インフレした世界の平凡な親心
両親目線です
ライヴが2歳になり、そろそろ言葉を発する時期だ。
ライヴが産まれる前に教えると決めた汎用魔法体系はフィスタとプラト。恒星と惑星という共に星の力を扱う形態を始めに覚えさせるという点では僕と妻は気があったのだが、そこからは意見が割れに割れ、結局始めに発したワードで決めるという着地点に落ち着いた。離婚の危機などなかったのだ。
ライヴが産まれてからの僕は、とにかく息子に恒星魔法言語を使って話しかけた。恒星とは熱量の塊。その一端を扱う魔法は、僕がこれまで生きてこれたようにきっとライヴを守ってくれるはずだと熱を込めて。
きっとライヴにもこの熱が伝染し、恒星魔法体系を選ぶに違いないと、そんな確信を持って。
なによりも、自分と一番長く歩んできた魔法を子供に伝えるというのは、かねてよりの夢なのだ。
妻のことは愛しているが、プラトには負けたくない。そんな子供のような意地があった。
____
寿命まで生き続けて欲しいからライヴ。私達も随分と安直な名前を付けたなと思う。
でも、それでいい。この世界で寿命まで生きるということの難しさを私達はわかっているから。名前でげん担ぎをするぐらいで丁度いいと思う。
だからこそ、ライヴには防御と応用性が高いプラトをって思ったんだけど……。あのバカは何を思ったのかフィスタを推してきた。
よりによってなんで恒星魔法? あんな熱量でゴリ押ししか出来ない魔法、耐性持ちが現れたら効かずに殺されるに決まってる。そんな魔法を息子に教える最初の魔法として選ぶのは、とても怖い。
でも、ジェイ(夫)は1度決めると折れない人だ。そこに惚れた私にはよくわかっている。
だから妥協案、始めにワードを発した方の魔法を始めに覚える魔法にする。そんな着地点を作ることで、なんとか場を収めた。私じゃなかったらかなり喧嘩したんじゃないかなって思う。
ライヴが産まれてから、私は惑星魔法言語をよく聞かせた。
惑星魔法は星が持つ性質を借りる魔法。星と繋がって、星を理解して。そんな過程で、なんとなく遠くの星が私を守ってくれている気がする。そんな魔法。
だから私は惑星魔法が好きで、ライヴにも惑星魔法を覚えてほしい。私の目が届かなくなっても、星がこの子を守ってくれるって思えるから。
……だから、ライヴが最初に口にした言葉がフィスタだったのは、少し寂しかった。
なにより、私はジェイの勝ち誇った顔を見たくなかった。
汎用魔法体系は誰かがオリジナルで作った魔法を分類毎に分け、更にそこから誰でも使いやすいように改良したもののことを指します。