中穏やかでない者がいた。それは……ザベート王国と一年に渡り戦争を繰り広げ停戦条約を結んでいたクロノスト帝国は現女帝!第24代 クロノスト・リリアン皇帝その人である。
「クソ忌々しい… 折角一年をかけ貴族共を買収しザベートに戦争を仕掛け計画通り疲弊させてきたというのに…… 新公国だとぉ〜?」
ドンッ! ドンッ!!
「ふざけるなぁぁぁぁッッッ!!!!」
ガッシャァァァァンッッ……
「ハァ… ハァ…」
「皇帝陛下…」
「ハァ…ハァ…… 何だ? メカリゴス」
「畏れながら申し上げます! 我が国の機密魔導闇魔法隊にて報告があり…異界の地〝魔境界〟の魔人と接触に成功致しました」
「何ィ!? 誠か?」
「ハッ!」
「そうか…… ふふふふっ…ハッハッハッハッハッ メカリゴスよ! 急ぎベネシスムを呼べ」
「ハハッ!」
「新たな公国の王セントランス…この私の完璧なる計画の邪魔をした憎っくきその者に、実験のモルモットになってもらう事にしよう!」
「お呼びでしょうか皇帝陛下!」
「ベネシスムか… 遂に例の計画を進める時が来たぞ!」
「では魔人を遂に見つけたのですかッ!?」
「あぁ! 直ちに闇魔法で召喚し実行に移す!! 指揮を貴様が取るのじゃ! 失敗は許されぬぞ…」
「畏まりました! お任せ下さいませ」
「ふふふっ ハッハッハッハッハッハッハッ……」
ーーー《経済大公国レボランス 王城》ーーー
「本日はおめでとうございますリョーマさん」
「やぁカスミさん! 来てくれたんだね」
「勿論よ リョーマさん」
「カスミさん…実は折り入って頼みがあります」
「頼み?」
「僕の作ったレボリューションの商品開発兼副代表に着任して頂けませんか?代表はセバスチャンに任せてありますが今後も更なる事業拡大を果たすにはカスミさんの…僕の知らない日本の技術や商業を取り入れて頂きたいのです」
「成る程… それってもしかして私のケーキを食べた頃から考えていました?」
「さすがカスミさん その通り!アレはまさしく未知の味でした… あんな物がまだ沢山あるのなら僕は見たいし味わいたい! お願い出来ますか?」
「……分かりました! 謹んでお受け致します」
「ありがとうカスミさん!」
「あとリョーマさんは知ってますか?」
「何をです?」
「私も噂や伝承でしか知らないんですけどこの世界には魔人って種族が存在するらしいのよ」
「魔人…!?」
「なんだか私怖くって…ここ異世界だし、魔法あるし…魔人なんてフラグまで耳にしちゃったら何か嫌な予感しちゃって……」
「成る程…調べておきます!」
「ごめんなさい 戴冠式前に変な事言っちゃって…」
「なんの!大丈夫ですよ」
滞りなく戴冠式を終えたリョーマはその夜…各国の王族や貴族を城へ招き宴を催した————。
「セバスチャン 宴のあとでちょっといいかい?話があるんだ」
「畏まりました セントランス陛下」
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ーーー「————魔人…ですか?」
「あぁ セバスチャンは何か知ってるかい?」
「御伽噺や伝承などで耳にした事はありますが実際に見た事はありません… しかし本当に存在するのであれば恐ろしいですな!伝承では一匹の魔人の力だけで国が一つ消えてしまうと言われておりますし……」
「そんなに————ッ!?」
「伝承では…魔境界と呼ばれる外界が存在するとされています!人間はもちろん獣人や亜人すら立ち入れない魔族の棲まう異界の地……その魔族の中でも上位種の者を〝魔人〟と呼び、更にその魔人達の国が存在……名を…〝魔人国家ブナノガ〟」
「ブナノガ…… 恐ろしい国があるんですね」
「まぁ御伽噺や大昔の伝承ですからあまりお気になさらなくても良いのでは?」
「そっ、そうですね! 変な事を聞いて申し訳ない」
「しかし魔人か………」
「セバスチャン?」
