主人公、インフレを察するも魔法にチョロい
魔法を教わって2年、なんとなく魔法とはどういうものかがなんとなくわかってきた。
この世界における魔法とは、魔力を用いて概念と繋がり、現実を歪める技術なのだと思う。
フィスタの場合、恒星という概念に近づきその力と同一化することで、人の身でありながら光や炎を操ることができるようになる身体へと自分を一時的に作り替える。そして、その状態から力を現実へ写し出す。
それが魔法であり、慣れさえすれば本来詠唱が要らないそれを、慣れずとも誰にでも使えるように相性のいい言葉を発することで繋がりと同一化を行うというものが汎用魔法と呼ばれるものになる。
よく見るファンタジーとかで星の力とか、時空の力とか、そういうのを使えるのは1部の才能あるやつとか、主人公クラスだと思ってたけど、ここじゃ子供にだって使えるように一般化されているってのは、かなりヤバイ。
母さんが言うには、概念を言語化する汎用魔法があって、余程のことがない限り新しい魔法が見つかったらすぐに汎用魔法が作られて一般公開されるというのだ。
どうして魔法を自分のものに独占しないのかって訊いたときに「そうしないと私達みんな怖い化け物に殺されちゃうの。だからみんな魔法を覚えるのよ」と返ってきた時は、この世界に産まれたことを呪った。
つまり、明らかにオーバースペックな魔法を覚える必要がある程の相手が日常に溶け込んでいる世界ってことで、日本で平和に育ってきた俺には明らかに荷が重いに決まってる!
まあ、魔法の訓練自体は正直楽しい。最初は眩しさに目を瞑らされ、いくら手を伸ばしても届かない遠くにあった光が、今では光の中にいることすら苦ではない。
熱さも、眩しさも、全てが心地よく感じる。それが一体化するということで、もっと近寄れば自分が光そのものになったように感じられると、父さんは教えてくれた。
自分が光になる感覚。地球にいた時には絶対に体験できなかったであろうものに(まあ、こんな世界もなしではないか)などと少し思ってしまうのも、平凡な俺には仕方ない。仕方ないのだ。
実際に危険な魔物と戦う前だし、魔法が使えるってだけで楽しいんだもの。