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リンゴ飴は、少し失敗だった。欲張って大きいのを選んだせいで、なかなか食べ終わらない。ユリちゃんに「手伝って」と頼むと、「やだ」と言って逃げられてしまった。
慌ててリンゴ飴を平らげて、べたべたする手を拭いながら追いかけると、ユリちゃんはお面屋さんにいた。たくさんあるお面の中から、カエルのお面を手に取って、汗を拭っているおじさんにお金を払う。
「見て。大きい口、可愛いでしょ」
お面の陰から顔を覗かせて、ユリちゃんが笑う。はっきり言って、リアルな造形のカエルは全然可愛くなかったけど、ユリちゃんは可愛かった。
僕は食べ歩いてばかりだけど、ユリちゃんは食べ物を買わない。これは毎年同じこと。ユリちゃんは食べ物の屋台を避けていた。
考えても、理由は分からない。だから僕は、いつからか考えないことにした。聞けば早かったんだろうけど、聞いたところでユリちゃんは教えてくれないような気がした。