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それは、夏祭りのことだった。
僕らが住んでいたのは小さな住宅街で、毎年七月の終わりに夏祭りが開かれていた。
その年。僕らは六年生で、小学生として遊ぶ夏祭りは、この年が最後だった。でも、そんなに悲しくはなかった。家の近くには公立の中学校が一つだけあって、ユリちゃんと一緒の中学校に行けると思っていたし、中学生になっても夏祭りは行くと思っていたからね。
僕は新しく買ってもらった紺色の甚兵衛を着て、ユリちゃんを迎えに行った。ユリちゃんは黒地に白い百合が幾つも描かれた、大人っぽい浴衣を着ていた。夏の夜闇に浮かび上がるような艶やかさ。ドキドキした。
二人連れ立って行くと、お祭りはとてもにぎわっていて、僕らは屋台巡りを始めた。