プロローグ 終わりと始まり
今回の話はこれから始まる物語の中間ぐらいの内容です。ネタバレを防ぐため、キャラの名前をーで書いたりしていますがご了承ください!
雷鳴が鳴り響き、大雨が降る中、廃墟となった建物の残骸がメラメラと燃え、無惨な姿になった人だったモノが無数にある場所があった。ある少年はそこに立ち尽くしていた。黒髪に黒いロングコート、そして……手には二振りの紅く染まった黒い長剣。
少年は絶望にうちひしがれていた。
少年は思う。
(また……繰り返してしまった。やっぱり繰り返した!もう二度と同じ結末にはしないと誓ったはずなのに……大事な人を犠牲にしてまで手に入れた、チャンスを……俺は、また……!)
少年がこの惨劇を引き起こしたのだ。
何故、この少年がこんな事をしてしまったのか?
……それはある願いを叶えるため。それまで少年が求めてきた願いを叶えるために必要だったのだ。
だが、少年が叶えたかった願いは……叶わなかった。
それは誰もが普通に叶えられるはずの願い。
だが、少年にはもう絶対に叶えられない願いになってしまっていたのだ。
少年がそれに気づいたのは少し前だ。
それでも少年はその事実を受け入れらずにここまで来てしまった。
そして、間違いをそのままにしたせいで多くの人を殺め、恨まれたとしても叶えたかったのだ……願いを……。
願いのために狂ってしまった少年は二振りの長剣を持ち立ち尽くす……。
幾程の時が流れたのだろう……雷鳴は聞こえなくなり、雨は止み雲が空を覆う。
それでも少年は動かない。
何かを待つように……感覚を研ぎ澄まし、獲物を狙う狩人の様に何もない空間を睨み付けていた。
「……来た。」
空を覆っていた雲に何かにくりぬかれた様に丸い穴が出来、そこから少年の周りを神々しい光が覆う。
少年は長剣を握る力を強くする。
空に出来た丸い穴が眩いほどの光を放つ。
するとその穴から二人の少女が少年の方へとゆっくりと向かってくる。完全に人の域を越えている。
一人の少女は透き通る様に美しい長い白髪で整った顔、すべてを見通す様な赤い眼をしている。
白雪の様な色のドレスの様な服でクリームの様な柔肌と相まってとても美しい。そして、両手には虹色の光を放つ白い柄の長い槍を持っている。
その姿はまるで戦乙女の様だ。
もう一人の少女は透き通る様な白に若干の空色が合わさった綺麗な長い髪だが、所々外ハネがある。
少し幼さを感じさせる顔立ちで、今にも泣き出しそうな潤んだ赤い眼をしている。
青を基調とした色合いの巫女の様な服とフリルの付いたスカート、この少女には良く合ってある服装だ。そして、片手には虹色の光を放つ白い弓を持っている。
少女達は少年の近くに来た。そこには計りきれない程の緊張感があった。
「……貴方が龍星ですか?」
「……そうです。」
少女の一人が少年に名前を尋ねた。
そう、この少年の名前は龍星といった。本名は如月 龍星。
「……そう。じゃあ、貴方が勝利者ですね。貴方の願いは何ですか?勝利者の願いをひとつ叶える……それが契約です。」
少女が龍星に問いかける。願いは何だ?と。
その問いかけに龍星は答えられない。
(願いなんて……もう叶えられない。また、繰り返してしまったのだから……。……だからもう、いいや。)
「俺の願いはこの世界を破世し、もう一度世界を創り直す事です……。また、赦しを与えて貰うまで何度でも……!」
「……!貴方、もしかして……。ーーーーなの!?ねぇ!答えて!」
龍星が答えた事で少女達は衝撃を受けた。何故その答えが言える?それはーーーーが願った事だった。その答えが言えるのは彼しかいないはずなのだ。
少女は龍星に問いかける。
「……そうだよ、ーー。ーーも久しぶりだね。」
「……何で!?何であの時居なくなったの!?私たち貴方が居なくて悲しくて寂しくて……!」
「ごめん。だけどそれは……俺が赦せてなかったからだよ。自分自身を……俺の罪を……!」
龍星は、ーーーーは自分がどんなに罪深いのかを知っていた。だからこそ、少女達とは決別したのだ。
少女達もその事は知っていた。ーーーーが自分自身をまだ赦せてないことを。少女達は時間が解決してくれると思っていた。だが、実際には違ったのだ……。希望的観測が大きなミスを起こした。
「だから……!俺はまた、世界を創り直す!間違いを正すために……!」
「そんなこと……させない!今の世界でならまだやり直せる……だから、お願い……こんなこと、もう止めて……!」
「前は止められなかったけど……今回は絶対に止めてみせるよ……お兄ちゃん……!」
龍星と少女達は完全に相手と意見が合わないらしい。
龍星は小さな仮面の様な物を取り出す。それに合わせ少女達も同じ様な物を取り出した。だが色合いが違う。龍星の物は黒と青、少女達の物は白と青。
「それは……!ラグナデバイザー!?」
「違うよ。これは、クリュシオンデバイザー。」
「こっちはアルテシオンデバイザー。」
「どちらもシオンなら……!リオンには勝てない!」
この時、龍星は勝利を確信した。だが……
「それはどうかな?性能が上でも技術が足りなくて勝つ事なんていくらでもあるよ……!」
少女達は諦めようとしない。その言葉を聞いて龍星は……
「……だったら、実際にやってみれば分かる事だよ。どのぐらいの差があるのか……!」
覚悟を決めた。少女達を倒してでも願いを叶えようと。
そして、龍星と少女達は息を合わせた様に一斉に、
「「「ラグナリオン!(クリュシオン!)((アルテシオン!))」」」
と叫んだ。その瞬間、空まで届く光の柱が3つあがった。
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戦いの結末は……龍星が勝った。だが龍星も疲弊し、考えも戦いの中で変わった。
「……それじゃ、もう行くよ。」
「もう行っちゃうの……?もう少しだけ……」
「ダメだよ。これ以上、一緒に居たら離れられなくなるから。」
「……分かったよ。それじゃあ、また。」
「……うん、また。」
そして、龍星はこの世界から消えた。
これは終わり、そして新しい始まりでもある。
だが、その前に……この物語の始まりに戻ろう。
何故、こうなったのかを。
これは呪いでもあり、祈りでもある物語。
最後まで読んでくださりありがとうございます!
さて、次の話からは本編で書いた通り完全に時系列が違います。そこはご注意を!
では次回をお楽しみに!