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Execute.95:STAND ALONE COMPLEX./デンジャー・クロース

 ――――荒城によく似た少年と接触した。

 シェパード01、兎塚から飛んで来た報告に吹雪は耳を疑っていたが、しかし戒斗は涼しい顔をしたままだった。荒木伯には数名の兄弟が存在していることを、事前にみどりから聞かされていたのだ。それに、荒城の制服に仕込んだ二つの発信器の内、一つだけが移動しているとの警告も発せられていた。

「オーヴァーウォッチよりHQ、何かオーダーはあるか?」

 隣で吹雪が「ど、どういうことだよ……!?」と狼狽しているのを意図的に無視しつつ、戒斗はインカム越しにみどりへと指示を請うた。するとみどりは『ちょっと待てい』と云うと、すぐに飛んでくる兎塚からの報告を待つ。

『……シェパード01よりHQ、奴は泳がせたよ。トレース、出来てるか?』

『そりゃあもうバッチグー、滞りなく。ソイツを追うのはこっちで任されるから、オーヴァーウォッチのお二人さんは今まで通りでよろしゅう。鳥さんの方もブッキーに任せるぜよ』

 鳥さん、というのは上空を自動操縦で旋回するRQ-11"レイヴン"小型無人偵察機のことだ。それを悟った吹雪は「お、俺がっスか!?」とまたも狼狽するが、しかし『口答えしなーい』という次なるみどりの言葉に気圧(けお)され、「……分かりましたよ」と渋々ながらに頷く。

「オーヴァーウォッチ、了解した。表は相変わらずのお祭り騒ぎだが、幾らかの連中は室内に戻り始めてる。(やっこ)さんの数も増えるから、十分注意してくれよ、うさぎのおっさん」

『分かったよ、警告感謝する』

「幹部級は最初の一撃で一人始末した。残りの連中も、多分まだおっさんたちより上の階だ。見た感じだと幹部の中にも多少の手練れは居る、気を付けることだぜ」

『シェパード01、了解。一階の検索も早々に二階へ向かうことにする。取りこぼしはシェパード02、そっちに任せるよ』

『シェパード02、ニンジャも了解してでござるよー、ニンニン。うさうさたちは伯ちゃんを最優先によろぴくー。後の有象無象はこっちで片付けるか、表に追い立てて千鶴ちゃんたちの餌にするから』

 と、別動の突入チーム第二班・シェパード02の英治から飛んで来たそんな応答を最後に、再び無線には静寂が訪れた。

「……屋上に何人か出てきた、確認してくれよ」

 しかし無線が落ち着くのも束の間、手元のタフブックでRQ-11のカメラから作戦エリアを見下ろす隣の吹雪がそう、少しばかりシリアスな声で告げてきた。

 戒斗はそれに「了解だ」と返すと、何度目かという弾倉交換を終えたばかりのSR-25を動かし、屋上の様子を探る。

「五人か?」

「五人だ」と吹雪が戒斗の訊き返す言葉に返す。

 吹雪の報告通り、サナトリウムの屋上には新たに五人ほどの人影が出てきていた。いずれもがバーレット・M82A1の大口径・対物自動ライフルやら、六連発グレネード・ランチャーのアーウェン37やらの強力な火器を携えている。奴らの目的はほぼ間違いなく、庭園で相変わらず好き勝手に暴れまくる千鶴と、彼が乗る重機関銃付きトヨタ・ハイラックスの排除だろう。

 戒斗はそう推測すると、チラリとレンジカードを横目に見て。そして大まかな狙撃距離を確認すると、まずバーレット社のM82A1大口径・対物自動ライフルを持った一人へとスコープのレティクルを合わせた。

「残念、敵はそこだけじゃない……」

 引鉄を引く。長いサイレンサーで抑えつけられたくぐもった銃声が響けば、銃口からM852の高精度マッチグレード弾頭が飛び出す。

 激しく前後するボルトキャリアと、吐き出される金色の空薬莢。既に戒斗の右前方に山積みになりかけていた空薬莢の山に吐き出された熱々の空薬莢が跳ねると、その頃にはM82A1持ちの構成員は頭を吹き飛ばされていた。

「まずは、一人……」

 続け、アーウェン37グレネード・ランチャーを持った奴へと狙いを定める。すぐさま発砲、男は右肩から下を千切れ飛ばしながら、アーウェン37を眼下の地表へと取り落とした。落下したアーウェン37が不運にも落下地点に居た構成員の頭を直撃し、頭上から重量物の降ってきた不運な構成員の頭蓋骨を叩き割る。

 すぐさま二撃目を撃ち放てば、今度こそ戒斗は右腕を失った男に死の河を渡らせた。

(照準がズレてきてるか……?)

 実を言えば、右肩を吹き飛ばしたのは完全に不本意だった。恐らくは度重なる連続射撃で銃身が熱を帯び、少しだけ照準にズレが生じているのだろう。よくあることだ。この程度の距離だから影響は少ないが、キロメートル級の狙撃ともなればこの誤差が命取りになる。

 戒斗はすぐさまナイトフォース製のスナイパー・スコープへと手を掛け、備え付けられた左右ウィンテージ上下エレヴェーションの調整ノブを何クリックか動かした。一クリックで四分の一MOA動くソイツを、ほんの少しだけ動かす。銃身過熱によって生じた照準誤差は、僅か一MOAも無い。殆ど誤差の範囲内なのだ。

 手早くスコープの調整を終えた戒斗は銃把へと手を掛け、屋上に居た残りの三人もさっさと始末してしまう。

「表にまたお代わりが出てきた、十人近い」

「脅威になりそうな獲物はあるか?」

「ンなとこまで見えるかよ、バカヤロー」

「へいへい、こっちで確認するさ……」

 相変わらずの刺々しい吹雪の語気にわざとらしく肩を竦めつつ、戒斗はスコープの向く先をサナトリウムの屋上から正面の庭園へと戻し。そして、千鶴のハイラックスに対して脅威になりそうな奴を優先的に排除していった。まるで射的のように、一人一発ずつを正確に叩き込んで。

「さてと、うさぎのおっさんはそろそろ野郎を見つけた頃か……?」

 誰に向けるでもない独り言を口にしながら、戒斗はまた引鉄を引く。サイレンサーに抑えつけられたくぐもった銃声と共に、吐き出される空薬莢と共に。彼の構えるSR-25自動狙撃ライフルから、また冥府への片道切符たる超音速のM852マッチグレード弾頭が朝焼けの虚空へと飛び出していった。

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