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やがて降る雨、それは復讐という名の雨  作者: 黒陽 光
冬の日、束の間の休息
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Execute.51:Very Mary X'mas./剣乱舞踏①

 香港から日本へと帰ってきた後、アインの話してくれた手掛かりを元に戒斗は冴子やミリィ・レイス、それに僅かに生き残った複数のコミュニティを駆使し浅倉、そして暁斗の両名の行方を血眼になって捜した。それこそ、あまりの気迫にエマが本気で心配し始めるほどに。

 だが結果は芳しくなく、香港での一件から半年以上が経過しても手掛かりは一向に掴めないまま。そうしてその年は暮れを迎え、遂には十二月二四日のクリスマス・イヴを間近に控えた頃にまでなってしまっていた。浅倉と暁斗の行方を、未だ掴めないままで…………。

「えーと、あと必要なものは……」

 ……というわけで、この日の戒斗はエマに半ば強引に連れ出され、クリスマス関係の買い出しに付き合わされる羽目になっていた。

「まだまだ多そうだな、こりゃあ」

 街の中、手元のメモ用紙に軽く視線を落としながら歩くエマをチラリと横目で見て、戒斗は参ったように息をつく。ちなみにこの時点で戒斗の両手は既に荷物でいっぱいだ。完全な荷物持ちといった趣で彼女の隣を歩く。

「別に、少しぐらい僕が持つよ」

「いいよ、俺が持つ」

 まあ、荷物持ちに関しては戒斗の方から言い出したことだ。小さく肩を竦めつつも、文句を言うようなことはしない。ただ、ほんの少しの溜息が冷たい空気の中で白くなっただけだ。

「……パーティみたいなこと、してみたいな」

 そう言い出したのは、エマの方からだった。何週間か前のことだろうか。テレビで流れていたクリスマス特集を見るなり、ボソリと彼女が何気なしに呟いたのを覚えている。そして、それに「なら、やるか」と言ってしまったのも戒斗自身だ。

「言い出しっぺの何とやら、ってことか」

 だから、戒斗はある意味で諦めていた。このクソ寒い時期にどうこうというのは少し億劫だが、しかしこれも彼女が望んだこと。ならば出来るだけ叶えてやるのが自分の――――生き残ってしまった自分の役目だと、そう戒斗は思っていた。

 幸いにして、戒斗は周囲の人間を多数喪ったといえども、ミリィ・レイスを初めとした連中がまだ少しぐらいは残っている。本当ならハリーとクララの二人も呼んでやりたいところだが、生憎とあの二人は行方知れずだ。とはいえ何名かは招待することの出来る人間も居るから、今年はエマの望み通りにささやかなクリスマス・パーティと洒落込めるだろう。

「ん、カイト何か言った?」

 とすれば、隣を歩くエマが戒斗の独り言を聞きつけたらしく、こっちを覗き込みながらそう訊いてきた。戒斗がそれに「いいや、なんでもない」と首を横に振れば、エマは「ほんとかなぁ……?」と何処か疑うようなジトーッとした視線を向けてくる。

「ホントホント。それより、まだ行くとこ多いのか?」

「そうだねー。この辺りで手に入るのはひとまず次で終わりそうだから、それ終わったら一旦車に戻って、荷物載せてからお昼にしよっか」

「賛成だ」

 えへへ、と柔らかな笑顔を向けてくれるエマと、隣歩く戒斗もチラリと横目に見て微かな笑みを浮かべる。漂う空気は肌寒く、エマはスカートの下にデニールの濃い黒のタイツやフード付きの赤いジャケット、戒斗はファーが縫い込まれたフード付きの灰色のジャケットと、二人とも厚着にならざるを得ない。しかし交わし合う視線だけは、穏やかな春の陽気のように暖かいままだった。

「……っと、そうだ。ついでだし、久々に「楽園」行ってみるか?」

「あ、良いね。最近は僕もめっきり顔出せてなかったし、丁度良いかもっ」

 にこやかに笑うエマを見て、戒斗は「よし、決まりだ」と頷いた。

「なら、さっさと買い物済ませないとな。腹減って仕方ねえや」

「僕もお腹ぺこぺこだよぅ」

「善は急げってことだな」

 そんな風に二人笑い合いながら、冬の肌寒い風が吹く街の中を歩いて行く。


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