天星(よぞら)の中の宇宙
目が覚めると、失ったはずの腕は元どおりになっていて、痛みもダルさも、焦げるような熱さも感じない。
どうやら、身体を最良の状態へ変化させる魔法を使ってくれたらしく、なんなら戦闘前より体調がいいぐらいだ。
だから、問題はない。問題があるとすれば……。
「ライヴ、初めて死にかけて、なにがわかった?」
「なにもできなかったこと……かな?」
俺という人間は弱すぎること。そこに尽きる。
「初めてにしては充分なんだけどね。でもね? あなたはまだ敵の見方も、怪我への対処も、攻撃の当てかたも、他にも色々と足りてないの」
「……わかってるよそんなの」
「うん。いじわる言ってごめんね。でも、自分でそれがわからないと強くなれないから。怖い思いをさせて、ごめんね」
母さんはそういって俺を抱きしめる。もしも間に合わなかったら、即死したら、そんな不安を母さんは抱えていたのだろう。少し震えていた。
もしかしたら泣いているかもと思うと、表情が見えない体勢で良かったと思う。自分のせいで泣く親は見たくないから。
だから「もっと強くなるよ。お母さんより、お父さんより、強くなるんだ」と、決意を固めた。
「うん。だからね、ライヴはそろそろプラトを覚えるべきだと思うの」
3年経った今でも根に持ってたんだな……。いやまあ、覚えるんだけど。
でもなんとなく、固めた決意にヒビが入る音がした。修復魔法が必要だろう。
プラト(汎用惑星魔法)というものは、性質がわかる程度の位置にある星と繋がり、力として変換する魔法のことを指すらしい。
星の性質を魔法を使わずとも万人にわかるように、水星や火星などと名付けられているので誰にでも使えると説明を受けた。
懐かしい名前に地球を思い出したが、俺が知っているそれらの星々とは関係ないみたいだし、雷星とかいう星もあったりとどちらかと言えば異世界だなーって感じがより強まった。
恒星というまとまった概念と繋がるフィスタが簡単だっただけかも知れないが、プラトは1つの繋がりでその全てを行使することができず、多くの星の力を引き出すためにはその数だけ星と繋がる必要がある。
だから、自分に足りないものを選び、繋がることでどんどんとやれることが増えていく。それはまるで自分だけの宇宙を作っているかのようで、とても充実した時間だった。
この宇宙を完成させたいと、俺は星や重力に関する魔法にのめり込んでいく。
その中で悟った。この世界は魔法と戦いこそが娯楽なのだと。
そして、そんな世界に自分も確かに順応しているのだと。