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Execute.43:Perfume of the Death./その身に纏うは死の芳香④

「ッ!」

「…………!」

 戒斗とアイン、二人がほぼ同時に踏み込んだ。

 左腰の鞘を彼方へと投げ捨てたアインの放つジャブのような、しかし一撃一撃が重い拳を、戒斗は右へ左へと外へ払い受け流す。そうしながら横薙ぎのボディブローやローキックなどで反撃を加えるが、しかし逆にこれはアインにいなされてしまう。

「――――」

 そして戒斗が一歩後ろずさって距離を取ろうとした瞬間、戒斗の視界の中から一瞬にしてアインが消えた。

「っ!?」

 これに戒斗は一瞬戸惑う。しかしその原因を知っているからこそ、対処が紙一重で追いついた。

「うぐっ」

 しゃがみ込んでいたアインが飛び上がるようにして放ったアッパーカットが腹に刺さり、戒斗は苦悶の表情を浮かべる。しかし直前に飛び退いていたお陰で衝撃は受け流すことが出来て、ダメージも最小限に抑えられた。

「らぁっ!」

 こみ上げる吐き気を抑えつつ、戒斗は着地と同時に右脚で高い蹴りを放つ。アインが立てた左腕の甲に防がれる。続けざまの拳による左右連撃、これも外側にいなされる。

 アインの放った雑なローキックが戒斗の左足に命中。一瞬バランスを崩した隙を突かれ、右手での手刀が飛んでくる。戒斗の左肩に命中。受け流したお陰で肩が外れたりだとかそこまでのダメージはないが、しかし意識が持って行かれそうになる。

「うおおおっ!!」

 左肩にめり込んだ手刀を、左手でアインの右手首を引っ掴む。そのまま右手はアインの二の腕の下へと這わせ、関節を極めながらぐるりとテコの要領でアインの身体を投げ飛ばした。ぐるりと大きく宙を舞ったアインの身体がバンッと床に叩き付けられる。肺から押し出された息を「がはっ」と吐き、アインが喘いだ。

 そのまま戒斗は脇腹を蹴り飛ばしバイタルに致命傷を喰らわせようとするが、しかしアインはギリギリの所で床を転がりこれを回避。痛みを押し殺しつつ立ち上がれば、声にならない雄叫びとともに戒斗に肉薄し更なる連撃を加えてくる。

「っ……!」

 なんとか防ぐ戒斗だが、しかし一撃一撃が重いアインの拳は戒斗の身体にダメージを着実に蓄積させていった。

 戒斗は一瞬の隙を突いてアインの両腕を外側に払い、両手の手刀でアインの首目掛けて鋭い一撃を振り下ろす。確実に決まったと確信した一撃だったが、しかし寸前の所で戻ってきたアインの腕に払われてしまった。

「おおおおおっ!!!」

「…………!!」

 互いにがっしりと両手の指を絡ませ、正面から互いの手を掴み合う二人。格好は恋人繋ぎに似ているが、しかしそこまでロマンチックなモノじゃない。

 どちらからともなく、戒斗とアインは互いにほぼ同じタイミングで頭突きを放った。互いの額が激突し合い、両者ともにふらりと意識が一瞬だけ遠のく。戒斗もアインも、二人とも額を微かに切って血を流していた。

 アインの手から力が抜けた。しかし戒斗は未だにギリギリの所で意識を保っていて、アインの手を掴みっ放しだった。その違いが、最終的には両者の明暗を分けることになった。

「へヘッ……!」

 戒斗はフラつく左手をアインの手から放すと、彼の後頭部を抱えて下に落とす。そして破れかぶれの膝蹴りを顔面に命中させてやれば、威力は弱いながらも、しかしアインの意識を完全に刈り取るには十分すぎた。

 そのまま、ダメ押しと言わんばかりに鳩尾へとアッパーカットを叩き込む。これで完全にアインの意識は彼の手を離れた。アインが身体から力を抜けさせると、そのまま重力に従いバタリと床に倒れる。

「はぁっ、はぁっ……!」

 肩で息をしながら、軽く喘ぎながら。そうしながら戒斗は、自分の足元にうつ伏せになって倒れたアインを見下ろす。

 強敵だった。自分が格闘戦で此処まで追い詰められるなんて、一体どれぐらい振りのことだろうか。一歩間違えれば、地面に伏せっていたのは自分だった。

「……何て野郎だ、コイツ」

 いつの間にか切っていた唇の端から滲み出る血を手の甲で拭い、戒斗はふぅ、と息をつく。そしてくるりと踵を返し背中の方へ振り返れば、そこに立っていた一人と眼が合った。

「貴様ご自慢のアインはこのザマだぜ、リー・シャオロン。

 ――――次は手前が床に沈む番だ。覚悟は出来てるか? 出来てようが出来てまいが、俺はお前を殺しに行くぜ」


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