Execute.72:SIX RULES/六つのルール、それが男の信ずる正義②
「あら、お客さん?」
「俺の古い友人で、新しい仕事の仲介役だ。それより和葉、今日は早いんだな」
「まあね。学園の方は今日からテストだし、それで早く終わったってワケよ」
「ふむ、そういうことか」
ハリーとそんな具合に親しげな言葉を交わす、内階段の扉の向こうから現れた少女。彼女の方へ振り向いた戒斗は、そんな彼女の姿を一目見て――――絶句のあまり、言葉を失ってしまった。
「……? あの、私の顔に何か?」
――――彼女の容姿が、あまりにも優衣に似ていたから。
身長は大体一六三~四センチぐらいだろうか。何処かの学園のブレザー制服を纏う肢体はほっそりとした華奢な体格で、パッと見でも分かるほどにモデル顔負けな抜群のスタイルだ。蒼い髪は頭の後ろで尾の長いポニー・テール風に結っていて、肌は白く顔立ちは歳不相応なまでに美しく、それでいてあまりにも大人びた風貌だった。真っ赤な切れ長の瞳のせいで、余計にクールな印象は強まってしまう。
そんな彼女の外見は――――あまりにも似過ぎていた。嘗て美代学園で同じ刻を過ごした、今は亡き彼女と。記憶の中に埋もれていた片桐優衣の外見と、まるで生き写しのようにそっくりだったのだ。
故にだった、戒斗が唖然とした顔で彼女の顔を見つめたまま、言葉を失ってしまったのは。この世界には瓜二つの人間が幾らか存在していると云うが、まさに今がそれだった。ひょっとすれば優衣が生き返ったのかもと一瞬だけ戒斗を錯乱させるほどには、目の前の少女はあまりにドッペルゲンガーじみて優衣と瓜二つの外見をしていたのだ。
「あの……?」
と、硬直した戒斗の様子を流石に不審に思ったのか、少女は困惑したように二の言葉を投げ掛けてくる。そこにきて漸く戒斗はハッと我に返り、困った表情で自分の顔を覗き込んでくる彼女に「な、なんでもない」と返した。
「それよりハリー、このお客さんは?」
「あー、それはだな和葉……」
と、少女に訊かれたハリーが困った顔で戒斗に視線を投げ掛けてくる。戒斗の事情を話しても良いものか、一応確認を取りたいといった意図を込めた視線だった。
「……信用できるのか?」
そんなハリーの意図を汲み取った戒斗が一応訊いてやると、ハリーは「ああ」と即座に首を縦に振る。
「例の"スタビリティ"の一件で俺の護衛対象だった。今は……色々あって、俺の助手みたいなことをしてる」
「どうも、園崎和葉です」
ハリーの座るソファの真後ろに移動した後で、優衣の生き写しみたいな外見をした彼女は自らをそう名乗った。
(園崎和葉、か……)
――――優衣とは違う。別人だ。
「ハリーが信頼する人間なら、話しても大丈夫だ。……俺は戦部戒斗。ワケあって今は黒沢鉄男って名乗ってるが、ハリーの古い友人だ」
己自身にそう言い聞かせながら、しかし心の端では動揺を残したままで。戒斗はハリーの後ろに控えた笑顔の和葉に自らをそう名乗ると、今度こそ日々谷に入るまでの経緯を話してやった。和葉への説明も兼ねて、少し古い昔話から……。