「いえ…最近妙な噂を耳にしまして」
「妙な噂?」
「はい…何でも帝国が長年闇魔法を使い何か良からぬ事を計っていると……」
「その良からぬ事とは?」
「これはあくまで酒場の噂程度ですので私も気にも留めていなかったのですが…今陛下が〝魔人〟というキーワードを口にされたので申し上げます……どうやら帝国は禁呪魔人兵の研究を密かに行なっている様なのです!」
「禁呪…魔人兵ッ!!?」
「はい! 魔人を異界より召喚し…その細胞を人間に取り入れ人工的に魔人兵を生み出そうという眉唾物の噂です」
「何とッ!!! それが誠ならなんて非人道的行為なんだ……許せないッ!!!直ちに事実確認を行いたい! 明日丁度来賓として来られている各王達と会合を開きます 準備して下さい」
「畏まりました陛下」
ーーーー翌日リョーマは来賓として来ていたジェネシス大連合の加盟王達を集め会合を開いた。議題は勿論クロノスト帝国の禁呪魔人兵計画について…
「皆さん本日は急な召集にも関わらずお集まり頂き感謝します! 改めまして私セントランス・リョーマがこの度の議題についてまとめさせて頂きます」
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●国名/経済大公国レボランス(主な住民人間)
都名/商業都市ワシル
王名/初代セントランス・リョーマ大公 (男12歳 人間)
●国名/魔装大公国トライズン(主な住民人間・亜人)
都名/城塞都市ドラッシュ
王名/第7代セバポリス・クライシス大公(男26歳 人間)
●国名/武闘大公国ライオネル(主な住民獣人・亜人)
都名/武装都市サンシュパーム
王名/第6代セン・ゴ・クーン大公(男95歳 大猿獣人)
●国名/聖騎大公国ムサナ(主な住民人間・亜人・獣人)
都名/聖都ゼルダーラ
王名/第10代タイマント・シュバルツ大公(男54歳 蜥蜴人)
「これより…現在巷で実しやかに噂されているクロノスト帝国の禁呪魔人兵計画についてどうお考えになられるか意見交換を致したいと思います」
「確かにそれが真実であれば我々が如何に巨大連合となろうとも大ダメージを帝国から受ける事が予想されるな…」
「クライシス大公殿下の言う通り…噂とは言え無視出来ない問題ではあるな!」
「神の信仰に厚いシュバルツ大公殿下も魔人はさすがに脅威か?」
「ゴ・クーン大公殿下… 別にそうは言っておりません! ただ非人道的行為だと申しておるのです」
「皆さん…私はこのキャセインに生を受けてまだ12年しか経っていません、皆さんと出会って1年程の時間しか経っていません……が! 今この場に居る誰か1人でも帝国の非人道的行為の実験で魔人と成り果ててしまえばとても辛い気持ちになり、力の限り帝国と戦うでしょう」
「………………」
「私はこれが…事実だろうと考えています」
「————ッ!!!?」
「セントランス大公陛下よ その根拠は!?」
「まず疑問に思ったのはザベート王国の現状を目の当たりにした頃でした… 戦後にも関わらず何故ここまで酷い貧富の差があるのか? 今思えばあの戦争から既に帝国の術中にハマっていたのでしょう! 実は先日、ザベートの頃一部の権力を有していた貴族達から帝国に話を持ちかけられたとの証言を得たのです」
「そうか… 帝国は疲弊が収まらぬザベートを再度時間を置き狙っていたのか! だがセントランス大公陛下の出現によりその計画も頓挫した……」
「そこで次に手を打つとしたら……魔人!?」
「そうです! 今や三公連合も我らレボランスの加盟により巨大な力を備えたジェネシス大連合となりました! 帝国は追い詰められ…禁呪という手に打って出ている可能性があります」
「これは我々四公国の…ジェネシス大連合とクロノスト帝国の問題ですな」
「うむっ… 眉唾の噂話も脅威になるか」
「急ぎ各国で協力して情報を集めましょう!」
「皆さん 宜しくお願いします!」