Execute.06:ダイナミック・エントリー Phase-01
外階段の方に行くと、階段の上から撃ち下ろしてくる複数のチンピラたちと貴士が激しく撃ち合っている最中だった。
「おーおー、やってるねえ」と、お気楽な調子で鉄男が貴士の肩を叩く。
「やってるねえ、じゃねえよバーロー! こちとら大忙しだ畜生め!」
と、貴士は物陰に引っ込みながら後ろの鉄男を怒鳴りつける。その隙にコルト・ハンツマンを構えた禅がフォローに入るのを確認するなり、貴士は忙しなくナガンM1895のローディング・ゲートより一発ずつシリンダーから空薬莢を落とし始めた。コルト・SAAのように一発ずつやらなきゃならないのが、古いナガンM1895の致命的な欠点だ。
「めんどくさそうだねえ、それ」
「バーロー! オメーがなあ、あんな派手にやんなきゃンなことにゃなってねえんだよお!」
面白がっておちょくる鉄男と、忙しなく実包を再装填しながら怒鳴りつける貴士。そんな二人に禅は「遊んでんじゃないよ!」と怒鳴りつけ、
「こうなっては面倒です! 鉄男さん、隣のビルの屋上から飛び移ってください!」
「え、俺?」
「この中で一番火力が高いのは貴方です! それと、貴士さんは表のバンから非常用の装備を!」
「ういうい、分かったよん。禅ちゃんも頑張ってね」
「ええはい頑張りますとも、阿呆どもの尻拭いをね! ……ほら、鉄男さんも早く行ってください!」
「しょうがねえなあ……」
とまあこんな調子で三人は分かれ、禅はその場に踏み留まり奴らの逃走を抑え。貴士はそのまま階段を駆け下りてバンの方へと赴き、鉄男といえば先程戦っていた二階の部屋に戻れば、そこの窓から眼下の地面に飛び降りてしまう。
アスファルトの地面の上へ、パルクールの要領でくるりと一回転し五点着地。そのまま走り出せば隣の雑居ビルの外階段を駆け昇り、屋上へと向かう。
P226で鍵の掛かった屋上ドアを撃ち壊し、雑居ビルの屋上へ。そこで軽く助走を付けてから飛び、見事隣のビルへと飛び移った。
「さて、と……」
床の上を転がり起き上がった鉄男は周囲に敵が居ないことを確認した後、どうしたものかと軽く思案する。
このまま屋上から外階段へ行き、正攻法で挟み撃ちを仕掛けてもよかった。しかしそれだと、後に残った四階と三階の制圧に手間取ることになりそうだ。
「こういう時、攻めるなら上と下からの同時攻撃ってのが定石だ」
そう思い、鉄男は何か使えそうな物がないかと屋上一帯を見回す。
「おっ」
すると、縄のようなものを見つけた。少し細めだが、ちょっとぶら下がるぐらいなら十分だ。長さも丁度良い。
鉄男はその縄を持って屋上の隅に近寄り、転落防止の柵へとその縄を縛り付けた。そして片側を左手に巻き付け、右手にP226を持った格好で柵を乗り越える。
「よっとっと」
そのままちょっとしたラペリング降下の要領で壁を蹴り、少しずつ左手の縄を流しながら下方へと下がっていく。そして丁度良い具合に四階の窓の近くまで下がれば、大きく壁を蹴って後ろに飛び、一気に勢いを付けた。
「ロックン・ロール……! ダイナミック・エントリーだ!」
窓ガラスに何発か9mmパラベラム弾を撃ち込んで脆くしてから、そして鉄男はそのガラスを足先で突き破る。
「おっ、始めたか……!」
その頃、バンから禅の指定した非常用の装備を担いで戻ってきた貴士は、鉄男が飛び込む様子を丁度下方から見上げていた。
こっちも負けてはいられない。そう思い貴士は雑居ビルの外階段を駆け昇り、禅の元へと急ぎ戻っていく。
「ほい、禅ちゃん!」
振り向いた禅に、貴士がバンから持ってきたイタリア製のベネリM4自動ショットガンを投げ渡せば、禅はそれを片手で掴み取る。今まで手に持っていたコルト・ハンツマンをホルスターに収めればそのベネリの縮んだ銃床を引き延ばし、そしてスリングに挟まれた大量のショットシェルを一瞥する。
「上で鉄男が仕掛けた、俺たちも急ごうぜ!」
そう言いながら、貴士もまた別の装備を携えてきていた。三十連発のロング・マガジンを差したグロック34自動拳銃を両手で二挺拳銃の格好で構えているそんな貴士を一瞥すれば、禅は「阿呆ですか貴方は」と呆れたような視線を送る。
「こういう時はな、手数とパワーがベストなの」
呆れる禅にわざとらしく肩を竦めながら、貴士は「ほれ」とグロックを持つ手で器用にポケットから引っ張り出した重い塊を彼に投げ渡した。非殺傷の閃光音響手榴弾だ。
「さっさと突破しちゃいましょ。切り込みは禅ちゃんがやるぅ?」
「当たり前です。早めに切り上げて終わらせましょう。これ以上のイレギュラーは勘弁願いたい」
「へいへい」
あからさまに脱力した貴士の横で、禅がピンと安全レヴァーを抜いた閃光音響手榴弾を上方へと放り投げる。
「ッ!」
二人揃って眼と耳を覆えば、数秒後に凄まじい閃光と鼓膜を突き破らんばかりの爆音が階段に木霊した。数百万カンデラの眩い閃光と百数十デシベルの凄まじい爆音を無防備に喰らえば三半規管などひとたまりもなく、上で激しく撃ち下ろしていたチンピラたちの銃撃も、閃光音響手榴弾が炸裂した途端に打ち止めとなった。
「行きますよ、貴士さん」
「ほいほい、撃ち漏らしは任せな」
ベネリM4自動ショットガンを構えた禅が先頭に立ち、その後ろをフォローする形でグロック34二挺拳銃の貴士が後を追って階段を駆け昇る。




